(1)介護老人福祉施設とは

在宅での介護が難しい要介護者が入所する、介護保険施設

「介護老人福祉施設」とは、在宅で介護を続けることが困難になった人が入所するための介護保険施設です。

その主な目的は、リハビリテーションを受けることで身体機能の改善を行い、ふたたび自宅での生活へと戻れるようにすることにあります。

特別養護老人ホームとは違うもの?

介護老人福祉施設と特別養護老人ホームはしばしば同じものとして扱われることが多いのですが、厳密にいうと両者の間には若干の違いがあります。

「特別養護老人ホーム」というのは、同じように在宅での介護が困難になった人が生活を送るための介護保険施設ですが、こちらはあくまで介護を受けることが目的で、自宅復帰を目ざしているわけではない、という点に違いがあります。

ちなみに、この2つの施設が同じタイプの施設として扱われている理由は、老人福祉法第11条にあります。

そこでは、介護老人福祉施設に入所することができない人は、各自治体の特別養護老人ホームに入所させる、あるいは居住地以外の特別養護老人ホームに入所を委託する、というように定められています。

(参考:『老人福祉法第11条』)

つまり、介護老人福祉施設だけでは対応しきれない入所希望者を、特別養護老人ホームでカバーしている、というわけです。

その供給不足を解消するため、2014年には介護老人福祉施設への入所条件がよりきびしいものへと改められました。その効果はある程度出ましたが、いまだに30万人近くもの待機者がいるという現状には変わりありません。

(2)介護老人福祉施設(特養)の特徴

介護老人福祉施設(特養)のサービスには、どのような特徴があるのでしょうか。

それぞれ、具体的に見ていきましょう。

入所基準

介護老人福祉施設(特養)に入所できるのは、65歳以上で要介護3〜5の認定を受けている人です。

また、要介護1〜2の認定であっても、以下のような場合には条件に当てはまることになります。

  • 認知症や知的障害、精神障害などの重い症状がある
  • 家族の虐待が疑われる
  • 単身世帯や老老介護で十分な介護を受けられない

一方、介護老人福祉施設(特養)では看護師の常駐が義務付けられていないため、たとえば病状が不安定な人や、感染症にかかった人などは、受け入れをことわるケースもあります。

特養の入所基準について、より詳しい記事はこちら

→『【本当に厳しい?】特別養護老人ホームの入所条件・入所基準6選

料金

介護老人福祉施設(特養)は地方自治体あるいは社会福祉法人が運営を行っているため、その料金はとても安く設定されています。

その内訳は、「施設サービス費+居住費+食費+日常生活費」のみで、一時金などは必要ありません。所得に応じて異なりますが、だいたい月8〜13万円程度となっています。

なお、施設サービス費は介護保険を利用することができ、居住費と食費についても介護保険による負担限度額や社会福祉法人などによる利用者負担軽減制度ももうけられています。

提供されるサービス

介護老人福祉施設(特養)では、日常的な食事や入浴、排泄などの介助を行います。

そのうえで、もっとも重要となるサービスがリハビリテーションです。入所者がふたたび自宅での生活にもどれるように、機能訓練指導員と連携を取りながら、トレーニングを進めていきます。

ほかにも、書道や絵画、あるいはトランプといったように、指先をよく動かすレクリエーションやゲームなども取り入れていくと効果的です。

また、入所者が楽しく暮らせるように、ショッピングや花見などに出かけたり、誕生日やクリスマスなどのイベントごとにパーティーを開いたりもします。

施設によっては、医師や看護職員らと連携して、終末期の介護となる看取りを行うこともあります。

居住空間によるタイプ分け

介護老人福祉施設(特養)には、部屋の配置にさまざまなタイプがあります。

もとから多く設置されていた「従来型」では、4人部屋がマンションやホテルのように並び、スタッフはその入所者全体を対象にケアを行っていました。

ほかにも、ひとつの部屋にベッドを並べ、カーテンや家具で仕切りを作った「多床室型」もありました。

しかし、2002年になるとすべての部屋を個室として、10人程度で共有スペースをもうけた「ユニット型」が制度化されます。スタッフもこのユニットごとに担当チームが組まれ、より目の行き届いたケアが行われるようになりました。また、個人のプライバシーを守りながら、同時にユニットごとが顔なじみとなる、アットホームな空気を作り出すことにも成功しています。

