目次
(1)介護施設でのレクリエーションとは
デイサービスやサービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなどの介護施設では、レクリエーションを頻繁に行います。
レクリエーションの内容は、手遊びや歌、ゲーム大会といったみんなで楽しむ目的のものや、体操や器具を使った運動など体を動かす目的のもの、クリスマス会や夏祭りといった季節の行事、お花見やハイキングなど外出するものなどさまざまです。
実際に、介護現場で働かれている方は、レクリエーションをやったことがある方も多いでしょう。
しかし、このようなレクリエーションはどのような目的で行われているのでしょうか?
(2)レクリエーションの目的
レクリエーションの目的には、他者とコミュニケーションをとる、脳を活性化させるなど様々な目的があります。
目的① 他者とのコミュニケーションを促進する
高齢になり体の機能や体力が衰えると、外出することを億劫に感じるなどの原因から外出が減ってしまう人がいます。特に一人暮らしをしている高齢者は、意識して外に出ようとしないと、人と触れ合う機会があまりありません。
その結果、自然と会話・コミュニケーションの回数が減ってしまいます。認知症の原因のひとつとして、他者とのコミュニケーションの減少も挙げられるように、これはよいことではありません。その状態が続いて、引きこもりや老人性うつになってしまう人もいます。
レクリエーションに出かければ、仲間がいます。仲間がいるので、コミュニケーションの量が多くなります。また、仲間と同じ時間を過ごすことが楽しみになれば老人性うつにもかかりにくくなりますし、引きこもりの回避にもつながります。
目的② 脳を活性化する
手先や体、言葉を使うレクリエーションを行えば、脳の活性化につながります。レクリエーションの動きや内容が、普段は使わない脳の部位を刺激すると考えられるからです。その結果、認知症の予防あるいは、その進行を食い止めることが出来ると言われています。
(3)レクリエーションの効果
レクリエーションは、”時間つぶし”や単なる“お楽しみ会”ではなく、目的や狙いを持って“非日常的”な取り組むことで多くの効果が得られます。この章では、レクリエーションの効果についてご説明します。
効果① QOLの向上
レクリエーションを効果的に組むことで、高齢者は「楽しい予定ができた」、「楽しかったから、またやりたい」といった意欲や目的ができたり、毎週水曜日は〇〇の日と決めることで「曜日感覚」を保つことができたりします。
また、“桜を見る” や “今度、お出かけで○○に行く” という企画によって、「待ち遠しい」や「風邪をひかないようにしなきゃ」と生活への意欲がでてきます。その気持ちが、QOLを高めることにつながります。
効果② ADLの向上
施設内での運動や施設外への遠足といったレクリエーションは、手を動かしたり、歩いたりすることによって体を使うので、身体機能の向上が図れます。
さらに、受け身になりやすいリハビリと違って、自ら目的意識をもって意欲的に取り組むことができます。
また、外出することで、心地よい緊張感が得られたり、仲間で一緒に行動をしたりすることができるので、身体の機能が向上し、ADLの数値も改善しやすくなるでしょう。
効果③ 認知症予防や認知症のケア
レクリエーションは、体を使うことで体の筋肉だけでなく脳にも刺激をおくることができます。その他にも、
- “楽しい”や“むずかしい”という感情を使うことが脳への刺激になる
- 若い時に好きだった音楽を聴くことで、心が穏やかになる
- 昔の写真を見て当時の思い出を話したりすることで自然と昔の記憶を呼び起こす
- みんなで外出することで、会話がはずんだり、「でかけられた!」と自信になったり、「また行きたい」と意欲がでてくる
などレクリエーションは認知症予防や認知症の進行を和らげる目的と効果があります。
(4)QOLを高めるレクリエーション
この章では、8つのQOLを高める目的のレクリエーションについて、そのやり方や効果についてご説明します。
①ハンドマッサージ
両手を揉み手の温度を上げて、その手を高齢者の背中などに当て、軽くさすります。ハンドマッサージを受けた高齢者はほっとした気分になり精神的に安定します。介護士だけでなく、利用者同士で行うこともあります。
②音楽を聴く
