医療や介護の現場では、利用者の情報を記録するツールとしてフェイスシート、アセスメントシートというものが存在します。
これらのシートに記載されている情報を活用することで、安全で質の高い医療や介護サービスの提供につなげています。
作成する共通の目的は利用者に対する介護サービスの向上にあるものの、フェイスシートは病院で言う「カルテ」、アセスメントシートは「面談(診断)」の違いがあるのです。
この記事では、介護職のフェイスシートの役割やどのような使い方をするのか、アセスメントシートとの違いが何かなどを解説していきます。
くわしい違いが分かるようになると、より効果的なサービスを提供できるようになりますよ。
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目次
ケアワークで使うフェイスシートとは?
介護業界でのフェイスシートとは、利用者の名前や住所、介護をするうえで気を付けることなどを書いたものをいいます。
医療現場でいうところの、カルテのような役割を持っています。
サービスを利用するときに直接聞いて作成するもので、ケアプランやサービスの提案をするために重要なデータです。
書かれている内容は、以下に一例として紹介します。
- 利用者の氏名や家族構成などの基本情報を記した用紙のこと
- 利用者のプロフィール、履歴書のようなもの
- 利用者がサービスを利用する初回時(入所時)に作成
また、フェイスシートには決まった書式はないので、施設ごとに用意されているものを確認して記入漏れがないようにしていきましょう。
フェイスシートは情報共有に使う
介護の現場でのフェイスシートは介護スタッフ間だけではなく、利用者に関わる職種、ケアマネージャーや医師、看護師などにも利用者の正確な情報を共有しています。
こうした情報をデータにしておくことで、担当者が不在だったり、変わったとしても適切な対応が可能となるのです。
また、利用者の緊急時にもフェイスシートを確認すれば、どんな立場であっても近親者に連絡を取ることができます。
ケアプラン作成時の情報源にもなる
ケアプラン作成の情報源としても、フェイスシートは有効です。
利用者が介護サービスに至るまでの生活状況や意見・要望なども記載されているので、利用者に適したサービスを提案する手がかりとなります。
利用者への負担も少なくなる
利用者においては、異なる立場のスタッフから何度も同じ質問をされるのは煩わしいし不安感を抱くものです。
フェイスシートで情報を共有しておけば、すでに聞いている内容が記載されているので何度も質問をする手間が省けます。
フェイスシートの仕様
フェイスシートには、とくに決められた様式はありません。
そのため、施設オリジナルのものを作成したり、インターネットのサイトからスタンダードなフェイスシートをダウンロードして作成したりとさまざまです。
ですが、記載すべき項目はある程度定まっていて、具体的な項目としては下記のものがあげられます。
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 住所
- 連絡先
- 家族構成
- 既往歴
- 職歴
- 薬歴
- 要介護認定
そのほか、本人の趣味や嗜好、経済的な情報などを記載するケースもあります。
フェイスシートの管理方法
フェイスシートは指定地域によって使用終了から5年間、サービス終了後から2年間という保管義務が設けられています。
重大な個人情報となるため紛失することがないよう、施錠ができるキャビネットなどに保管する必要があります。
もう使用しないものだとしても、保管義務の期間内は慎重に保管してください。
アセスメントシートとは?
アセスメントシートとは、利用者やご家族から聞き取り(アセスメント)を行う際に使用するシートのことです。
利用者の生活情報や心身状態などの変化する情報や解決すべき課題について、利用者やその家族から聞き取り(アセスメント)を行う際に使用します。
聞き取りは主にケアマネージャーが行い、項目に沿って記入していきます。
ケアプラン作成における最初の面談で活用されるもので、厚生労働省によるヒアリングポイントに基づく内容となっているのです。
利用者に適切な介護サービスを提供することを目的とし、実質的な「介護の入口」ツールで身体情報や課題などをくわしく掘り下げた項目で構成されているのが特徴です。
アセスメントシートは何に使うもの?
