目次
(1)介護現場でのICT化は必要?業務の効率化につながる?
あらゆる分野で活用されているICTですが、介護現場にICTを導入することでどのような効果をもたらすのでしょうか。介護事業所でICT化できる業務やICT導入することで得られるメリット、介護事業所に合ったおすすめのサービスをご紹介します。
そもそもICTとは?
ICTとは、Information and Communication Technologyの略で、IT(コンピュータなどのデジタル機器やソフトウエア、通信ネットワーク、これらを組み合わせたシステムなどの情報技術)に“C(双方向の意思疎通)”が加わったシステムやサービスの総称です。
総務省は2004年から「ICT政策大綱」を掲げ、人口減少社会や少子高齢化に伴う労働人口の減少などの対策としてICT化を推進しています。
AIやloTとの違いは?
情報技術に関するワードで“AI”や“IoT”というのもあります。AIとは、人工知能を英語表記した場合の頭文字で、蓄積された膨大なデータを基に判断を行う技術です。IoTは、インターネットなどの通信技術と繋がることで遠隔でも情報共有が行えるシステムのことです。
いずれもIT技術を活用したシステムですが、ICTとの大きな違いは“C”の双方向の意思疎通の要素があるか、ないかが大きな違いになります。
介護現場でのICT化は遅れている
介護現場は慢性的な人手不足が大きな要因となり、スタッフの勤務に関する管理、利用者のデータ、報酬計算など事務的な業務も負担が大きくなっています。さらに、新型コロナウイルス感染症対策では、施設の消毒や検温、多職種との情報共有や医療との連携、高齢者の家族と遠隔でのコミュニケーションが必要とされており、業務量が増加してます。
そんな介護現場では、「お金がかかる」「デジタル機器は難しい」などを理由にICT化が遅れています。しかし、介護人材の確保や業務の効率化、データの管理・運用などの課題を解決する方法こそがICTの導入なのです。ICTを導入することで、
- 介護業務の効率化により事務作業の軽減
- 介護事業所のコスト削減により生産性の向上
が期待できます。さらに上記2点により介護スタッフがよりケアに専念できるため、また、一人一人の利用者のデータの管理などから、各利用者に合わせたケアやコミュニケーションの活性化などが期待できます。
(2)ICT化によって軽減できる介護業務は多い
ICT化によって軽減できる介護事業所の業務はとても多岐にわたります。代表的な4点を紹介します。
①情報の共有
介護事業所にICTを導入することにより、施設のスタッフ間や外部のケア関係者と情報の共有化が簡単に、そして正確にできるようになります。例えば、
- 申し送り書類などが手書きから入力になり、作成の手間が軽減できる。
- スタッフそれぞれが機器を使って見るので、一度に多くのスタッフに情報共有が可能になる。
- 今の状況(食事の残量、排せつの状況、体温などの体調管理、服薬情報など)の情報共有がスムーズになり、きめの細かいケアが可能になる。
情報の共有は介護現場において重要な業務です。ICT導入により、それを効率化・正確化することにつながります。
②データの活用
介護事業所で働く介護スタッフの経験年数や保有資格、スキル、得意分野・不得意分野などのデータを一元化管理、活用することで、
- スタッフの細かい経歴などの管理、新たな資格取得に伴う更新作業で漏れや間違いがなくなる。
- 効率的な業務分担やシフトを組める。
- 仕事の業務マニュアルなどの作成や更新が簡単にでき、場所を選ばず確認することができる。
などの効果が期待できます。
③勤怠管理
出退勤の記録やシフト管理が施設業務の大きな負担になっていることも少なくありません。ICTを導入することで、
- 月々の各スタッフの勤務時間や時間外手当、休暇状況の管理が簡単になる。
- 年間のスタッフの休暇取得日数や12月の年末調整にかかる手続きで間違いや漏れが無くなる。
- シフトの作成業務が軽減できる。
といった効果があります。働き方改革に対応した有給管理もしやすくなります。
④スタッフ間のコミュニケーション
ICT化によりスタッフ間のコミュニケーションツールが確立します。例えば、テレビ電話やチャット機能があります。
- 日常の業務連絡や打ち合わせ、徹底する事案を一斉に連絡することができる。
- スタッフ間で仕事を離れたプライベート(趣味や特技など)なコミュニケーションができる。
この他にも災害時におけるスタッフ間の連絡ツール、利用者の安否確認、関係機関との遠隔での打ち合わせなど、離れていても情報を「早く」、「一斉に」、「正確に」共有化が可能となります。
また、スタッフのコミュニケーションがとりやすくなることで、職場の人間関係の改善や環境の改善も期待できます。
(3)介護事業所にICTを導入するメリット
介護事業所にICTを導入することで、具体的にメリットが期待できるのでしょうか。
①人材の定着
介護の仕事は利用者のケアや、利用者の記録などの事務作業など毎日業務に追われています。介護職は入職3年以内での離職率が65%と高くなっています。
その離職原因のひとつに人間関係が挙げられています。介護の仕事は多職種が連携してケアを行ったり、施設内で協働するスタッフの年齢や資格なども幅広く、人間関係で悩んでしまうことがあります。一方で、夜間などひとりで利用者の対応をすることがあり孤立しやすい環境から離職してしまうこともあります。