好きなジャンルの音楽や昔好きだった音楽などを聴くことで心が穏やかになったり、昔の記憶を思い返すことが出来ます。
昭和の名作集などのCDを購入して、みんなで聞くのもよいかもしれません。
③深呼吸をする
高齢になると体への不安からイライラしたり、気持ちが落ち込んだりしてしまうことがあります。そんなときは深呼吸をすることで、からだや脳に酸素が運ばれ、リラックス効果が得られます。
④動物と触れ合う
高齢になると人と接する機会が減ってしまい、孤独感が強くなることがあります。そんなのときは、小動物などを抱っこしたり、餌をあげたり、背中をなでるなど動物と触れ合うことで、孤独感を解消する効果があります。また、心が癒され、リラックス効果も得られます。
⑤介護旅行
高齢者の方は、加齢に伴い外出することに不安があったり、億劫になることがあります。そのような状態が続くと、閉じこもりがちになってしまい、フレイル(心身共に衰えてしまう状態)の心配もでてきます。
しかし一人で外出するには「もし外出先で倒れたら、、、」と考えてしまったり、トイレの心配があったりします。それは、ご家族が同行するときにも起こりえる不安でしょう。外出先にも介護スタッフの方が一緒についてきてくれれば、安心して出かけることが出来ます。
最近では介護スタッフが同行してくれる夢たびという介護旅行専門のサービスも出てきています。高齢者の体の状態や好み、目的に沿ったプランを作ってもらい、介護スタッフが同行した団体旅行や個人旅行をすることができます。
⑥バーチャル旅行
⑤で介護旅行について紹介しましたが、コロナウイルスの感染リスクがある中、実際に旅行に行くことに不安を覚える方もいらっしゃるでしょう。そんな方におすすめなのが、バーチャル旅行です。
バーチャル旅行とは、VRを使用して、観光地の映像をリアルタイムで体験できるサービスのことです。専門スタッフが、リアルタイムでガイドをしてくれるため、旅行気分を味わうことができます。
介護旅行サービスを運営する夢たびでは、コロナ禍の中でも高齢者の皆様に楽しさを提供したいという思いから、バーチャル旅行サービスを提供しています。
現在、全国計15コースのプランがあり、利用者の方にも「実際にその場に行ったみたいだ」と好評なサービスです。
また、オプションとして、現地で人気のお土産もバーチャル旅行の日程にあわせて送ってもらうこともできます。
夢たびのバーチャル旅行の特徴
- リアルタイムで現地の専門スタッフと会話が可能
- VRゴーグルの操作性が簡単(眼鏡をかけたまま利用が可能。持ち上げるだけでゴーグルが起動します。)
- 360°を見渡せる臨場感
準備に必要なものがほとんどないため、手軽に導入することができます。
夢たびのサービスについて気になる方はこちらから簡単にお問合せができます。
⑦セラピーを行う
セラピーについては、一般的には会話などの心理療法や音楽や絵といった芸術、動物、温泉などいろいろあります。その人が一番好きな物、落ち着くもの、思い出があるもの等を使って癒していきます。
⑧ネイルを行う
“ネイル”というと、若い女性のイメージがあるかもしれませんが、実は最近、高齢女性のネイルのニーズが高まっています。
これは女性が持つ「綺麗になりたい」、「おしゃれをしたい」という希望を叶えることで、気持ちにハリを出す効果があります。また、「綺麗になりたい」という目的では、「化粧」も人気があります。最近では、「福祉ネイリスト」という専門資格を取る人も増えています。
(5)ADLを高めるレクリエーション
様々な目的があるレクリエーションですが、この章ではADLを高める目的のレクリエーションについてご紹介します。
①~⑨は、体を動かすレクリエーション、⑩~⑯は脳を活性化させることを目的としたレクリエーションです。
①ジェスチャークイズ
ジェスチャーを見て何をしているのか、何のスポーツかなどをあてるクイズです。介護スタッフがジェスチャーをやる場合が多いですが、高齢者にジェスチャーをやってもらうやり方もあります。
②風船バレー
バレーボールの代わりに風船を、手の代わりにうちわを使ったバレーです。バレーと同じように陣地に風船が着いた方が負けです。
③スリッパ飛ばし
足に履いているスリッパを飛ばします。飛ばした距離で競うのではなく、輪投げのように目的の場所に近づけるかを競います。
④後出しジャンケン
