サービス提供体制強化加算により、介護人材の離職を防ぐことやキャリアアップの促進をはかることを目的としているのですが、施設によって導入しているかが変わります。

個人で手続きを行うことはありませんが、施設でどのような体制が導入されているかを知ることで、自分にとって働きやすい環境かの目安をつけることができます。

ここでは、数ある体制の中でもサービス提供体制強化加算の算定要件や種類、単位数などについて解説していきます。

目次

サービス提供体制強化加算とは

サービス提供体制強化加算とは、有資格者を一定基準雇用し、サービス提供体制が高い基準を満たしている事業所に対して算定される加算です。

サービス提供体制強化加算によって介護人材の離職を防ぎ、キャリアアップの促進をはかることを目的としています。

サービス提供体制強化加算が導入された背景

サービスを必要とする要介護高齢者が増加する一方で、それを担う介護人材の不足が社会問題となっています。

その要因としては少子高齢化が介護職といえば3Kや4Kともいわれ、賃金の安さや社会的地位の低さ、待遇の悪さがあげられます。

また、キャリアアップやスキルアップが実現しないこと、職場環境や人間関係の悪さから離職する方多く、離職率の高い介護人材の安定的な確保のため職場環境の改善が求められています。

このように、介護人材の職場環境や社会的待遇を改善されることを目的に導入されました。

その他、職場環境の改善方法として介護事業所にICT導入する方法があります。

サービス提供体制強化加算の対象事業所


サービス提供体制強化加算が対象となっている事業所の一例を紹介します。

ここで紹介する事業所や施設への転職を検討したい方は、こちらの「介護職の転職エージェントおすすめ15社比較やコツを紹介」を参考にしてください。

夜間対応型訪問介護事業所

「定期巡回」と「随時対応」と2種類あり、夜間帯(18時~8時)に訪問介護員によるホームヘルプサービスを受けることができます。

認知症対応型通所介護事業所

認知症の高齢者を対象とし、認知症における専門性の高いケアを受けることができます。

デイサービスに通い、入浴、食事、機能訓練、レクリエーションなどに参加し、社会交流や介護者の介護負担の軽減を目的としています。

小規模多機能型居宅介護事業所

「通い」(デイサービス)を中心に、「宿泊」(ショートステイ)、「訪問」(ホームヘルプサービス)を組み合わせ、慣れ親しんだ地域での自立した日常生活をサポートします。

認知症対応型共同生活介護事業所

グループホームとよばれ、認知症高齢者を対象とし、食事や入浴、日常生活における専門性の高いケアを提供します。

5~9人の少人数の利用者様が支援を受けながら集団生活を行います。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所

自宅で自立した日常生活を送るために24時間365日、介護士と看護師による専門性の高いサービスを受けることができます。

必要なタイミングでサービスを受けることができ、定期的な巡回のほか、随時の通報などに対応しています。

看護小規模多機能型居宅介護事業所(複合サービス)

「カンタキ」と呼ばれ、「通い」(デイサービス)を中心に、「宿泊」(ショートステイ)、「訪問」(ホームヘルプサービス、訪問看護)、を組み合わせ、慣れ親しんだ地域での自立した日常生活をサポートします。

訪問看護を受けることができるため、医療ケアの必要な高齢者も安心の介護サービスです。

特定施設入居者生活介護

可能な限り自立した日常生活を送ることを目的とし、指定を受けた有料老人ホームや軽費老人ホームに入居し、食事や入浴などのケアや機能訓練、日常生活の支援を受けます。

地域密着型特定施設入居者生活介護

入所者定員30人未満の介護老人福祉施設です。

介護の必要な高齢者が入居し入浴や食事、機能訓練などケアが提供されます。基本的に入居できるのは要介護度3以上の高齢者となります。

サービス提供体制強化加算の算定要件

サービス提供体制強化加算を算定するには、厚生労働省が定めた算定要件をクリアしていることが前提となります。

  1. 人員基準を満たしている
  2. 定員超過がないこと

この2つの要件をクリアしなければいけません。サービス提供の体制が変更した場合は届出を行わなければいけません。

届出をしなかった場合、不正請求とみなされ、返戻措置や事業所に認可停止、取り消しといったリスクもあります。

サービス提供体制強化加算3種類の要件

サービス提供体制強化加算には、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと三つの種類があります。

Ⅰでは、2パターンあり介護職員のうち介護福祉士の割合で単位が異なり、介護職員の人員強化を目的としているのです。

Ⅱでは、看護・介護職員の総数のうち、常勤職員が配置されている割合により算定でき、常勤の人員強化が目的です。

また、Ⅰよりも単位が少なくなっています。

Ⅲでは、3年以上勤続の長期勤続職員の割合が要件となり、長期にわたる常勤をしている人員の強化を目的としています。

通所介護の場合、サービス提供体制強化加算Ⅲは含まれません。

サービス提供体制強化加算の単位数


サービス提供体制強化加算の単位は、サービスの内容や介護度によって異なります。

通所介護の場合、サービス提供体制強化加算IIIは含まれません。

通所介護/通所リハビリテーション/地域密着型通所介護/認知症対応型通所介護

【要介護の場合の加算条件】

サービス提供体制強化加算Ⅰ(イ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が50%以上配置されていること(18単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅰ(ロ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が40%以上配置されていること(12単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅱ 勤続3年以上の職員が総数の30%以上配置されていること(6単位/1回)