(出典:ケアズ・コネクトHP)
その課題解決にICT導入は有効です。仕事や人間関係の悩みを相談できる、プライベートでの趣味や特技を共有することができるようにすることで、人間関係の改善がはかれます。
- 円滑なコミュニケーションが可能となる
- ハラスメントや孤立のない職場づくり
- 介護スタッフの仲間意識が芽生える
などの効果からモチベーションの向上につながり、離職を抑制し、結果的に介護人材が定着することにつながります。そうすることで、新たな人材募集に要する人件費などを削減することができます。
②業務の簡素化
ICTの導入は、日常行っている業務の簡素化という効果も得られます。例えば、
- 事務所での紙の申し送り書の書き込む手間が、タブレット端末を使って場所を選ばず手短に入力ができる。
- 更新作業や修正作業が簡単にできる。
- スタッフの出勤記録や休暇取得状況、時間外勤務などの勤怠管理が簡素化できる。
- タブレット端末の操作が身につけば、一つのデバイスですべての業務が簡単にできる。
といったスタッフ管理の簡素化ができます。
③業務の質の向上
ICTの導入により、利用者データの運用やスタッフ間での情報共有が簡単になるので、結果として質の高い介護サービスを提供することが可能となります。例えば、
- 利用者との会話などで得られた趣味や生い立ち、病気や服薬状況などの利用者データをケアに反映させる。
- ケアプランなどの情報をシステムで一括管理し、そのデータをスタッフ間で共通認識できるので、スタッフ間の行き違いや伝達漏れなどもなくなる。
- 事務作業が簡素化することで、その時間を利用者へのケアに時間を回すことができる。
といったことから、きめの細かい、質の高いサービスが提供することが可能になります。
この他にも、これまでの施設見学の希望があった場合、ICT化で施設をリモートで見学できるようになれば、見学する側は家でも見学ができるので便利になり、施設側も対応の負担が軽減されるといったメリットもあります。
(4)介護事業所にICTを導入するデメリット
ICTの導入によって得られるメリットをご紹介しましたが、ICT導入の際に起こる問題や課題もあります。この章では3つの課題についてご説明いたします。
①導入コストがかかる
新しいシステムや機器を導入するので、その初期費用やランニングコストがかかります。しかし、一見すると大きなコスト負担がかかるように思えますが、これまでの事務作業のための人件費、離職に伴う人材募集に要する費用など、長期的なスパンで考えればコストの削減につながります。
初期費用だけで考えるのではなく、年単位でのトータルのコストや事務作業に要する手間などを換算して見比べてみることをお勧めします。
なお、現在、ICTを導入するにあたって行政機関の助成制度があります。厚生労働省が「介護現場におけるICTの利用促進」を行っています。助成金や補助金が用意されていますので、導入コストを抑えることができます。
導入するとなると決して安い投資ではないので、管轄する都道府県や市区町村の助成制度で利用できるものを確認しておきましょう。
②スタッフへの教育
新たなシステムを導入するにあたって、スタッフへの操作研修や活用に関する教育も必要になります。また、スタッフの中には「デジタル機器は難しい」、「壊したらどうしよう」と拒否反応を示すスタッフも少なくありません。
ただ、最近のICTは、メニューボタンから行いたい操作をクリックやタッチをするなど簡単に操作ができるものが増えています。また、マニュアルも写真や図を使うなど分かりやすい工夫をされたものが増えているので、「機械は苦手」という人でも安心して操作ができます。
それでも「うまく操作ができなかったらどうしよう?」という場合は、導入の際だけでなく、導入後のサポートサービスがあるタイプを検討しましょう。価格だけでなくスタッフへの研修や機器の操作のしやすさ、導入後のサポートサービスの有無も考慮すれば、新しいシステム導入の課題を解決できます。
③情報漏洩への不安
昨今、企業による情報漏洩に関するニュースが増えています。介護事業所においても利用者のデータを管理することになるので、「もし情報が洩れたら」と不安になります。情報漏洩には3つの原因があります。
1つ目の原因は、操作側の人為的な問題です。これは操作を誤ってしまって情報が漏れてしまうパターンです。この場合、人為的な問題なので、操作に関するルールの徹底や管理者を決めてチェックをすることで解決できます。
2つ目の原因は、ICTの機器のセキュリティーの精度の問題です。操作がしっかりしていても、機器のセキュリティーが脆弱だとウイルスに感染し、システムに保存されているデータが流出してしまうことがあります。これはセキュリティーの精度がしっかりしたタイプを選ぶことでクリアできます。
最後に3つ目の原因は、データの持ち出しです。利用者のお迎えや病院でのカンファレンス、ケア会議などで利用者のデータを持ち出すことがあると思います。その際にタブレット端末を出先で失くしたことで情報漏洩の危険にさらされます。
これもスマホと同じで、暗証番号などで操作のロックをかけておくことで解決できます。また、従来の紙台帳などの一部やコピーを外部に持ち出して紛失してしまうと、誰でも見ることができるので、むしろICTを導入したほうがセキュリティー面では格段安全になると言えます。
(5)ICT導入にあたってのポイントは?
