介護職は業務をするにあたって、利用者や職員など多くの人とかかわる必要がある職業です。
そのなかで、どのようにコミュニケーションをとったら良いのか悩み、難しく感じてしまう方も多くいます。
この記事では、介護現場でのコミュニケーションの必要性やコミュニケーションの種類、上手に話すコツなど解説します。
利用者とだけではなく、スタッフ同士の場合にも応用できる方法を紹介するので、参考にして試してみてください。
目次
介護におけるコミュニケーションの必要性
コミュニケーションとは、感情や情報を誰かと相互に伝え合ったり受け取りあったりすることをいいます。
介護におけるコミュニケーションは、利用者と信頼関係を結ぶためや提供する介護の質を高めるために必要不可欠なものです。
介護施設の利用者は加齢や障害によって言語機能や視覚、聴覚の機能が低下してコミュニケーションをとるのが困難になることが多くあります。
そのために利用者は自分の意思をうまく伝えられず、もどかしい思いや不安、ストレスを抱えてしまうのです。
そこで、介護士が利用者の話を受け入れ気持ちに寄り添い、安心感や信頼感を与えることが大切になります。
丁寧に利用者の話をヒアリングすることで、それぞれに適した介護の提供をすることにつながります。
また、コミュニケーションは利用者との間だけでなく、介護スタッフ同士の関わりの中でも必要です。
介護現場では、介護職員以外にも医療職、リハビリ職、相談員、連携機関のスタッフなど多くの人と協力して介護を提供します。
そのなかで、コミュニケーションが上手くいかないと介護内容の質が下がってしまったり、精神的な負担を感じたりしてしまいます。
多くの人と密接に関わりながら業務を行う介護職にとって、円滑なコミュニケーションはとても重要なものなのです。
コミュニケーションの種類
コミュニケーションは大まかに言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの2つに分類されます。
これらのコミュニケーションをうまく使うことによってスムーズなやり取りができ、信頼関係を築いていけるようになります。
言語的コミュニケーション
言語的コミュニケーションは、話し言葉や書き言葉など、直接的に言葉を使って相手と意思や情報の伝達をする手段です。
音声言語(話し言葉) | 対面や電話などの機器を使っての会話 |
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文字言語(書き言葉) | 筆談・メール・指文字など |
記号(表象された言葉) | モールス信号・点字・手話・手旗など |
※参照:厚生労働省「自己決定の支援とは何か~判断能力が不十分な人への関わりを中心に」P16
言語的コミュニケーションでは話す言葉の内容や意味が主軸となるため、はっきり具体的に伝えたいことがある場合に適しています。
しかし、言葉だけでは細かなニュアンスや言葉以外の感覚的な情報が伝わりづらく誤解を招くことがあるデメリットも存在します。
自分の意志や考え、業務内容などの指示を直接的に伝えたいときには、音声言語(話し言葉)を使って明確に伝えましょう。
客観的なデータに基づいた情報や記録に残しておきたい会話などは、文字言語(書き言葉)を使うと効果的です。
非言語的コミュニケーション
非言語的コミュニケーションとは、声や顔の表情など、言葉以外の要素である視覚や聴覚で相手と意思や情報の伝達をする手段です。
パラ言葉(言葉の表情) | 声の大小・強弱・速さ・間合い・テンポ・リズム・抑揚・言葉の量など |
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身体表象 | 顔の表情・視線・アイコンタクト・姿勢・身振り手振り・態度・動作・行動など |
物(拡張した自我) | 服装・身に着けるもの・所有物・使用物・絵画・音楽・手工芸品など |
※参照:厚生労働省「自己決定の支援とは何か~判断能力が不十分な人への関わりを中心に」P16
コミュニケーションにおいて言語情報が優先される割合は低く、非言語的コミュニケーションのほうが重視される傾向があります。
非言語的コミュニケーションを使うときに大切なことは、言語情報と非言語情報で伝えたい内容を一致させることです。
非言語情報は強く影響しやすい分、言語情報と矛盾した行動を取ってしまうと意図していない情報を与えてしまうことがあります。
しかし言語情報と非言語情報が一致すると、より説得力のあるコミュニケーションになり、安心感や信頼感が生まれやすいのです。
