介護職の中でもマネジメント業務を担当する代表的な職種がケアマネージャー、そして今回紹介するサービス提供責任者です。
同じマネジメント業務とは言え、活躍する場も異なれば、仕事内容も似て非なるものです。
これからキャリアアップの一環としてマネジメント業務を担当したいと考える方にとっては、どちらの職種を選べば良いのか悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、介護職においてマネジメント業務の一翼を担うサービス提供責任者、通称「サ責」をクローズアップしていきます。
転職時に最低限おさえておきたい基礎知識について解説していくので、是非参考にしてください。
サービス提供責任者になるには、満たさなくてはならない要件や配置基準などがあるので目指すことが難しいと感じる方もいます。どのようにすればなれるかわからないのであれば、転職エージェントに相談することがおすすめです。
ウィルオブ介護は介護職に特化しているので、サービス提供責任者になるためにどのような働き方をすれば良いかアドバイスができます。相談だけでも受け付けていますので、悩まれている方は是非一度お問い合わせください。
目次
サービス提供責任者(サ責)とは?
サービス提供責任者とは、訪問介護サービスを利用する利用者様に提供するサービスの責任者のことを指し、略して「サ責」とも呼ばれています。
訪問介護は、利用者様が居宅において自立した生活を送ることができるよう支援する介護サービスです。
サ責は自立支援が円滑に進むよう、さまざまな調整を行います。
ポイントは、利用者様の自立を支援するのはもちろんとして「支援」をサポートすることなので、現場ヘルパーの業務支援なども担当します。
介護職において、責任者のような立場の職種はさまざまありますが、特にサ責の特徴は以下のものがあります。
- 「在宅介護サービスを提供する事業所」に特化した責任者
- 介護の現場に立つことがある
- ヘルパーのサポートや育成を担当する
なお、訪問介護事業所には、過去3カ月の平均利用者数が40人に対して1人以上の常勤サ責の配置が義務付けられています。
40人を超える場合は、40人をプラスするごとに常勤で1人増やさなくてはなりません。
ケアマネージャーとの違い
ケアマネージャーとサービス提供責任者は混同されやすい傾向にありますが、以下の点で両者は異なります。
- サービス提供責任者は、介護事務所をマネジメントする
- ケアマネージャーは、サービス事業者と利用者の調整に関するマネジメント業務を行う
- サービス提供責任者は、介護スタッフの業務の穴埋めをすることもある
サービス提供責任者は、介護におけるマネジメント業務を行う仕事です。
同様にケアマネージャーもマネジメントを仕事としますが、両者は何をマネジメントするのかが異なっています。
サービス提供責任者は、事業所のスタッフや利用者をマネジメントしているのです。
ケアマネージャーは、利用者だけでなく訪問介護サービスやデイサービス、介護用品のレンタル事業者など幅広い介護に関連する部署を対象に、利用者に合う介護サービスを紹介します。
さらに、両者は介護業務を行うか否かでも違いがあります。
サービス提供責任者は、介護現場に近いところで業務を行っているので、所属する介護事業所で介護業務も行う傾向にあるのです。
シフトに穴が開いたときには、サービス提供責任者が介護スタッフとして介護業務を提供することもあります。
派遣の求人はある?
