療養型病院とは

療養型病院とは、病状が安定したあとも長期的な医療を必要とする患者のための医療施設です。

医療法では病院にある病床を、以下の5つに分類しています。

  • 一般病床
  • 療養病床
  • 精神病床
  • 感染症病床
  • 結核病床

療養型病院は、このうちの療養病床にあたります。

流れとしては、一般病床で急性期治療を終え慢性期となった患者が、医療やリハビリテーションを受けるために入院する形となります。

療養型病院の基準

療養型病院では、看護職員および看護補助者の常勤が100床あたり17人(6:1)必要と定められ、ほかの医療施設とくらべても多めになっています。

ほかにも、機能訓練室や談話室、食堂、浴室などの設置も定められています。

療養型病院はその性格上、入院期間も3ヶ月以上と長めに設定されています。

また、多床室があることから費用負担も比較的軽めとなっています。

療養型病院には2種類ある

療養型病院は、保険制度によって2種類に分けられています。

医療療養病床

療養型病院のうち、医療法に基づいて医療保険が適用されるのが「医療療養病床」です。

こちらは、早期の退院を目標として経過的な医療およびリハビリテーションを中心に行います。

医療行為は看護師が、介助は看護補助者などが担当します。

治療を目指す病院なので、入院期間も原則として3ヶ月間と設定されています。

月額費用は、平均で45~60万円ほどです。

介護療養病床

一方、療養型病院のうち介護保険法に基づいて介護保険が適用されるのが「介護療養病床」です。

こちらではおもに、日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)の向上を目標としています。

そのため、介護福祉士などのケアスタッフによる身体介助も行われます。

医療にくわえ、より介護を重視した療養型病院です。

そのため、入院期間も1年間と長めに設定されています。

月額費用は、平均で35万円前後となっています。

医療・介護療養病床別の入院対象者

同じ療養型病院でも、医療療養病床と介護療養病床では患者のタイプもそれぞれ異なっています。

医療療養病床の入院対象者

医療療養病床では、ある程度病状が安定した慢性期の患者のうち、長期療養の必要な患者を入院の対象としています。

介護療養病床の入院対象者

一方、介護療養病床では同じように病状が安定した慢性期の患者のなかでも、介護や世話を必要とする患者を対象としています。

そのため、要介護1以上の認定を受けていなければ入院することはできません。

年齢制限も原則として65歳以上の高齢者のみとなっています。

ただし、要介護認定さえ受けていれば何歳からでも相談することは可能です。

療養型病院のなかには、これらの基本条件以外にも、伝染病の疾患がないこと、などの条件を細かく設けているところがあります。

くわしく知りたい場合は、事前に問い合わせておきましょう。

介護療養病床のメリット・デメリット

介護療養病床と同じように、要介護者を受け入れている施設には「介護老人保健施設」や「特別養護老人ホーム」などがあります。

それらにくらべ、介護療養病床にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

介護療養病床のメリット

医療ケアの充実

まず最大のメリットは医療ケアの充実度です。

リハビリテーションの環境だけでも、ほかの施設とは大きな差があります。

コストの低さ

また、コストの安さもメリットのひとつです。

入院は月額10~20万円ほどからで、入居一時金なども必要ありません。

これが民間の有料老人ホームになると、月額で10~40万円、入居一時金には数千万円~1億円以上かかることもあります。

介護療養病床のデメリット

提供されるサービスに制限がある

一方、生活面ではほかの施設に劣る部分もあります。

基本的に、掃除や洗濯、買い物などの生活援助は行われません。

職員や入居者との間で、レクリエーションが行われることもあまりありません。

多床室が多いため、プライバシーが保たれにくいのもデメリットのひとつです。

退院を余儀なくされることがある

また、入院という扱いなので、症状が良くなれば退院を求められることになります。

療養型病院はあくまでも医療機関であり、治療がメインであるということはよく理解しておかなければいけません。

さらに、介護療養病床は2023年度末で廃止が決まっているため、先行きが不透明なのも不安な点となっています。

介護療養病床で提供されるサービスの内容

介護料療養病床では、主に以下の3つのサービスが提供されます。

  • 医療
  • 機能訓練
  • 介護

医療は、医師による診察や、看護職員による看護が中心となります。

ターミナルケアもほかの医療施設とくらべ重視されています。

インスリン注射や痰の吸引、胃瘻やカテーテルなど、寝たきりの患者にも対応できる体制がととのっています。

機能訓練では、機能訓練指導員や生活相談員によるリハビリテーションが行われます。

専門的な知識の深い理学療法士や作業療法士が多く、より効果的な内容を期待することができます。

介護では、介護職員に食事から入浴、排泄まで、日常生活上のさまざまな世話を受けることができます。

このように、介護療養病床では専門スタッフによる質の高いサービスを受けられるのが特徴となっています。

療養型病院が廃止されるに至った経緯

療養型病院のうち、介護療養病床は2023年度末で廃止されることが決定しています。

もともと療養型病院は、長期的な医療が必要な患者のための施設として、2000年の介護保険法施行および2001年の医療法改正に基づき創設されました。

一定の役割は果たしてきましたが、5年後の2006年には医療保険制度改革や診療報酬と介護報酬の改定にともない、2011年度末での廃止が検討されます。

ところが、当時予定されていた介護老人保健施設などへの移行がうまくいかず、廃止の延長が決定。2011年の介護保険法改正により、療養型病院のうち診療報酬基準の配置人員が25対1の医療療養病床と、介護療養病床が2017年度末に廃止になることが決定されました。