アセスメントシートは、他機関とのスムーズな連携の際にも使用されていて、以下のようなときに活躍します。
- 利用者一人ひとりの課題を洗い出すシート
- 今後の介護の方針やケアプラン作成時
- 介護計画書を作成するために
- 他機関のサービスを提案するとき
アセスメントシートの仕様
アセスメントシートは厚生労働省が定めた必須項目「課題分析標準項目」の23項目をカバーさえしていれば様式は自由です。
この23項目については、厚生労働省の老健局が発表している「介護保険最新情報」をご覧ください。
利用者本人やご家族にヒアリングをし、記入する具体的な項目は下記の通りです。
- 健康状態
- 栄養状態
- コミュニケーション能力
- 問題行動
- 居住環境
- 治療への理解
- 終末期の希望
また、聞き取り(アセスメント)は一度行えば終わり、ということはありません。
一定期間のサービス提供後には、サービスの評価としても聞き取りは継続して行われるので、アセスメントシートもその都度更新することになります。
アセスメントシートの管理方法
フェイスシート同様、アセスメントシートもサービス終了後2年間は保存しなければなりません。
フェイスシートとアセスメントシートは別物
これまでフェイスシートとアセスメントシート、2つのシートの違いを話してきました。
どちらも利用者の情報をまとめたものという点では変わりませんが、その役割や目的は大きく異なっています。
改めて復習すると、フェイスシートは利用者のプロフィールであり、履歴書です。
作成の大きな目的は、利用者の情報を正確に把握するとともに、その情報をスタッフ間やさまざまな職種の関係者と共有することにあります。
とくに定められた項目も様式もありません。
一方でアセスメントシートは、利用者の課題を分析するために使用するツールです。
さまざまな様式があり独自で作成しても問題はありませんが、いずれも厚生労働省指定のヒアリングポイントを盛り込んでいることが必須となっています。
項目に沿って記入し、利用者オリジナルのアセスメントシートを作成してこれを活用することで、利用者にとって最適なケアプランの提案につなげます。
分かりやすく例えれば、フェイスシートは病院で言う「カルテ」、アセスメントシートは「面談(診断)」、その後の具体的なケアの内容が「治療」とも言えるかもしれません。
なお、この2つのシートに「経過記録シート(一日の経過記録)」を追加して、「多職種情報共有シート」と呼びます。
これらのシートを活用し、利用者のケアプランを作成します。
それぞれ似て非なる役割・機能を持つため、違いについてしっかり把握しておきましょう。
フェイスシートの書き方を覚えよう
では、フェイスシートについて、書き方をシミュレーションしてみましょう。
実際に作成するのはケアマネージャーや施設の担当責任者であることが多いですが、そうでなくても書き方を理解しておいて損はありません。
基本の書き方
利用者の氏名や生年月日、サービス利用開始にいたった経緯などの基本情報を記載します。
項目や様式は自由のため、オリジナルのシートを作成している施設あります。
介護関係のサイトではシートのダウンロードも可能なので、使いやすいシートを利用してシミュレーションしてみてください。
なお、訪問介護の場合と介護給付の場合とでは書き方が異なり、後者は項目が少なく、必要最低限の情報のみが記載される傾向にあります。
書き方のコツは?
フェイスシートは情報共有という意味合いが強いので、難しい専門用語などはなるべく使用せず、誰にでも分かりやすく簡潔に記入することが重要です。
また、利用者の様子がわかるようにすべての項目を過不足なく埋めるようにしましょう。
データは常に最新のものに更新することもお忘れなく。
とくに、主治医が変わった時などは書き換えをしておかないと緊急時に連絡が取れず困ってしまうので要注意です。
なお、フェイスシートでの家族構成は、ジェノグラムと呼ばれる家系図で表すことがほとんどです。
利用者の家族の情報を視覚的にとらえることができ、他者とも情報を共有しやすいのが特徴です。
時間がある時に、書き方や見方を学んでおくと良いですよ。
作成時の注意点
空欄がなく、専門用語や略語を避け、誰にでも分かりやすく記入することは前述のとおりです。
そのほか、緊急連絡先などは利用者の対応について決定権がある方かどうか確認する、どんな時も連絡が取れるよう最低2件は記入する、なども心得ておきましょう。
また、情報の更新を行った際には、更新日についても忘れずに記載する必要があります。
さらに、フェイスシートは利用者の個人情報だけではなく家族の情報も記載されているため、業務が終了したらしっかりと管理を行うことも重要です。
フェイスシートをダウンロードできるサイト3つ
フェイスシートのフォーマットは自由ですが、下記のようなサイトではフォーマットをダウンロードができるサービスもありますので、是非参考にしてください。
ケアマネジメントオンライン (Excel)※クリックで直接ダウンロードがはじまります。
よくある質問
ここでは、介護職のフェイスシートについてよくある質問を紹介します。
介護職のフェイスシートとは何ですか?
施設を利用する方の基本的な情報(名前、家族構成、介護での注意点など)をまとめたシートのことで、利用する方の状況を知ることができます。
病院などでいうカルテのような役割を持っています。
そのため、記入をする際は項目に空欄ができないよう細かいところまで記入するようにし、小さなことでも情報を残すことが重要です。
このような情報を記録しておくことで、担当が変わったときなども状況を把握しやすくなり、いつでも安定した介護を可能にしています。
アセスメントシートとは何が違うのでしょうか?
フェイスシートもアセスメントシートも利用者の情報を記載しているシートに変わりはありませんが、その内容に大きな違いがあります。
フェイスシートは利用者の基本的な情報を記録しているもので、アセスメントシートはケアプランを作成する際にケアマネージャーが取得した情報を記録しています。
基本的な情報を記載されているシートと、介護のための詳細な情報を記載しているシートという分け方で覚えておきましょう。
フェイスシートに定められた様式はありますか?
決まった様式はありませんが、名前や家族構成などの基本情報は必ず入力するようにしましょう。
また、施設内での介護方針に適した情報を入力する必要があるため、施設によって項目が変わります。
入職後は、どのような内容で書けば良いかを確認し、情報の記入漏れがないようにしてください。
まとめ
介護の現場におけるフェイスシートは、利用者の過去と現在を知ることができるとともに、未来への足がかりともなる、介護の原点的なツールともいえます。
このステップで不備があると、その後のケアプランにも影響を及ぼす可能性があるので、慎重に作成して取り扱わなければいけません。
たとえ、自分が作成に関わらないとしてもフェイスシートを通じて利用者の貴重な情報を把握することできめ細やかなサービスが可能になり、介護についての理解も深まります。
また、混同されがちなアセスメントシートについても「自分がケアプランを作成するわけではないし、関係ない」とは考えず、知識として学んでおきましょう。
どんな仕事や生活、人生においても、課題を分析することは課題解決の糸口にもなるので、今後の業務はもちろん、業務以外でもいつか役に立つ時がきますよ。
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