サ責は事業所のリーダー的なポジションですが、リーダーが派遣や非正規では事業所を安定して運営していくことができません。
そのため、サ責は正社員としての採用となる場合がほとんどで、派遣求人はめったに存在しません。
ただし、例外もあります。
事業所がオープンしたばかりだったり、運営がうまくいかなかったりしたときに、テコ入れとして、経験豊富なサ責を期間限定の派遣で採用することがあります。
この場合、派遣のサ責は他のサ責の指導をしたり施設の問題点を指摘したりする傾向がありますが、このようなケースはめったにありません。
サービス提供責任者の仕事
サ責は訪問介護のリーダー的存在であるため、その仕事内容は実に多岐に渡ります。
ここでは、業務内容や一日のスケジュール、実は兼務ができることについて解説していきます。
主な業務内容
施設によって業務内容に違いがありますが、基本的には以下の業務を任されるので確認をしておきましょう。
利用者様およびそのご家族とのアセスメント
訪問介護サービスの利用にあたり、利用者様およびそのご家族と面談して意見や要望をヒアリングします。
訪問介護計画書の作成
ケアマネージャーが作成したケアプランをもとに、利用者様にどのようなサービスを提供したら良いのかを考えて計画を立て、利用者様やそのご家族に説明し同意を得ます。
そして、サービス提供後も随時モニタリングを行い、必要があれば計画の変更も行います。
サービス提供手順書の作成
担当ヘルパー向けに、サービスの方法や注意点などをまとめた手順書を個々に作成します。
ヘルパーのマネジメント
計画書に沿って、ヘルパーに指示出しや指導・助言を行うほか、ヘルパーのスケジュール調整なども行います。
また、ヘルパーの相談や要望をケアマネや管理者に伝え、業務改善を図ることもサ責の重要な役割のひとつです。
事務作業
利用者様とそのご家族、担当ヘルパー、ケアマネら関係者が一同に介するサービス担当者会議に出席して意見交換を行います。
事業所の規模などによってはサ責が管理者を兼務することも多く、その場合は収支の管理や介護報酬請求業務、人材の採用業務なども担当します。
ヘルパー業務
経験が浅いヘルパーに同行して利用者様の居宅を訪問したり、ヘルパー欠勤時などには仕事を代行したりします。
主な勤務場所
サ責が活躍するのは主に訪問介護事務所で、有料老人ホームなどに併設されていることもあります。
また、職場にはサ責を配置できる基準があるので、利用者の人数によっては施設で受け入れられる人数が制限されてしまい、募集枠も狭まります。
気になる方は、応募前に施設の利用者数やサ責の配置人数なども確認しておきましょう。
【サービス提供責任者の配置基準】直近3ヵ月の平均利用者数(一か月あたり) | 必要なサ責人数 |
---|---|
0~40人 | 常勤1人以上 |
41~80人 | 常勤2人以上 |
81~120人 | 常勤3人以上 |
121~160人 | 常勤4人以上 |
兼務ができる現場もある
結論からいうと、サ責は指定訪問介護の提供に支障がなければ同じ敷地内の一部業務を兼務できます。
しかし、これはすべての施設で適用されるわけではないため、兼務できるかは入職した職場に確認をしてください。
※参照:e-GOV法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
- \ サ責の求人多数! /
- 介護職への転職を検討中の方相談はこちらから
一日のスケジュール例
兼務や施設の方針によって変わりますが、一日でどのような業務をこなしていくのかを一例を表にまとめて解説します。
実際働くとなったときに自分の中でスケジュールを組み立てることで業務がスムーズに進むようになるので、ぜひ参考にしてください。
9:00 | 朝礼や申し送りなど |
---|---|
10:00 | サービス担当者会議に出席 |
12:00 | 休憩 |
13:00 | 新人ヘルパーの訪問同行 |
14:30 | 訪問介護計画、ヘルパーのシフト作成など |
16:00 | モニタリング訪問 |
17:00 | サービスの手配など事務作業 |
18:00 | 退社 |
サービス提供責任者の給料
では、サ責の平均給与はどのくらいなのか、表でまとめて紹介します。
【サービス提供責任者の平均給与額(令和3年)】月給者の平均給与額 | 32万7020円 |
---|---|
時給者の平均給与額 | 15万8490円 |
※参照:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」第92表、第94表
介護職員全体で月給者の平均給与額は31万6610円、時給者の平均給与額は11万3490円なので、全体の平均よりも少し上の給料といえます。
そのため、経験や資格を取得したところでスキルアップを検討されているのであれば、ぜひ転職を検討してみてください。
ほかの介護職の給与について知りたい方は、こちらの「介護士の平均年収・月給はどのくらい?給料を上げる5つの方法も解説」をぜひご覧ください。
サービス提供責任者になるために必要なこと
サ責の仕事に興味があり、転職をしたいと考えてもまずは何を用意すれば良いかわからない方はいるものです。
ここでは、サ責に転職する際に必要なことや要件などについて解説していきます。
資格の有無
サ責について調べたことがあれば知っている方もいますが、サービス提供責任者とは職種や役割の名称なので、特別な資格はありません。
