(1)「ホスピス」とは?

「ホスピス(hospice)」とは、身体や心の辛さを総合的にやわらげるためのケアをする施設です。

日本では、1973年に大阪の淀川キリスト教病院に最初のホスピスが作られました。この頃は病院の中の施設でしたが、1981年に独立したホスピスが建設されました。

「ホスピス」の対象となる疾患は、日本の場合は「がん」をはじめとする悪性腫瘍です。対象年齢は関係なく、がんの終末期の患者を対象としています。その人のがんによる「身体的・精神的・社会的」な苦痛を和らげるために提供されるケアのことです。

(2)「ホスピス」と「緩和ケア」はどう違うの?

「ホスピス」と「緩和ケア」の違いはどこにあるのでしょうか?どちらも、がんによる痛みなどの問題を緩和し、患者さんの苦痛を予防するためのケアを指します。

ホスピス

「ホスピス」は、日本では終末期の治療が難しいがん患者に対して行われるケアです。苦痛を和らげることが目的となっています。そのため、余命が短いと診断された患者さんが受けることができるのが「ホスピス」ケアです。

緩和ケア

しかし、「緩和ケア」の場合には対象となるのは、終末期の患者だけではありません。早期のがんのように進行度は関係なく、患者が受ける苦痛を和らげることに焦点を当てた治療です。「緩和ケア」は、余命に関係なく提供されるのです。

両者に大きな違いはない

現在では、ホスピスも緩和ケアも同じ意味でつかわれることが多いといえます。

公益財団法人日本ホスピス緩和ケア研究振興財団「ホスピス財団」では、ホスピスと緩和ケアを同じものとして扱っています。

出典:ホスピス財団「ホスピス・緩和ケアとはなんですか

(3)「ホスピス」と「ターミナルケア」はどう違う?

では、「ホスピス」と「ターミナルケア」の違いはどこにあるのでしょうか?「緩和ケア」との違いでも紹介したように、「ホスピス」は終末期がん患者さんに向けたケアです。

「ターミナルケア(終末期ケア)」も、同様に末期の死を目前とした患者さんに対して提供される苦痛を和らげる目的のケアになります。

しかし、「ターミナルケア」の場合は疾患に対象はありません。年齢は、高齢者を対象にすることが多いようですが、治癒が望めない末期の患者に対して行われます。

延命治療は、無駄に苦痛を与え続けてしまう可能性があります。その延命医療を中止することで患者の苦しみを取り除き、人間らしく死を迎えることができるようにすることが、ターミナルケアの目的です。

(4)「ホスピス」での暮らし

がんの末期状態となり「ホスピス」を選択すると、ホスピスのための病棟「緩和ケア病棟」に入院するようになります。ホスピスは、療養場所ではなく「総合的に患者をケアする」場所を指します。

日本では、緩和ケアを提供する目的の病棟で、ホスピス以外にも「緩和ケア病棟・緩和ケアセンター」といった名称で呼ばれることがあります。

治療を目的としたケアではなく、穏やかに過ごすためのケアになるため、部屋のタイプは個室がほとんどです。プライバシーに配慮されていて、家族と一緒にくつろぐことができるように作られているのです。

そのため、ホスピスでの暮らしは通常の入院生活に比べると穏やかに時間が流れていく空間での生活になります。家族が宿泊することができたり、お風呂がついていたり、キッチン・談話室などがそろっているホスピスも多いです。

(5)「ホスピス」で行われる治療とは

「ホスピス」では、在宅ケアや一般の病棟での対応が困難な状態の患者さんを対応します。

基本的には、人生の最期を少しでも穏やかに迎えることができるようにケアをするための場所です。そのため、治療は主に患者さんの苦しみや苦痛を和らげるためのものが提供されます。

一般に、他の病棟に比べて看護師が多く在籍しており、患者さんの苦しみを取り除くケアが素早く提供できるような体制が作られています。医師は、緩和ケアの専門的な知識を持つ医師が担当することが多いでしょう。

(6)「在宅ホスピス」と「病院で受けるホスピス」

「ホスピス」は、その人が自分らしい最期を送ることができるようにする場所です。ホスピスの種類は2種類あり、専門病棟における緩和ケアを受けられる「病院で受けるホスピス」以外にも自分の家で受けるホスピスがあります。

在宅ホスピス

自分の家で受けるホスピスとは、自宅療養における緩和ケア「在宅ホスピス」です。在宅ホスピスの場合には、診療所・訪問看護ステーションなどが、緩和ケアをサポートしてくれます。

外来が難しい患者の場合は往診によって緩和ケアを提供します。「がん」の患者の場合、家族だけではカバーできない在宅医療における看護・介護が重要な役割を持ちます。

そこで、訪問看護ステーション・訪問介護事業所・居宅介護支援事業所などがチームとなって協力して緩和ケアを提供しています。

病院で受けるホスピス

病院でのホスピスは、(4)「ホスピス」での暮らし、(5)「ホスピス」で行われる治療とはで紹介したように、病院内の緩和ケア病棟での生活になります。

(7)「ホスピス」に必要な費用はどれくらい?