ジャンケンをする前に後出しの人が“勝つ”のか“負けるのか”を決めておきます。例えば、「後が勝つ」場合、先にグーを出せば、後の人はパーを出します。「後が負け」の場合ならばチョキを出します。これをなるべく早いスピードで出すのがポイントです。
⑤歌う
みんなが知っている歌を歌います。伴奏はキーボードやCD、カラオケ機械などを使います。また、体操と組み合わせて歌いながら手や足を動かすやり方もあります。
⑥ラジオ体操
みんなが知っているNHKのラジオ体操第一です。ただし、高齢者や後遺症がある人には難しい体操もあるので、座ってやったり、簡単な体操に替える方法もあります。
⑦ヨガ
施設内にスペースがあり、利用者の体の状態で危険がなければ、外部から講師を呼んでヨガをやる方法もあります。いつも同じ体操で飽きた、簡単すぎる、という人が多ければ、たまにはちょっとレベルの高い体の使い方をするのも楽しいです。
⑧華道・生け花
女性の利用者(入所者)が多ければ、外部講師を呼んで華道や生け花教室を行う方法があります。ただし、正座が難しい人が多いので、イスに座るなどやり方に少し工夫が必要です。
⑨運動会レク
高齢者を2チームに分けたり、個人競技などで競うミニ運動会のレクリエーションです。施設内または施設内に庭があれば外で行うのもいいでしょう。
競技種目は、高齢者の状況を見て、おたまでテニスボールを運んだり、バレーボールでペットボトルを倒すボウリングなど、できるだけルールが簡単な種目の方がいいでしょう。運動会を企画、運営してくれるようなサービスもあります。
⑩塗り絵
幼児が使うような簡単な塗り絵や大人向けの複雑な塗り絵の教材があるので、それを使って高齢者に塗り絵をしてもらいます。あまり見本は見せず、それぞれイメージをしてもらって好きな色で塗ってもらうと、それぞれの個性や感性が違っていて、出来上がりを見るのも楽しいです。
⑪折り紙
折り紙を使って、動物や季節のものをつくります。また、クリスマス会やひな祭りなど行事に使うようなものを作ると、行事の準備も出来るので一石二鳥です。
⑫しりとり
「りんご」、「ごりら」、「らっぱ」という風に語尾の文字を使った昔ながらの遊びです。簡単すぎるという声があるときは、「赤色のものは使わない」などNGワードを設けるのもいいでしょう。
⑬言葉遊び
テーマに沿って高齢者がテーマに関係するものをいうゲームなどがあります。例えば「緑」であれば「レタス」、「信号」、「山」などを連想してもらうなどです。
⑭かるた・百人一首
お正月の時期であれば、かるた大会や百人一首を行ってみるのもおすすめです。
⑮トランプ
“7ならべ“など誰でも分かるような簡単なルールの遊び方であれば、みんなが楽しめます。
⑯大人の学校
株式会社おとなの学校がサービス展開する、学校のスタイルでのレクリエーションです。介護スタッフが先生、高齢者が生徒になります。
先生役の介護スタッフが一人いればできる教材になっているので、レクリエーションにあまり人員を避けないという事業所様にもおすすめです。
ADLを高めるには、目標を設定することも効果的
ADLを高めるレクリエーションやリハビリは、楽しく取り組める一方で、「なぜこんな動作をやっているんだろう」と目的を見失ってしまうこともあります。
ADLを高める目的は、高齢者の方がより良い生活を送ることができるようにすることです。そのために、ADLを高めたら何をしたいか、を高齢者の方に聞いておくのもよいでしょう。
「好きなご飯を食べたい」、「孫に会いに行きたい」、「思い出の場所を見たい」など、高齢者の方本来の希望を叶えるために、ADLの改善を行えるのが理想です。
例えば、高齢者の方がADLを向上させる目的として、「おでかけ」を設定してみるのもよいでしょう。
一例として、(5)で紹介した介護旅行のサービスでは、「歴史を訪ねる旅行」などの旅行・お出かけプランを展開しています。こういった目的を目指すことで、日々のADL向上のためのレクリエーションも、より意味のあるレクリエーションになるでしょう。
(6)レクリエーションを行う場所ごとに紹介
レクリエーションの種類はどのようなものがあるのか、ここではレクリエーションを行う場所ごとに分けて紹介します。
施設内でできるレク
- 折り紙など手先を使ったものづくり
- 歌を歌う
- 体操
- クイズや後出しじゃんけんなどのゲーム
