バーセルインデックスとは、日常生活動作を評価する世界共通の評価ツールです。
大きな項目として2項目、小さな項目は10項目あります。
この記事では、評価項目の詳細や評価基準、バーセルインデックスを取り入れるメリットなどを解説していきます。
目次
(1)バーセルインデックスとは
「バーセルインデックス」とは、日常的な動作を自分だけで行える能力である「ADL」を図る評価手法です。
この指標を用いることで、その人がどれくらい自立して生活を送れるのか、ということを客観視できるだけでなく、自分はどの行為が苦手なのか、といったことや、ADL向上のためにどこを鍛えればよいか、といったことまでわかるため、非常に便利です。
本記事では、そんなバーセルインデックスに関して、その評価方法、評価項目、点数化の方法をはじめ、ADLを図る事のできるその他の指標や、低下したADLを向上するために必要なことまで、詳細に説明していきます。
ADLを評価するための評価基準の一つ
バーセルインデックス(英:Bathel Index, BI)とは、対象者のADL(日常生活動作)を評価する指標であり、世界共通の評価ツールです。
身辺動作と移動動作の2つの大項目があり、小項目は全部で10項目あります。
各項目0~15点で点数化されており、満点は100点です。自立度が高ければ高いほどバーセルインデックスの点数は高くなります。
バーセルインデックスを用いるメリット
バーセルインデックスを利用することで、対象者がどれだけ自立した日常生活をおくることができるかの「現状把握」や、時期ごとに見ることで、介護サービスの利用によりどれくらい自立できるようになったかリハビリの「効果測定」などを客観的に知ることができる点が特徴です。
バーセルインデックスの評価基準
バーセルインデックスの総合点数の評価は以下の通りです。
-
100点:自立
85点以下:介助量少ない
60点以下:起居動作等介助を要す
40点以下:介助量が多くほぼすべての項目に介助を要す
20点以下:全介助レベル
また、85点をとった65%以上の方が歩行自立しているというデータから、85点以上かどうかが、ほぼ自立してADLを行えるかどうかを左右するボーダーラインとも言えるでしょう。
バーセルインデックスでは各項目ごとに自立、部分介助、全介助に応じて0点~15点の点数が配分されており、その合計が総合点数となります。
バーセルインデックスの評価項目
バーセルインデックスの評価項目は食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、更衣、排尿コントロール、排便コントロールの10項目あり、それぞれの評価項目をみてみると、以下のようになります。
食事
(自立)10点:自助具などが装着でき、標準的な時間内に自分で食べ終わることができる
(部分介助)5点:おかずを細かく切ってもらうなどの介助が必要。また、食事の際に食器の配置など見守りが必要な場合も含まれる
(全介助)0点:全介助、経管栄養含む
車椅子からベッドへの移乗
(自立)15点:車椅子とベッド間の移動が自分で出来る、車椅子のブレーキやフットレストの操作も行える
(部分介助・見守り)10点:移動の中で一部介助を要する。車椅子のブレーキや操作に声掛けが必要
(部分介助)5点:ベッドから起き上がり座ることはできるが、移乗の際に介助が必要
(全介助)0点:全介助
整容
(自立)5点:洗顔、歯磨き、髭剃りなどすべての整容動作が自分でできる
(全介助)0点:全介助
トイレ動作
(自立)10点:トイレの出入りから衣服の着脱、後始末にいたるまですべて自分でできる。ポータブルトイレを使用している場合はその洗浄も含む(手すりの使用の有無は問わない)
(部分介助)5点:衣服の着脱や後始末に介助が必要で体を支える介助も必要
(全介助)0点:全介助
入浴
(自立)5点:浴槽の出入りから洗髪、洗体まですべての入浴動作が自分でできてシャワー浴も可能である。
(全介助)0点:入浴に介助が必要
歩行
(自立)15点:45m以上の歩行が介助なしで可能(補装具の使用の有無は問わず車椅子、歩行器は除く)
(部分介助)10点:45m以上の介助歩行が可能。歩行器の使用を含む
(車椅子)5点:歩行は出来ないが、車椅子操作で角を曲がることを含めた45m以上の移動が可能
(全介助)0点:上記以外、全介助
階段昇降
(自立)10点:介助なしで自分でできる(手すりや杖の使用の有無は問わない)
(部分介助)5点:介助または見守りが必要
(全介助)0点:上記以外、全介助
着替え
(自立)10点:衣服以外に靴の着脱も含めてすべて自分でできる(ボタンの代わりにマジックテープになっていてもかまわない)
(部分介助)5点:半分以上は自分で行うことができるが時間がかかる。
(全介助)0点:上記以外、全介助
排便コントロール
(自立)10点:失敗がなく、浣腸や座薬などの取り扱いも可能
(部分介助)5点:まれに失敗があり、浣腸や座薬の取り扱いには介助が必要
(全介助)0点:上記以外、全介助
排尿コントロール