「ホスピス」で最期を迎えるための緩和ケアを受ける場合には、必要な費用はどれくらいになるのでしょうか。

厚生労働省の調査によると、ほとんどの日本人が最期を病院で迎えるようです。

ホスピスを利用するのが75歳以上の後期高齢者であれば、後期高齢者医療制度によって窓口医療費負担額は基本的に1割です。そして医療費は、70歳以上の場合本人負担額の上限は1か月に57,600円までと決まっています。それ以上の本人負担額が発生することはありません。

しかし、年齢によっては医療費はさらに高くなる可能性があります。本人の負担額は医療保険制度によって費用の1~3割と決まっていますが、期間が延びればそれだけ費用も掛かってしまうため、ひとによっては数百万円以上になることもあるようです。

高額費用に備えるために、保険でいくらくらい賄われるのかということも考えておくことが重要です。

(8)「ホスピス」に関わる仕事について

「ホスピス」は、5種類あり「完全独立型・院内独立型・院内病棟型・緩和ケアチーム・在宅緩和ケア」があります。今後、さらにホスピスの施設は増えていく可能性が高いでしょう。

「ホスピスで」に関わる仕事がしたいと考えている方におすすめの職業は看護師です。ホスピスでは、介護・緩和ケアをメインに行う看護師が必要不可欠なのです。

ホスピスで働く看護師の場合、朝から夜までホスピスでケアを提供するため、勤務形態は常勤・2交代制が多いようです。給与面は、一般病院の看護師と変わりありません。

しかし、日本看護協会が行う認定試験に合格し認定看護師になると、給与がアップとなります。

ホスピスで働くスタッフのメリットは「患者さんときちんと向き合える」ことです。病院は、非常に忙しいためひとりひとりの患者さんと向き合うことは難しいです。

しかし、ホスピスであれば、患者さんの話をしっかりと聞いて、その人の人生の最期まで寄り添うことができます。これは、多くの患者さんと接する他の病棟ではあまり経験できないことかもしれません。

ホスピスのデメリットとして「命の終わり」と向き合うことにより、「精神的にまいってしまう」ことがあります。精神面での強さがないと続けていくことが難しい職業でもあります。

(9)「ホスピス」ケアを経験した人の声

ホスピスケアを実際に経験した人の声も、インターネット上には多く載せられています。まさに死を見つめるホスピスケアですが、以下のような声がありました。

在宅ホスピスを利用して末期癌患者の旦那様の最期を看取った奥様の声です。

「末期がんは、恐ろしく…その死を待つ時間は非常につらいものがあります。最期くらい、楽に穏やかに迎えさせてあげたいと思っていました。

そんな中でも、最後まで延命をする道を探していましたが、毎日夫が苦しむ声を聞いて、ホスピスを利用しました。病院のスタッフは、親身になって症状の進み方や最期の状況など不安な部分を教えてくれました。

それまでは1人で悲しんでいましたが、一緒に考えてくれるスタッフがいて、話を聞いてもらい、心の支えができました。夫も、以前のように苦しむことはなく、最後は穏やかに逝くことができました。

最期の時間を夫婦で過ごすことができて、本当に幸せです。」

他にも、ネット上ではさまざまな体験談があります。身の回りに経験者を見つけることは難しいかもしれませんが、そうした経験談を読むことで、ホスピスの理解を深めるのに役立ちます。

(10)「人生の終え方」を考える

ホスピスについて、まだまだ自分とは無縁のものだと思っている方も少なくないでしょう。

しかし、人間はいつまでも生き続けることはできません。いずれ来てしまう終わりの時を、少しでも穏やかに過ごすことができるホスピスケアについて、ご家族でも話し合ってみてはいかがでしょうか。

ホスピスについての話し合いは、できるだけ元気なうちに考えておくことが大切です。

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