介護療養型医療施設とは、さまざまな医療サービス・リハビリを受けながら、介護サービスを受けられる施設です。医師や看護師などによる医療ケアや、理学療法士・作業療法士などによる機能訓練が充実していて、一般病棟も併設されているので、安心して介護サービスを提供できるというメリットもあります。
しかし、介護療養型医療施設は2024年3月に廃止が決定しています。理由としては、医療施設であるにも関わらず、介護保険が適用されていたことなどの法律的な問題点があったからです。
廃止後は、介護療養型医療施設の良いところは活用しつつ、新施設が創設されることになっています。2024年以降、介護療養型医療施設がどうなるのかを知っておくためにも、介護療養型医療施設について詳しく知っておきましょう。
目次
介護療養型医療施設の定義
介護療養型医療施設とは、原則として65歳以上かつ要介護1以上(要介護1〜5)の方を対象にした施設です。運営が医療法人によって行われている点に特徴があります。
100名の利用者に対し3名の医師が常駐していて、看護職員・介護職員は利用者6名に対し1名以上の配置が義務付けられています。
運営が医療法人によって行われているために、病院に併設されていることも多くあります。
介護サービスを受けながら、リハビリや医療ケアも受けられる施設として人気を集めています。
病院が有する療養病床には、医療保険が適用される「医療療養病床」と、介護保険が適用される「介護療養病床」があります。病院や診療所が運営している介護療養病床は介護療養型医療施設として、介護保険を利用して入所できる公的な施設サービスの一つとなります。
介護療養病床は、病院や診療所に入院し治療を受けていた患者が、急性期を乗り越えた後も、医療ケアや長期に介護が必要と判断された場合に利用されることが多いサービスです。
また介護療養型医療施設には、もう一つ老人性認知症疾患療養病棟があります。老人性認知症疾患療養病棟は療養病床ではありませんが、重度の認知症で在宅での介護が困難であり、かつ医療的なケアも必要とする要介護者のための施設として機能しています。
介護療養型医療施設は、医療ケアの必要な要介護者のための長期療養施設といえ、施設介護サービスに基づいて管理・必要な医療ケア・リハビリ・介護などが行われます。
ただし、同じ介護施設である特別養護老人ホーム(特養)と比べると、介護療養型医療施設では医師や看護師など医療ケアを行うスタッフが充実しているため、特養などでは難しい医療行為を行うことができます。しかし、逆に特養などが積極的に行っている、レクリエーションなどの時間は少ないといえます。
介護療養型医療施設の施設基準
介護療養型医療施設は病院に併設されていることがほとんどで、医師や薬剤師、看護師が常勤し、理学療法士や作業療法士も必要数配置されています。また居室はユニット型の場合は個室になりますがそれ以外は多床室が多いといえます。トイレや浴室などは共同になっており、その他食堂やデイルーム・機能訓練室や診察室などの設備があります。
施設基準は次のようになります。
人員に対する基準
- 医師:医療法で規定している必要数以上(48人に対し1人以上)
- 薬剤師:医療法で規定している必要数以上(150人に対し1人以上)
- 看護師・准看護師:6人に対し1人以上 (老人性認知症疾患療養病棟では4人に対し1人以上)
- 介護職員:6人に対し1人以上
- 介護支援専門員:100人に対し1人以上
- 理学療法士及び作業療法士・言語療法士:施設の規模に応じ必要数以上
- 老人性認知症疾患療養病棟では作業療法士1人以上・精神保健福祉士1人以上
- 栄養士:医療法で規定している必要数以上(100床の場合は1人以上)
設備に対する基準
- 病室(居室)1室あたり定員4人以下・居室の広さ1人あたり6.4m²以上
- 機能訓練室:40m²以上
- 食堂:入院患者数×1m²以上
- 廊下:幅1.8m以上・中廊下については2.7m以上
- 浴室:身体が不自由でも入浴できるよう整備されたもの
- ユニット型の場合の基準(上記の基準に加える必要があるもの)
- 1ユニットの定員:10人以下
- 介護職員または看護職員:日中は1ユニットごとに常時1人以上・夜間及び深夜帯は2ユニットに1人以上
- 1ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置
- 共同生活室の設置
- 病室(居室)を共同生活室に近接させる
ユニット型の場合の基準(上記の基準に加える必要があるもの)
- 1ユニットの定員:10人以下
- 介護職員または看護職員:日中は1ユニットごとに常時1人以上・夜間及び深夜帯は2ユニットに1人以上
- 1ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置
- 共同生活室の設置
- 病室(居室)を共同生活室に近接させる
介護療養型医療施設は廃止される?
介護療養型医療施設は、医療ケアが必要な重度要介護者にとっては必要な施設といえ、待機者もいる状態ですが、廃止が決定しています。厚生労働省が廃止を決定したのは2006年で、2011年度末までとしました。
その後新しい介護保険施設への転換が思うように進まなかったことにより、2017年度末まで廃止が延長されました。そして2017年の法改正により更に6年延長され、2024年3月末まで移行措置が取られることになっています。
廃止になるその理由は?