- おやつ作りなどの簡単な料理
- クリスマス会など季節の行事
- バーチャル旅行など、最新のサービスを利用したレク
施設外でできるレク①(施設に内接する庭や施設の近場)
- 施設内での施設主催の夏祭り会
- 近くの公園などでのお花見
- 芋ほりなど畑での土いじり
- うさぎや小鳥など小動物とのふれあい
- 幼稚園児とのふれあい
施設外でできるレク②
- みんなで車に乗って、ショッピングセンターなどに買い物に行く
- みんなでバスに乗って、食事会や話題のスポット、温泉など旅行気分を楽しむ
- 先祖の墓参りや孫の運動会など個人的なお出かけ
施設外でできる買い物やお出かけは、プランを立てることも実施することも、施設の職員の方だけでは人数の都合などで難しいこともあるかもしれません。
そういった時には、お出かけのプランニングからお出かけの実施までトータルサポートしてくれるサービス、夢たびがおすすめです。
(7)レクリエーションを行う際のポイント
QOLやADLを高める目的のレクリエーションですが、やり方を失敗すると自信を無くしてしまったり、参加しなくなってしまったりすることがあるので注意が必要です。この章では、高齢者にレクリエーションを楽しんでもらうための6つのポイントをお伝えします。
ポイント① ルールは簡単に
複雑なルールは、高齢者に分かりづらく、混乱してしまったり、ルールを間違えたことで自信を無くしてしまうことがあります。ルールはできるだけ簡単にしましょう。
ポイント② 参加者の好み、趣味、出身地などを把握しておく
車が好きな人、昔農家だった人、地方で育った人など参加者の好みや趣味、こだわり、出身地などを把握して、みんなが分かるもの、楽しめるものを取り入れましょう。なかには「事故の経験があって車の話は嫌だ」、「未婚だから子供の話は嫌だ」という人もいるので、NGワードに注意しましょう。
ポイント③ 個人戦や順位は避ける
1対1の個人戦は、たとえジャンケンでもあっても、「ズルをした」とトラブルになったり、人によっては負けたことで傷つくこともあります。また、全員の順位が決まってしまうゲームだと、最下位の人は傷つきます。争う時は、チーム戦か介護スタッフ対高齢者というようにしましょう。
ポイント④ 敬意をもって対応する
レクリエーションに限ったことではありませんが、高齢者を子ども扱いするのは失礼です。高齢者であっても敬意をもって対応しましょう。
ポイント⑤ 安全の配慮
レクリエーションのうち、体を使うものや道具を使うものは、安全を確保することが重要です。レクリエーション中の事故やケガが無いように事前、そして進行中もしっかり確認しましょう。
ポイント⑥ 無理強いしない
全員にレクリエーションへの参加を呼び掛けても、参加したくないという人への無理強いは禁物です。あくまでも本人の意思を尊重しましょう。
(8)レクリエーションを外部にお願いする場合の注意点
レクリエーションがQOLやADLを高める効果があると分かっても、介護施設のスタッフが以下のような場合は、外部にお願いする方法があります。
- レクリエーションのノウハウがない
- 他の業務が忙しく、レクリエーションを行う人手がない
- レクリエーションの内容が思いつかない
- 車や道具がない
また、外部にレクリエーションをお願いする場合には以下のような点に注意しておく必要があります。
- 費用
- 参加者の状況(年齢、性別、ADL、認知症の有無など)
- 目的(狙い)
自分の施設だけで完結させるのではなく、時には外部のサービスを取り入れてみることで、マンネリ化を防いだり、高齢者の方に喜んでいただいたりすることができるでしょう。
(9)レクリエーションを取り入れてみよう
目的のあるレクリエーションは、QOLやADLを高めることが出来ます。
しかし、スタッフにノウハウがない、時間や人手がない、車や道具がない場合は、専門の事業者にお願いすることがおすすめです。
事業者にお願いする場合は、費用や参加者の状況、レクの狙いなどについて、しっかり打ち合わせをしましょう。
特に高齢者は生活パターンがマンネリ化しやすいので、いつもと違う“非日常”が得られる介護旅行などは、QOLやADLが高められます。また、昨今のコロナ禍で、バーチャル旅行など、新たなレクリエーションも生まれてきています。ぜひ、レクリエーションを取り入れてQOLやADLを高めましょう。