非言語的コミュニケーションは、言語で伝えたいことを感覚的に補強し、より円滑に会話をするために役立ちます。
介護現場でコミュニケーションを取る5つのコツ
ここでは、介護現場でうまくコミュニケーションを取るコツを5つ紹介します。
利用者の話を聞く
利用者とかかわるときには、まず親身に利用者の話をしっかり聞きましょう。
この時大切なのは、途中で利用者の話をさえぎらない程度に相槌を打ち、話を聞いている態度を示しながら、最後まで話を聞くことです。
しっかり話を聞くことで、話し手が自らの感情や思考を整理することを促し、自分の感情をコントロールする効果があります。
また、話を聞いてくれる聞き手に対しての信頼が生まれ、より円滑なコミュニケーションがしやすくなります。
コミュニケーション方法を上手く組み合わせる
言語的・非言語的コミュニケーションはそれぞれに欠点がありますが、組み合わせることでお互いを補強することができます。
介護現場では高齢者や障害を持つ利用者が多いため、うまく言語的コミュニケーションができない方もいます。
この場合は非言語的コミュニケーションを意識的に使い、目線の高さを合わせる、低めの声でゆっくり話すなどの工夫が効果的です。
また、職員同士の場合には業務にかかわる具体的な作業について、介護の方針についてなどのコミュニケーションが必要になります。
この場合には言語的コミュニケーションを意識的に使い、言葉の意味合いや伝えたい内容を重視しての明確な伝達が大切です。
何を誰に伝えたいのかによって言語的・非言語的コミュニケーションを使うバランスを考えると、気持ちや情報が伝わりやすくなります。
しかし、あまり意識しすぎると不自然な言動になってしまうため、少し気に留めておく程度での実践がおすすめです。
閉じた質問と開かれた質問を使い分ける
会話の中で何か質問をするときに、質問の仕方を意識するのもコミュニケーション技術の一つです。
閉じた質問は、「はい」か「いいえ」などの少ない語数で答えられる形式の質問です。
答えが一つに定まることがほとんどのため、話すのが苦手な人でも答えやすいメリットがあります。
初対面や知り合ったばかりの人、物事をはっきりさせたい時に使うのも有効です。
しかし、閉じた質問ばかりをしていると話が展開していかず、盛り上がりに欠けてしまうのが欠点です。
開いた質問は、簡単な言葉では回答することができない5W1Hを用いた形式の質問です。
答えが一つに定まらないため、閉じた質問よりも多くの情報を得たり、話題を広げて新たな視点やアイディアを引き出すことができます。
一方で、回答の自由度が高いことから本題からずれた回答が返ってきたり、話の主旨が分かりにくくなってしまうこともあります。
閉じた質問と開いた質問を必要に応じて使い分けることによって、コミュニケーションを深めることが可能です。
はじめのうちは閉じた質問をしていき、徐々に開かれた質問に移って本題に入るのがコミュニケーションの定番ですよ。
どんなコミュニケーションを求められているのかを知る
一言でコミュニケーションといっても、どんな形態の施設で働いているかによって求められるものは違ってきます。
たとえば、デイケアやデイサービス、老人ホームなど比較的元気な利用者が多い施設では、楽しく活発な会話が求められます。
特養や老健、グループホームなどでは、まったりとしたアットホームな会話や認知症の方との会話が求められることが多いです。
その時々で求められているコミュニケーションがどのようなものなのか把握することで、話し方や会話の内容を吟味することができます。
否定せず受け止める
話をする相手が誰であるかにかかわらず、相手の言葉や考えを聞くときにはまず否定をせず、そのまま受け止めることが大切です。
どんな人であっても考え方や価値観に違いがあるので、自分と価値観が違っていてもそういう考えもあるのか、と参考にしましょう。
相手の立場になって共感や納得をすることで相手に寄り添い、信頼関係を築くことにつながります。
もし自分の意見を伝えたほうが良いと思った場合には、質問や提案の形でアドバイスするのがおすすめです。
たとえば「私は○○だと思ったのですが、△△さんはどう思いますか?」「◇◇してみるのはどうでしょうか?」のような伝え方があります。
コミュニケーションで役立つ話題
ここでは、コミュニケーションを取るきっかけ作りになる話題を紹介します。
天気・季節の話題
会話のきっかけを作りやすい話題として、天気や季節の話題があげられます。
「最近寒くなってきましたね」「今日は天気がいいので散歩に行きましょうか」など、その日の気候に合わせて声をかけましょう。
