目次
「地域包括支援センター」とは
高齢者の生活サポートに関する、地域の相談窓口
地域包括支援センターとは、市区町村が設置している高齢者に関するサービスの相談窓口です。
地域包括支援センターは、介護保険法(介護保険サービスに関する法律)に基づいて全国の市区町村に設置されています。
設置場所は役所の中や地域にある高齢者施設の中、民間の貸しビルの一角などいたるところに存在しているので、中には近くを通ったことがある方もいるかもしれません。
地域包括センターでは、役所の職員、または委託を受けた事業者の職員が基本的には活動しています。
地域包括支援センターは地域ごとに設置されているので、高齢者に関するサービスの相談や手続きのために役所まで行かなくても地域包括支援センターで済ませられます。
要は、地域包括支援センターとは簡単に言えば、高齢者のための公的な出張相談窓口の役割を担っているともいえるでしょう。
地域包括支援センターが担う役割には、大きく分けて次のようなものがあります。
- 介護予防ケアマネジメント業務
- 総合相談支援業務
- 権利擁護業務
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
以下で、その4つの役割について業務などの詳細について説明していきます。
地域包括支援センターの役割「介護予防ケアマネジメント」
地域包括支援センターが果たす役割の1つ目は、介護予防ケアマネジメント業務です。
具体的な業務としては、介護サービスが必要な状態になる前の人たちを対象に行う、介護状態になる前の予防支援に関わる業務全般が当てはまります。
そもそも、ヘルパーやデイサービスといった介護保険サービスを受ける際は、事前にサービスを受ける方の身体状況や記憶力、精神状態などのチェックを行い、総合的な状態を8種類の評価に応じてサービスを利用することになります。
非該当 | 元気なのでまだサービスは不要 |
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要支援1 | 自力で生活ができるものの、一部サポートが必要 |
要支援2 | 要支援1のサポートに加え、移動などにもサポートが必要 |
要介護1 | 介助が必要だが、排せつや食事は自分でできる |
要介護2 | 排せつや食事にも介助が必要 |
要介護3 | 不安行動や理解力の低下がみられる |
要介護4 | 多くの不安行動や理解力の低下がみられる |
要介護5 | いわゆる寝たきりの状態 |
このうち、「要支援1」と「要支援2」評価の方がヘルパーやデイサービスなどの介護保険サービスを受ける際の、事業者選び・介護保険サービスを受ける内容や曜日・時間・介護保険サービスを受けて目指す目標などの計画書(ケアプラン)があります。
地域包括支援センターでは、このプランの作成支援や直接作成を行うなどの業務が行われています。
たとえば、3ケ月後には団地の階段を一人で降りられるようになるために毎週木曜日にリハビリを主とするデイサービスに行く間、毎週火曜日の10時にヘルパーが自宅に来て近くのスーパーで食材を買ってきてもらう、といったプランを本人や家族と一緒に話し合って決めていきます。
このように、地域包括センターはそのような「自立状態」「要支援状態」の方たちが状態を維持、さらには回復できるようになるためのマネジメント支援を担っているのです。
地域包括支援センターの役割「総合相談支援」
次の役割「総合相談支援業務」について説明します。
これは、高齢者のさまざまな困りごと、悩みごとなどサービスなどの相談に対応するものです。
相談内容は多岐にわたっており、以下のような相談があげられます。
- 市区町村が行っている福祉サービスや介護保険サービスの利用相談
- 介護予防のための体操教室や認知症予防教室の情報
- 在宅療養といった医療に関すること
- 高齢者施設への入所のこと
- 虐待に関する悩み相談
また、最近では自分の人生の最期を前向きに考える終活(「しゅうかつ」)、自分の終末期医療のことや亡くなった後のことを記す「エンディングノート」の書き方相談なども増えてきています。
地域包括支援センターの役割「権利擁護」
3つ目の役割、「権利擁護業務」です。
この業務については、名称のとおり高齢者の「権利」を守るため当事者による相談に対応したり、法的措置をとるための支援をしたりすることなどが具体的な業務として挙げられます。
こちらについては「財産」と「虐待」の2つに分けて説明します。
「財産」を守る
これは加齢や認知症などにより判断能力が衰えた高齢者本人の財産を守る業務です。
たとえば、異常な数量の健康食品を購入している、悪質業者とリフォームの契約をしたなどの高齢者がだまされて財産を失わないように警察署と協力して注意喚起をする、消費生活センターにつなげるといった役割も行います。
また、精神疾患や認知症の悪化などにより自分の日常の金銭管理ができない場合は、市区町村と相談して成年後見人制度(※家庭裁判所に登記した人が、合法的に本人に代わって契約行為や銀行預金の引き出しなどを行う制度)の説明や手続きのサポートも行います。
「虐待」から守る
これは高齢者を虐待から守るための業務です。
残念ながら高齢者への虐待は増加傾向にあり、厚生労働省の発表では、平成28年度は、高齢者施設のスタッフからの虐待が452件、配偶者や家族、親族などからの虐待が1万6384件もありました。