ICTを導入するにあたっては、費用をかけるので「失敗した!」とならないためのポイント3点をご説明します。
ICTは「導入」がゴールではない
ICTを導入したことがゴールではありません。新しい機器を買って設置をしたことは、新しいシステムの運用にむけたスタート地点になります。
ICTはスタッフ間や外部と円滑なコミュニケーションを実現するためのアイテムにすぎません。ICT導入前に運用ルール、スタッフ研修、活用・運用方法など導入目的を明確にしておきましょう。
単純な作業効率化だけでは勿体ない
ICTの導入によって今までよりも短い時間でミスや漏れもなく集計作業や申し送り書の入力などの作業が完結できます。しかし、ICTは事務作業の作業効率化だけではありません。ICTは、
- 利用者情報をスタッフ間で共有する
- データを運用したケアを行うなどケアの質の向上ができる
- スタッフ間のコミュニケーションの促進、モチベーションの向上
などICTが持つ機能をうまく用いれば、スタッフの事業所や仕事への満足度が向上し、離職率の低下につながります。
さらに離職率の低下は、新たな人材の採用に関する費用や労力をも削減できます。せっかく導入したICTなので、どんどんフル活用しましょう。活用することが導入の“コスパ”を良くすることになります。
ICT導入にあたり、各社サービスを検討しよう
サービスの内容を確認する
介護業界におけるICTのサービスの種類は豊富です。介護向けのサービスであっても、サービス内容や費用や施設の規模、目的などに応じて幅があります。各社のサービス内容を比較する場合は、価格だけでなくサービス内容もしっかり検討しましょう。
費用を確認する
ICT化にあたって、導入する製品やサービスによって初期費用と導入後のランニングコストが変わってきます。 具体的な金額は、事業所の規模やスタッフの人数によって変わってきます。導入する前にしっかりと見積書を出してもらいましょう。
また、費用については、行政機関の助成制度を活用すれば負担が軽減できます。
一例を挙げると厚生労働省では「ICT導入支援事業」として費用の2分の1を補助する制度があります。また、東京都では介護事業所向けICT導入のための助成制度として「介護保険施設等におけるICT活用促進事業」があり、導入費用の一部の補助が受けられます。
出典:厚生労働省「ICT導入事業」、東京都福祉保健局「ICT機器活用による介護事業所の負担軽減支援事業」
ただし、公的な補助を受ける際には、補助の対象製品として認められてることが条件となりますので、ご注意ください。
セキュリティーについて確認する
導入する機器のセキュリティーのレベルにも幅があります。介護事業所では利用者やその家族、施設のスタッフの個人情報を扱うのでセキュリティー対策はとても重要です。データを保存・運用するために使用するサーバーやクラウドなどのセキュリティーのレベルについてもしっかり確認しておきましょう。
介護事業所に専門特化したサービスもある
ICT化は、介護業界に限らずあらゆる業界・社会で導入し、活用がされています。そのためいろいろなメーカーからさまざまな製品やサービスがあります。実際にICTの導入を具体的に検討しようと思っても、どのようなものを選べばよいのか迷ってしまいます。ここでは、介護業界、特に介護事業所向きのサービスについてご紹介します。
業界初のチームICT「ケアズ・コネクト」
このサービスは、介護業界では初となる介護向けのチームICTで、チームケアを行う介護事業所におすすめのサービスです。この「ケアズ・コネクト」は、「働き続けたい介護現場をつくる」とテーマに介護スタッフのためのサービスが特徴となっています。
このサービスを導入することで、
- スタッフ間のコミュニケーションが円滑になり、スタッフの定着化が図られる
- 事務の簡素化、時短など効率化になる
- シフトやアンケート、手順書など、介護事業所で必要な業務ツールを一括で管理できる
などのメリットが得られます。さらには、
- 補助制度が適用されるので、初期費用を抑制できる。