天気の話題にからめて自分自身の情報や、体調を気遣う思いやりの言葉を追加することでより話題を広げやすくなります。
出身地の話題
出身地に関する話題は、会話が弾みやすくどんな人とでも話せるものです。
話し相手の出身地が自分の行ったことのある場所であれば共通の話題が生まれ、話しやすくなります。
もし行ったことのない場所であれば観光名所や特産品、おみやげ物、その土地の文化や風習などを聞いてみましょう。
また、話し相手の子供時代や昔の経験に話題を膨らませやすいのも出身地の話題の特徴です。
食べ物の話題
食べ物については誰でも共通の話題として話しやすいです。
その日のメニューについて話しながら、好きな食べ物の話や得意な料理の話などにつなげることができます。
料理好きな相手であれば、料理のコツや新しいレシピのアイディアを聞いてみるのも話題になりますよ。
テレビ・ニュース・芸能人の話題
人気番組や芸能人、ニュースの話題なども利用者と話すきっかけを作りやすいです。
日頃どんなテレビ番組を見ているのか、好きな俳優が最近どんな作品に出ていたのかなど聞いてみましょう。
男性の高齢者であれば政治や経済の話題などが好きな人もいるため、ニュースや新聞を日々チェックするのもおすすめです。
コミュニケーション研修もおすすめ
コミュニケーションについてより専門的な知識を学びたいのであれば、コミュニケーション研修を受講するのも一つの方法です。
コミュニケーション研修は介護職員初任者研修のカリキュラムに含まれているので、初任者研修をまだ受講していない方は受講してみましょう。
さらにコミュニケーション技術を向上させたいのであれば、民間企業のセミナーや通信講座を受講する方法もあります。
座学、オンラインなどで受講できるものやディスカッション形式のものもあるため、自分の働き方や生活スタイルに合わせて選べますよ。
よくある質問
ここでは、介護現場でのコミュニケーションに関する質問を紹介します。
なぜ介護現場でコミュニケーションが必要なのですか?
介護現場におけるコミュニケーションは利用者との信頼関係を築き、よりよい介護を提供するためのものです。
利用者は言語機能や視覚、聴覚の機能が低下してしまっていることが多く、うまくコミュニケーションをとれないもどかしさを抱えています。
そんな利用者の気持ちに寄り添うことで安心感を与え、綿密な介護をすることが可能になります。
また、介護現場ではさまざまな職業のスタッフと連携して業務を行うため、一緒に働くスタッフとのコミュニケーションも必要になります。
スムーズに介護業務を行うにあたって、コミュニケーションはとても重要なものなのです。
こちらの「介護におけるコミュニケーションの必要性」でも解説しているので、あわせてご覧ください。
利用者とコミュニケーションを取るときのコツはありますか?
まずはじっくりと利用者の話に耳を傾けることで、利用者に寄り添い安心してもらうことができます。
ほかにも利用者に話かけるときには、非言語的コミュニケーションを意識的に使って話してみましょう。
聞き取りやすい低めの声でゆっくり話す、利用者の目線に合わせてしゃがむ、ジェスチャーを交えて話すなどの工夫が有効です。
くわしくは「介護現場で上手にコミュニケーションを取る5つのコツ」を参考にしてみてください。
コミュニケーションを学ぶ方法はありますか?
コミュニケーション研修というものが介護職員初任者研修のカリキュラムに含まれているので、まずは初任者研修を受講してみましょう。
より発展的な内容を学びたい方は民間資格やセミナー、通信講座もあるので、調べて自分に合ったものを選んでください。
まとめ
介護現場においてのコミュニケーションは、利用者と信頼関係を築き、円滑に介護を進めていくために大切なものです。
また、さまざまな職種のスタッフがかかわる介護職では、業務をするうえでもコミュニケーションを取る必要があります。
コミュニケーションの種類やコツなどの基本的な知識を身につけておくことで、スムーズに会話をすることができるようになります。
よりくわしく学びたい方はコミュニケーション研修が介護職員初任者研修のカリキュラムに含まれているので、受講してみましょう。
それ以外にも通信講座やセミナー、民間資格なども存在するので、調べてみるのがおすすめです。
この記事を参考に利用者や一緒に働くスタッフと信頼関係を築き、より良い介護を目指してくださいね。
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