「虐待」というと叩く・蹴るといった暴力による虐待というイメージがありますが、それ以外にも言葉の暴力や、無視や大きな音をだして高齢者を委縮させる精神的な暴力、年金や預貯金を搾取する経済的虐待、介護が必要な状態にもかかわらず家族が一切面倒を見ない「ネグレスト」、人前で裸にさせる「性的虐待」などがあります。
こういった虐待を受けている本人や、虐待行為を見た人が地域包括支援センターに通報すれば、地域包括支援センターのスタッフと市区町村の職員が協力して、高齢者を虐待から守る役割もあります。
地域包括支援センターの役割「包括的・継続的ケアマネジメント支援」
4つ目の役割、「包括的・継続的ケアマネジメント支援業務」とは、高齢者が住み慣れた自宅で生活を送り続けるために、介護や医療だけでなく、住まいや生活に関することなどあらゆる要素を総合的(包括的)に、かつ継続的に支援する業務です。
具体的には、足が悪く買い物に行けない高齢者に民間企業の宅配サービスや配食サービス、介護予防のための地域の体操教室の内容、生きがいづくりのための地域サークル活動、などの情報を紹介や関係者につなぐ業務です。
その他にも、同じ市区町村にあるケアマネジャーが抱える困難事例の支援や、スキルアップの支援の役割も行っています。
地域包括支援センターへの相談費用
相談自体は無料
これまで、地域包括支援センターで受けることができるサービスとして、相談やサービスの手続き、ケアプランの作成などについて説明してきましたが、ここではサービスに対する費用について説明します。
地域包括支援センターの業務は、公的機関の業務なので相談や手続きなどに対する費用は発生しません。
つまりすべて無料です。
介護保険サービスを使う際に作成してもらう「ケアプラン」については、区市町村が費用を全額負担するので、こちらも本人の負担はありません。
ただし、介護サービスの利用の際には、保険適用内でも、適用外でも費用はかかります。
その際、所得条件などで自己負担額の割合が定められているので、気になる方はチェックしてみましょう。
地域包括支援センターの多様な役割を果たすスタッフ
地域包括支援センターは、福祉や介護サービス、医療、権利擁護などの業務を行うにあたり、どのようなスタッフがいるのか説明します。
地域包括支援センターのスタッフは、福祉サービスや権利擁護の業務を専門とする「社会福祉士(ソーシャルワーカー)」という資格をもったスタッフと、介護保険サービスに関する業務を専門とする「介護支援専門員(ケアマネジャー)」の資格をもったスタッフ、介護予防の取り組みや、認知症予防の取り組み、医療関係の業務を専門とする「看護師」または「保健士」の資格をもったスタッフの3職種のスタッフが在籍し、地域のために働いています。
地域包括支援センターを運営する市町村の役割
地域内の連携と、医療関係者同士の連携をリードしていく役割
2006年の介護保険法改正により設置された地域包括支援センターは、これまで説明しました4つの役割を果たす機関として、全国で約4600か所(2015年4月現在)に設置されています。
設置から10年以上が経ち、役割も少しずつ変わってきました。
まず、これまで以上に在宅での生活を継続できるように、地域での連携強化としてネットワークづくりの役割が強くなってきています。
また、総合病院の退院支援関係者や地域の医師、訪問看護ステーションのスタッフといった医療関係者と、ケアマネジャーの連携を図る役割も出てきました。
地域包括ケアシステムの構築という新たな役割
日本は世界でも例を見ない速さで高齢化が進んでいます。2025年には団塊の世代(約800万人)が75歳以上となり、医療や介護の需要が非常に高まるといわれています。
こうしたことから、厚生労働省では2025年を目途に住み慣れた自宅で最後まで生活ができるように、市区町村と医療機関、地域の活動、民間企業などが連携して介護や医療、住まい、生活支援のサービスを一体的に提供できるシステムを作ると提唱しています。
すでに、地域包括支援センターのスタッフが役所の職員や地域で活動している方々と協力して、地域の特性を活かした地域包括ケアシステムの活動を始めています。
地域包括支援センターが果たす役割は今後も拡大の見込み
地域が抱える課題が複雑化してきている
これまで地域包括支援センターが果たす役割は、地域の高齢者ができるだけ住み慣れた自宅で生活し続けられるための支援を行ってきました。
端的に言えば、その目的を阻む諸課題に対応するのは、地域包括支援センターがほとんど担えていたのです。
しかし近年は、地域の抱える課題が複雑化してきています。
例えば、独居高齢者の増加による孤独死の問題や同居家族の子供や孫の引きこもり、障害者の高齢化によるサービス不足の問題、超高齢化による多死時代を迎え、これまで以上に在宅医療と介護の連携を図る必要性が迫られていることなどが挙げられます。
- 親が急に介護が必要になったけど、どこに相談すればいいの?
- 最近、物忘れがひどくなった気がする
- 介護予防のために体操教室に行きたい
このように福祉や介護、認知症、地域の活動など、困ったことがあったらぜひ近くの地域包括支援センターの活用を検討しましょう。
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地域包括支援センターでは、医療や介護などの面から高齢者の方が安心して生活を続けられるように支援を行うことが役割です。もし、今回の記事を見て働いてみたいと感じた方は、介護職への転職を検討してみましょう。
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