- 操作が簡単なのでスタッフへの研修の負担が軽減できる。
- セキュリティー対策がしっかりしているので情報漏洩のリスクを解消できる。
といったデメリットの解消にもなります。なにより、ケアズ・コネクトはIT導入補助金事業のIT導入支援事業者として採択されているので、公的補助も受けることができ費用の負担が軽減できます。
ケアズ・コネクトのサービス
ケアズ・コネクトの基本サービスには、
- 全スタッフへの一斉お知らせ機能
- スタッフ情報の共有
- スタッフ同士のチャット機能
があります。
(出典:ケアズ・コネクトHP)
それに加えて、多くの業務をICT化することができます。
- グループウェア
- 勤怠管理
- モチベーションアップの機能
- 介護スタッフのタレントマネジメント、ケアのサービス
を選択して利用することができます。
もっと具体的がサービス内容や、費用の試算、導入方法については、ぜひ、こちらをご参照ください。
(6)介護現場における主なICTの導入事例
介護現場でICT化できる業務や、ICT導入のメリット・デメリット、ICT導入のポイントについてご紹介してきました。ここでは、ICT導入について、実際の介護現場の事例と声をご紹介します。
事例①:勤怠管理システム
東京都 特別養護老人ホーム 定員80名
今までタイムシートを用いて勤怠管理を行っていたため、毎月給与計算にかなりの時間がかかってしまっていた。しかし、勤怠管理システムを導入したことによって、給与計算の工数が簡略化された。
夜勤帯の給与計算など、複雑な計算も自動で行うことができるのでツール管理も簡単になった。
事例②:電子申請システム
神奈川県 ショートステイ 定員60名
ワークフロー機能をICTとして導入したことにより、紙での回覧・押印がほとんどなくなった。紙での閲覧では、時間がかかってしまうことが多かったので、電子申請システムを導入して作業が効率化できた。
今後、口頭でうけていた申請も電子化し、ペーパーレスを推進していきたい。
事例③:アンケート・チャット機能
京都府 デイサービス 定員20名
アンケート機能を導入したことによって、職員の意見を取りこぼさずに聞くことが可能になった。以前までは、シフトが合わずに伝えづらかった意見なども、アンケート機能を用いて収集できるようになっている。
また、アンケート機能とチャット機能を同時に使うことによって、施設内の検討事項について、対面でなくても深く議論できるようになったことはよかった。
事例④:セキュリティ対策
愛知県 訪問介護 定員20名
以前は、急ぎの連絡が発生した際に、スタッフ間で無料アプリでメッセージのやり取りをしていた。しかしセキュリティ面に不安があったので、スタッフ同士ですぐに連絡がとれるチャットツールを、スタッフのスマートフォンに導入した。
今利用しているICTシステムには、スマートフォン紛失時に情報漏洩を防ぐため、管理者側で即時ロックできるようになっているので、より安心して連絡をとることができるようになった。
(7)ICTを導入して介護業務の効率化・質の向上を図ろう
ICTを導入することで長期的にもメリットが大きい
介護事業所にICTを導入することで、これまでの課題であった事務の効率化やスタッフ間のコミュニケーションが充実、質の高いケアが可能となり、課題を解消することができます。
また、ICTを活用することでスタッフのモチベーションが向上し、離職率の低下につなげられます。ICTは、これまでの課題を解消するだけでなく、長期的にもみてもメリットが大きいのです。
ICTの中でおすすめなのは業界初のチームICT「ケアズ・コネクト」
いろいろなメーカーから様々なタイプの製品やサービスがありますが、そのなかでもケアズ・コネクトは、業界初の介護向けチームICTなので、チームケアを行う介護事業所にお勧めのサービスです。特にケアズ・コネクトは、介護スタッフが「働き続けたい介護現場をつくる」を主眼に置いたサービスになっているのが特徴なので、人材確保など多くのメリットを得ることができます。
ケアズ・コネクトについては、ぜひ、こちらをご参照ください。