(自立)10点:失敗がなく、尿器などの取り扱いも可能
(部分介助)5点:まれに失敗があり、尿器などの取り扱いには介助が必要
(全介助)0点:上記以外、全介助
バーセルインデックスが評価するADLとは
バーセルインデックスとはADLを評価する指標であるとお伝えしましたが、そもそもADLとは一体どのようなものなのでしょうか。
ADLとはActivity of Daily Livingの略で「日常生活動作」と訳され、ICF(国際生活機能分類)における「活動」に該当し、「基本的動作」と「応用的動作」に大きく分かれています。
ADLの基本動作一覧
- 寝返り
- 座位
- 立位
- 歩行
- その他移動動作
ADLの応用的動作一覧
- 整容動作(身だしなみを整える動作)
- 食事動作
- 更衣動作
- トイレ動作
- 入浴動作
つまり、バーセルインデックスが評価するADLとは、簡単に言うと、生活する中で多くの人がごく当たり前に行っている動作のことです。
その他3つのADLの評価方法
ADLを評価するものは、これまでに解説してきたバーセルインデックスだけではありません。
ここからは、他のADL評価方法について紹介していきます。
FIM
FIMは、対象者がしているADLの評価となります。
「運動系ADL」13項目と「認知系ADL」5項目からなり、各項目1~7点の計126点満点で評価します。
バーセルインデックスに比べ評価項目が多いこと、評価基準が細かいこと、実際にしている動作の評価となる為対象者がどの程度動けるのかを評価する指標としては信頼性が高いと言えます。
KATZ index
KATZ indexはFIM同様「しているADL」を評価する評価方法です。
入浴、更衣、トイレの使用、移動、排尿・排便、食事の6つの領域のADLに関して自立・介助の2つの評価尺度を用い、最終的にA(すべての活動が自立)~G(6つのすべての機能に介助を要す)までの7段階の自立指標という総合判定を行います。
DASC-21
DASC-21は、導入のA・B項目と1~21項目の評価項目からなるアセスメントで、項目の中にADLである行為やトイレ、食事、入浴などが含まれています。
この尿化は認知機能と生活機能を総合的に評価することができるため、認知症の評価ツールとして使用されています。
評価方法には2パターンあり、認知機能障害と生活機能障害のプロフィールから認知症の可能性を評価する場合と、合計点を用い合計点が31点以上の場合は「認知症の可能性あり」と判定する方法があります。
ここまで、ADLを評価するツールとしてバーセルインデックス以外にも3つの指標をご紹介しました。
それぞれの特徴をふまえ、評価したい方に合わせて使い分けてみましょう。
低下したADLを向上させるには
バーセルインデックスでADLを評価した後は、低下したADLを向上させる方法を考えていきましょう。
ADL向上には、主に原因疾患及び合併症の治療、リハビリテーション、環境調整が効果的です。
原因疾患及び合併症の治療
まず、疾患や合併症により思うように体が動かない場合は、根本の原因であるそれらの治療を行い、できるだけ疾患による影響を軽減させることが大切です。
リハビリテーション
筋力や心肺機能が低下し、少し動いただけでも息切れや動悸がして動作が出来ない場合には、ハビリテーションを行い徐々に筋力・体力を向上していきましょう。
環境調整
原因疾患や合併症の治療を行っても痛みがあったり、関節が動かしづらいなどの理由で動作が行なえない方もいるでしょう。
そのような場合には普段使用している椅子の高さを調節したり握りやすい位置に手すりを付ける等の環境調整を行ったりすることで、もともとできなかった動作が出来るようになる事があります。
ADLの評価を上げるために
ADLとは日常的に私たちが行っている動作のことです。
しかし、ADLを維持・改善し、バーセルインデックスの点数を向上させるためにはそれなりの体力や工夫が必要となります。
日中あまり動かずにゴロゴロした生活をしていたり、不規則な生活により食事も適当になってしまったりしていては、知らず知らずのうちに筋力や体力が衰えてしまいます。
筋力や体力といった基礎的な身体能力とともに、バーセルインデックスなどの基準による、客観的なADL評価を長きにわたって維持するためには、まずは規則正しい生活を心がけ、日中は散歩や趣味などに参加し過ごすことが重要となります。
普段の生活を見直し、バーセルインデックスの点数を上げていきましょう。
まとめ
バーセルインデックスは簡便な評価方法であり、だれでも評価が行なえるようになっています。
また、評価自体も100点満点である為どの程度の介助量を要すかイメージがわきやすいでしょう。
バーセルインデックスを用いて評価を行い、部分介助・全介助という結果が出てしまったら、環境の調整などを行う、リハビリを行うなどの対応をとることで改善できるかについても、検討してみるのがよいでしょう。
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