この時点で、2012年以降は介護療養病床の新設も認められないこととなっています。

しかし、この新施設への移転もやはりうまく進まず、2017年の法改正により、廃止は2023年度末までふたたび6年間の延長となりました。

現状では、介護療養病床は2006年の約12万12万7,000床から半減しています。

一方、医療療養病床の数は約21.6万床から微増となっており、2018年以降の新しい療養型施設への移行もスムーズにいかないのではないかと介護難民を危ぶむ声もあります。

療養病床が廃止される理由

療養型病院では、かねてから医療費の増加や人員不足の問題をかかえていました。

また、医療施設であるにもかかわらず、介護保険が適用されているという点にも疑問の声が上がっていました。

その点も含めて、厚生労働省では2011年度末の廃止検討のさいに療養型病院の調査を行いました。

その結果、医療療養病床と介護療養病床のどちらにも、医療の必要性の低い患者が半数近くもいることが判明しました。

つまり、療養型病院で患者の区分を行っていることに、ほとんど意味がなかったということです。

その一方で、介護療養病床にはいまだに入院希望者が多く、何ヶ月も待たされているというねじれた現象もみられました。

このような問題を解消するために、介護療養病床を廃止して医療の必要性の低い患者は従来の介護施設に移すという方針が採用されました。

現在療養病床を利用している人はどうなるのか

新しい受け入れ施設への移行が予定されている

介護療養病床が廃止されたあとは、3~6年の経過措置期間をおいて、新しい施設への患者の移行が予定されています。

その行き先は、身体機能や医療の必要性によって、新しく創設される

  • 「介護医療院」のⅠ型
  • 「介護医療院」のⅡ型
  • 医療外付け型

の3つに分けられます。

介護医療院のⅠ型は、容態が急変する恐れのある患者の受け入れが先となります。

入所基準は要介護4以上となります。従来の介護療養病床にあたる施設という位置づけで、施設基準や人員基準などもこれに基づいています。

さらに、以前のケアスタッフでは対応できなかった喀痰吸引や経管栄養などを行うため、より医療に特化したスタッフが配置される見込みです。

介護医療院のⅡ型とは

一方、介護医療院のⅡ型は、要介護3以下の比較的安定した患者が対象となります。

こちらは、従来の介護老人保健施設に相当する施設基準で、 100床につき常勤の医師が1人以上(100:1)、 看護職員および介護は34人以上(3:1)で、そのうち7分の2程度が看護職員となります。

Ⅰ型とくらべると、より看護と介護に重きをおいた配置となっています。

また敷地面積も介護療養病床より広くなっていて、生活施設としての側面が強くなっています。

月額も安くなりますが、3ヶ月ごとに入退院所の判定が行われるので、一年間といった長期の入所は難しくなります。

医療外付け型とは

「医療外付け型」は、「Ⅱ型」と「有料老人ホーム」を組み合わせた、新しいタイプの施設です。

医療機関は医療法が適用され、居住スペースには介護保険法および老人福祉法が適用されます。

個室でプライバシーが守られ、入居基準も要支援1からと、より幅広い受け入れを期待することができます。

【施設関係者向け】医療、介護療養病床別の人員基準

療養型病院の人員基準は、医療法によって原則が定められています。

そのうち医療療養病床では、病床数100あたり以下の人数の常勤が必要です。

医療療養病床の人員基準
医師 3人以上
薬剤師 1人以上
看護師および准看護師 20人以上
看護補助者 20人以上
栄養士 病床数100以上の病院に1人

より医療を重視して、看護職員の割合が高くなっているのが特徴です。

一方、介護療養病床では、病床数100あたり以下の人数の常勤となっています。

介護療養病床の人員基準
医師 3人以上
薬剤師 1人以上
看護職員 17人以上
看護補助者 17人以上
介護職員 17人以上
介護支援専門員 1人以上
栄養士 病床数100以上の病院に1人

医療療養病床とくらべると、看護職員と介護職員の割合が同等となっています。

さらに介護支援専門員を置くなど、ケアスタッフによる介助が中心となっていることが分かります。

療養型病院にかわる施設も含めて理解しよう

2023年度末には、介護療養病床は廃止されることが決定しています。

その一方で、医療や介護の可能な施設を探すとなると、やはり現状で介護療養病床を外すことはできません。

今後、長期入院を希望するのであれば、その施設が療養型病院として廃止後にどのような形を取るのか、また自分はどの施設に受け入れられることになるのか、そういった点もよく理解しておく必要があります。

分からないことがあれば、ケアマネージャーやサービス提供責任者に積極的に相談してみましょう。

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