2024年には完全になくなってしまう介護療養型医療施設ですが、廃止になるのには理由があります。介護療養型医療施設には、以下のような問題点があったのです。
医療依存度の低い人も多く入所していた
介護療養型医療施設の入所基準は、介護依存度によって決定されていました。しかしながら、介護依存度が高くとも、医療依存度の低い人も存在しています。
介護療養型医療施設は、医療ケアと介護を同時に受けたい人のための施設です。それにも関わらず、介護依存度によって入所が決定するので、医療依存度の高い人と低い人が混在していて、高度な医療が必要ない患者も大勢いたのです。
医療ケアと介護を同時に受けたい人がきちんと入所できていない問題のある施設だったわけです。
医療と介護の線引きがうまくできていなかった
医療と介護は、保険制度が異なるだけではなく、関わるスタッフも変わってきます。そのため、医療の施設か介護の施設かの線引きは明確になされる必要があるのです。
それにも関わらず、介護療養型医療施設は医療と介護の線引きがうまくできていない施設でした。介護療養型医療施設は、医療機関が運営する医療施設であるにも関わらず、介護保険が適用されていました。
医療と介護の役割を明確に区別し、より適切な施設の在り方に移行していくために、介護療養病床である介護療養型医療施設の廃止が決定したのです。
受け皿となる3施設
介護療養型医療施設を廃止し、「介護医療院」と呼ばれる、新しいタイプの施設が誕生することになっています。
介護療養型医療施設は、医療ケアと介護を同時に受けたい人がきちんと入所できない点に問題がありました。
そこで、介護医療院では、病状が安定しているかという点も考慮して、介護療養病床相当のサービスが受けられる「介護医療院Ⅰ型」と、介護老人保健施設相当以上のサービスが受けられる「介護医療院Ⅱ型」、医療機関の「併設型」と合わせて3つにわけることとなっています。
①介護医療院Ⅰ型
介護医療院Ⅰ型は廃止となる介護療養病床に相当するもので、長期療養が必要でかつ医療的なケアが必要な重度の身体疾患を有する要介護者、また身体合併症を有する重篤な認知症高齢者が対象となっています。
施設の人員基準
医師: 48人に対し1人以上(施設としては3人以上)
薬剤師:150人に対し1人以上
看護師・准看護師:6人に対し1人以上(報酬上の基準では看護師が2割以上)
介護職員:5人に対し1人以上~4人に対し1人以上
栄養士: 定員100人以上の場合は1人以上
設備基準
居室の面積:8.0m²以上(大規模改修が終了するまでは6.4m²でよい)
これ以外は介護療養病床と同じ
②介護医療院Ⅱ型
介護医療院Ⅱ型は介護老人保健施設以上に相当するもので、Ⅰ型に比べ容体が比較的安定している要介護者が対象となっています。
施設の人員基準
医師: 100人に対し1人以上(施設としては3人以上)
薬剤師:300人に対し1人以上
看護師・准看護師:6人に対し1人以上
介護職員:6人に対し1人以上~4人に対し1人以上
栄養士: 定員100以上の場合は1人以上
設備基準
居室の面積:8.0m²以上(大規模改修が終了するまでは6.4m²でよい)
これ以外は介護療養病床と同じ
③居住スペースと医療機関の併設型
居住スペースと医療機関の併設型は、居住スペースは特定施設入居者生活介護の指定を受けている有料老人ホームなどで、医療機関が併設されているものとなります。医療ケアが必要ではあっても、比較的容体が安定している方が対象です。
居住スペースの人員基準
医師:基準無し
看護師・准看護師:3人に対し1人(看護職員は30人までは1人で、50人を超えるごとに1人必要)
介護職員:3人に対し1人
設備基準
居室の面積:個室で13.0m²以上
おわりに:介護療養型医療施設の転換を考えよう
介護医療院は2018年6月での発表では、施設は21、病床数は1,400床しかありませんでしたが、2019年3月末時点で150施設が開設しており、病床数も10,028床と短期間に病床数も7倍以上増えています。介護療養病床の利用者数を考えるとまだまだ足りない数字ですが、これからも急速に増える可能性があります。
介護療養型医療施設で現在勤務している方は、廃止されることで不安に思っているかもしれませんが、そのまま介護医療院に転換される病院も多く、また新設される介護医療院も、スタッフを募集しているはずです。
もし転職しなければいけない状況になっても、介護療養病床で医療と介護どちらにも関わる仕事をしていたという経験は、介護医療院などの施設にとっては即戦力となるため採用されやすいといえます。
また施設の廃止は、利用者にとっても大きな不安になっている可能性があります。介護料寮病床の廃止については何度も見直しがされており、これからも新しい情報が入るかもしれません。職員は施設に関連する情報があれば取り入れ、廃止後の介護医療院への移行などについてもよく理解し、利用者の不安を取り除けるようにしましょう。