そのため、要件に当てはまる方はすぐにでもサ責として働けるので、次項目に記載する要件を確認しておきましょう。
満たさなくてはならない要件
資格がない代わりに、サ責として働くためには以下の要件が必要となります。
- 介護福祉士実務者研修を修了している
- 介護福祉士を保有
- (旧)ホームヘルパー1級課程修了者
実は、この要件は2018年度に一度改定されていて、実務経験3年以上のホームヘルパー2級修了者が要件からなくなりました。
現在適用されている要件の中に現在は廃止されているホームヘルパー1級がありますが、廃止前に保有・修了している場合はサ責の対象になりますよ。
サービス提供責任者のやりがい・魅力
ここからは、サ責のやりがいや魅力をいくつか紹介していくので、自分に合う仕事か不安な方は参考にしてください。
自分の計画に沿って仕事ができる
「主な業務内容」で話した通り、訪問介護の計画書やサービス提供手順書の作成など、利用者や介護職員に向けた計画書を作成します。
それに伴い、利用者とその家族や介護職員との連携も多くなるので責任も大きく、やりがいを感じられる仕事です。
利用者が自分の計画した通り介護を受けて元気になる過程を見られることは、やりがいでもあり達成感を得られる魅力があります。
感謝される機会が多い
利用者やその家族との交流もあるため、直接感謝の言葉を聞く機会が増えます。
言葉を聞けることや利用者が回復していくのが見えることが、仕事に対するやりがいにつながる一つの要因です。
キャリアアップにつながる
介護のために計画書を作成するためには、それだけ介護業界に関する知識が増えていきます。
すると、自然と介護業界への理解が深まり、ほかの介護職に転職したいと考えたときにも役立つのです。
もちろん、サ責は重要な役割をしているのでこの仕事に就くだけでもキャリアアップしたといえますよ。
サービス提供責任者に転職するコツ
サ責に転職するコツとしては、以下の4つがあります。
- 応募先の事業所のことをよく理解しておく
- サ責としての目標やキャリアプランを明確にしておくこと
- 事業所にアピールできる能力を具体的に説明できるようにしておくこと
- 考え方に共感できる事業所を探すこと
サ責は事業所のリーダーとなる存在で、基本的な介護ができることはもちろん、勤務先となる事業所のことを理解しておく必要があります。
理念や方針、事業所が持つ魅力や特徴などを理解し、面接や履歴書で「事業所のことを知っている」「共感している」ことをアピールするのが転職のコツになってくるのです。
他の応募者と差をつけたいなら、サ責として今後事業所をどのように進化させるための目標やキャリアプランを言語化できることも重要になってくるでしょう。
ただし、やる気ばかりを伝えるのはNGです。
自分の長所や能力をきちんと把握して、事業所にどのような利益を提供できるかも伝えるようにしましょう。
いずれにせよ、この事業所だからこそ働きたいと思える事業所を見つけることが何より大切になるはずです。
サービス提供責任者に関する疑問
ここまで、サ責について解説をしてきました。
そのことを踏まえ、ここでは疑問に思われることが多い内容について解説していきます。
パートや派遣でもサービス提供責任者になれますか?
パートや派遣などの非常勤でもサ責として働くことは可能です。
しかし、常勤の勤務時間の二分の一以上(週20時間以上)は勤務するという条件があるため、全体で見ると正社員として勤務するケースが圧倒的に多いといえます。
どのような業務をしているかはこちらの「サービス提供責任者の仕事」で解説をしているので、これから挑戦してみたい方は参考にしてください。
未経験からでもサービス提供責任者になれますか?
未経験からでも、サ責を目指すことはできます。
サ責になるための必須資格のひとつである実務者研修には受講資格の制限はないので、それを修了することで仕事に就けます。
ただし、実際の求人では経験者を募集していることがほとんどです。
まったくの未経験の場合は、入社してしばらく現場で実務経験を積んでからサ責に任命されることがあります。
「満たさなくてはならない要件」でなるために何が必要かを解説しているので、サ責への転職を考えている方はぜひ一度ご覧ください。
まとめ
責任重大で業務内容が多岐に渡ることから、少し懸念されがちなサービス提供責任者ですが、その分やりがいや魅力があります。
そして、施設内のみならず施設外とも交流があるため学ぶことも多い仕事です。
業務を通じて介護・福祉・医療の知識が身に付くだけではなく、マネジメント力やコミュニケーション力のようなスキルに磨きをかけられますよ。
介護の2025年問題からも、今後訪問介護サービスの利用者が増加すると予測されています。
それにともなって事業所も増加してくれば、サービス提供責任者のニーズも今後ますます高まり、介護職員に対する処遇改善にも期待ができます。
すでに資格を持っていて転職を検討しているようなら、サービス提供責任者をチェックしてみてはいかがでしょうか。
サ責の仕事は、利用者と介護職員の双方に対して計画書を作成するので、責任が大きく大変な印象があります。しかし、それをやりがいと感じることがありますし、自分が計画した通りにサービス提供をすることで利用者が回復していく経過を見ることもできます。
ウィルオブ介護でもサ責の求人を扱っていますので、興味がある方やサ責の仕事に転職したい方はぜひ一度ご相談ください。