【要支援の場合の加算条件】

サービス提供体制強化加算Ⅰ(イ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が50%以上配置されていること(72単位/月)
サービス提供体制強化加算Ⅰ(ロ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が40%以上配置されていること(48単位/月)
サービス提供体制強化加算Ⅱ 勤続3年以上の職員が総数の30%以上配置されていること(24単位/月)

訪問看護/訪問リハビリテーション

要介護・要支援ともに研修の実施、会議の開催、健康診断の実施などが要件であり、人員については勤続3年以上の職員が総数の30%以上配置されていることとしています。(6単位/1回)

訪問入浴介護

要介護・要支援ともに下記の加算条件となります。

【訪問入浴介護の加算条件】

サービス提供体制強化加算Ⅰ(イ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が40%以上配置されている、または介護福祉士及び介護職員基礎研修修了者の合計が60%以上配置されていること(36単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅰ(ロ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が30%以上配置されている、または介護福祉士及び介護職員基礎研修修了者の合計が50%以上配置されていること(24単位/1回)

上記かつ研修の実施をしていることが条件です。

夜間対応型訪問介護(オペレーションセンター設置)

夜間対応型訪問介護は、要介護であればつく加算です。

【夜間対応型訪問介護の加算条件】

サービス提供体制強化加算Ⅰ(イ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が40%以上配置されている、または介護福祉士及び介護職員基礎研修修了者の合計が60%以上配置されていること(18単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅰ(ロ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が30%以上配置されている、または介護福祉士及び介護職員基礎研修修了者の合計が50%以上配置されていること(12単位/1回)

上記かつ研修の実施をしていることが条件です。

夜間対応型訪問介護(オペレーションセンター未設置)

オペレーションセンター設置のものと同じく、要介護であればつく加算です。

【夜間対応型訪問介護の加算条件】

サービス提供体制強化加算Ⅰ(イ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が40%以上配置されている、または介護福祉士及び介護職員基礎研修修了者の合計が60%以上配置されていること(126単位/月)
サービス提供体制強化加算Ⅰ(ロ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が30%以上配置されている、または介護福祉士及び介護職員基礎研修修了者の合計が50%以上配置されていること(84単位/月)

上記かつ研修の実施をしていることが条件です。

小規模多機能型居宅介護/看護小規模多機能型居宅介護

要介護・要支援ともに利用できる加算です。

【小規模多機能型居宅介護/看護小規模多機能型居宅介護の加算条件】

サービス提供体制強化加算Ⅰ(イ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が50%以上配置されていること(640単位/月)
サービス提供体制強化加算Ⅰ(ロ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が40%以上配置されていること(500単位/月)
サービス提供体制強化加算Ⅱ 常勤職員の割合:看護・介護職員の総数のうち、常勤職員が60%以上配置されていること。(350単位/月)
サービス提供体制強化加算Ⅲ 勤続3年以上の職員が総数の30%以上配置されていること(350単位/月)

上記かつ研修の実施をしていることが条件です。

定期巡回 ・随時対応型訪問介護看護

要介護の場合のみ利用できる加算です。

【定期巡回・随時対応型訪問介護看護の加算条件】

サービス提供体制強化加算Ⅰ(イ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が40%以上配置されている、または介護福祉士及び介護職員基礎研修修了者の合計が60%以上配置されていること(18単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅰ(ロ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が30%以上配置されている、または介護福祉士及び介護職員基礎研修修了者の合計が50%以上配置されていること(12単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅱ 常勤職員の割合:看護・介護職員の総数のうち、常勤職員が60%以上配置されていること。(350単位/月)
サービス提供体制強化加算Ⅲ 勤続3年以上の職員が総数の30%以上配置されていること(350単位/月)

それぞれ上記かつ研修の実施をしていることが条件です。

短期入所生活介護/短期入所療養介護/特定施設入居者生活介護/介護老人保健施設/認知症対応型共同生活介護

要介護・要支援ともに利用できる加算です。

【短期入所生活介護/短期入所療養介護/特定施設入居者生活介護/介護老人保健施設/認知症対応型共同生活介護の加算条件】

サービス提供体制強化加算Ⅰ(イ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が60%以上配置されていること(18単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅰ(ロ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が50%以上配置されていること(12単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅱ 常勤職員が75%以上配置されていること。(6単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅲ 勤続3年以上の職員が総数の30%以上配置されていること(6単位/1回)

介護老人福祉施設/介護療養型医療施設/地域密着型特定施設 入居者生活介護/地域密着型介護老人福祉施設

要介護のケースのみ使用できる加算です。

【介護老人福祉施設/介護療養型医療施設/地域密着型特定施設 入居者生活介護/地域密着型介護老人福祉施設の加算条件】

サービス提供体制強化加算Ⅰ(イ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が60%以上配置されていること(18単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅰ(ロ) 介護職員のうち、介護福祉士の割合が50%以上配置されていること(12単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅱ 常勤職員が75%以上配置されていること。(6単位/1回)
サービス提供体制強化加算Ⅲ 勤続3年以上の職員が総数の30%以上配置されていること(6単位/1回)

サービス提供体制強化加算の算定方法

サービス提供体制強化加算の算定を受けようと思う場合、直接か郵送にて各事業所の当該自治体の介護支援課へ届出ます。

サービス提供体制強化加算は前年度の職員割合の実績にて算定されますので、毎年3月、職員の割合を計算し所定の用紙に記入し届出を行います。

必要書類

  1. 介護給付費(介護予防日常生活支援総合事業費)算定に係る体制等に関する届出書
  2. 介護給付費(介護予防日常生活支援総合事業費)算定に係る体制等に状況一覧表
  3. サービス提供体制強化加算に関する届出書と添付書類
  4. サービス提供体制強化加算算定に係る職員割合算出シート

サービス提供体制強化加算のQ&A


厚生労働省の「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A」より、とくに注意した方が良いものを抜粋して紹介します。

問63[職員の割合について]

サービス提供体制強化加算の新区分の取得に当たって、職員の割合については、これまでと同様に、1年以上の運営実績がある場合、常勤換算方法により算出した前年度の平均(3月分を除く。)をもって、運営実績が6月に満たない事業所(新たに事業を開始した事業所又は事業を再開した事業所)の場合は、4月目以降に、前3月分の実績をもって取得可能となるということでいいのか。

(答)

貴見のとおり。なお、これまでと同様に、運営実績が6月に満たない場合の届出にあっては、届出を行った月以降においても、毎月所定の割合を維持しなければならず、その割合については毎月記録する必要がある。

問64[サービス提供強化加算の同時取得について]

サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イとサービス提供体制強化加算(Ⅰ)ロは同時に取得することは可能か。不可である場合は、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イを取得していた事業所が、実地指導等によって、介護福祉士の割合が 60%を下回っていたことが判明した場合は、全額返還となるのか。

(答)

サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イとサービス提供体制強化加算(Ⅰ)ロを同時に取得することはできない。また、実地指導等によって、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イの算定要件を満たさないことが判明した場合、都道府県知事等は、支給された加算の一部又は全部を返還させることが可能となっている。なお、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イの算定要件を満たしていないが、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)ロの算定要件を満たしている場合には、後者の加算を取得するための届出が可能であり、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イの返還等と併せて、後者の加算を取得するための届出を行うことが可能である。

問65[利用料の徴収について]

特定施設入居者生活介護の事業所においては、人員配置が手厚い場合の介護サービス利用料を入居者から徴収する事が可能とされているが、サービス提供体制強化加算を取得した場合でも、引き続き利用料を徴収する事は可能か。

(答)

人員配置が手厚い場合の介護サービス利用料(上乗せ介護サービス費用)については、介護職員・看護職員の人数が量的に基準を上回っている部分について、利用者に対して、別途の費用負担を求めることとしているものである。一方で、サービス体制強化加算は、介護職員における介護福祉士の割合など質的に高いサービス提供体制を整えている特定施設を評価するものであるため、両者は異なる趣旨によるものである。従って、上乗せ介護サービス利用料を利用者から受領しつつ、サービス提供体制強化加算の算定を受けることは可能である。

よくある質問

ここでは、先ほどのQ&Aよりも基礎的な部分でのよくある質問を紹介します。

サービス提供体制強化加算とは何ですか?

サービス提供体制強化加算は、この施策で介護人材の離職を防ぐことや、キャリアアップの促進をはかることを目的としています。

対象となる事業所は、有資格者を一定基準雇用していて、サービス提供体制が高い基準を満たしているところでです。

サービス提供体制強化加算の算定要件は何ですか?

サービス提供体制強化加算の算定要件は、以下2つをクリアしていなくてはなりません。

  • 人員基準を満たしている
  • 定員超過がない

そのため、サービス提供の体制などが変更した場合は、届け出を提出する必要があります。これを提出しない場合は不正請求とみなされてしまいます。

さらに細分化された3種類がありますので、くわしくは「サービス提供体制強化加算3種類の要件」をご覧ください。

まとめ

サービス提供体制強化加算は、介護人材の確保、質の高い支援の継続、安定した介護報酬のために欠かすことのできない加算のひとつです。

介護事業所において、勤続年数の長い介護職員の確保のため、職場環境の改善に取り組むことも大切でしょう。

サービス提供強化加算を受けているということは、質の高い事業所であるという評価にもつながります。

利用者様と事業所双方にメリットが生まれる加算になりますよ。

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この記事で紹介したサービス提供体制強化加算のような制度の導入は、施設によって変わってきます。そのため、より良い環境で働きたいと考えている方は、施設に関しても仕事探しの目安にすることをおすすめします。

ウィルオブ介護では、仕事紹介だけでなく施設の体制や職場環境などについても質問を受け付けています。いろいろな希望条件を踏まえて仕事を紹介しますので、自分に合う仕事を探したい方は一度ご相談ください。

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