現在の介護老人福祉施設(特養)では、このユニット型が全体の40%近くを占めるまで増えています。

なお、料金は

  • ユニット型
  • 従来型
  • 多床室型

の順に高くなっています。

(3)介護老人福祉施設(特養)の種類

介護老人福祉施設(特養)には、大きく分けて3つの種類があります。

それぞれ、どのような違いがあるかくわしく見ていきましょう。

広域型特別養護老人ホーム

定員30人以上の大型施設で、条件さえ満たしていれば誰でも入居できます。

地域密着型介護老人福祉施設

定員30名未満の小型施設で、入所できるのはその地域の住民のみです。2006年の介護保険法改正により新しくもうけられたタイプで、サービス内容などには特に違いはありません。

この地域密着型介護老人福祉施設は、さらに運営形態によって2つの種類に分けられます。

サテライト型

経営の本体となる施設が、通常の交通手段で20分以内の位置にあるタイプです。

本体となる施設には、以下の種類があります。

  • 介護老人保健施設
  • 特別養護老人ホーム
  • 地域密着型特別養護老人ホーム
  • 病院
  • 診療所

本体と連携を行っているため、通常であればかならず置かなければいけない、医師、生活相談員、機能訓練指導員、介護支援専門員などがいない場合もあります。

単独型

単独で経営を行っている、小規模な介護老人福祉施設(特養)です。

通常の介護老人福祉施設と同じようにスタッフを置き、さらにショートステイやデイサービスを併設しているケースが多いです。

(4)介護老人福祉施設(特養)の人員基準

介護老人福祉施設では、サービスを提供するために必要な人員基準がさだめられています。

その基準は、以下のとおりです。

介護老人福祉施設(特養)の人員基準(職種:人数の基準)
施設長 常勤1名
医師 サービスを十分に提供できるだけの人数。
生活相談員 入所者100名に対して常勤1名以上。端数が増えるごとに1名追加。
介護職員または看護職員 入所者3名に対して1名以上。端数が増えるごとに1名追加。
栄養士・機能訓練指導員 1名以上。機能訓練指導員については、生活相談員や介護職員との兼務も可。
介護支援専門員 『入所者100名に対して常勤1人以上・端数が増えるごとに1名追加』

を標準とする。ほかの職種との兼務も可。

その他(調理員や事務員など) 施設の状況に合わせて配置

(参考:厚生労働省『社保審-介護給付費分科会 第143回 参考資料2』)

(5)介護老人福祉施設(特養)での仕事内容

介護老人福祉施設(特養)では、どのような仕事内容を行うのでしょうか。

具体例を、一日の流れに沿って見ていきましょう。

午前9:00

出勤。ミーティングで情報交換や業務の確認を行います。

午前10:00

入居者の入浴。入浴できる人には介助を行い、入浴ができない人には清拭で身体をきれいにします。

午前11:00

ベッドシーツや枕カバーなど、リネン交換を行います。

午前12:00

昼食。自力で食べられない人には介助を行い、必要があれば服薬も手伝います。食後には、トイレの介助も行います。

午後13:00

レクリエーションやリハビリを行います。この間に、スタッフが交代で休憩を取ります。

午後14:00

介護の合間を見て、事務作業を行います。

午後15:00

おやつ。食事の介助をして、あとからトイレの介助を行います。

午後16:00

ケアプラン作成のミーティング。夕食前に、ベッドから起き上がれない人を介助して起こします。

午後17:00

夕食。食事の介助をして、そのあとに口腔ケアを行います。

午後18:00

業務終了。帰宅します。

(6)介護老人福祉施設(特養)での仕事の魅力

介護老人福祉施設(特養)での仕事にも、さまざまな魅力があります。

こちらで働きたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

ケアマネージャーへのキャリアを目指せる

介護老人福祉施設(特養)の入所者は、多くが認知症を患っていて、寝たきりの人も少なくありません。このような人たちをケアしていくには高い技術が必要となるため、自然に介護職としてのスキルが身についていくでしょう。

また、ケアプランの作成を現場で直接学ぶことができるので、ケアマネージャーを目ざす人にはとても勉強になるはずです。

様々な職種の職員と連携をとれる

他にも、

  • 医師
  • 管理栄養士
  • リハビリ職(作業療法士・理学療法士・言語聴覚士など)

などさまざまな職種と連携することで、より広い視野で介護を見ることができるようになるでしょう。

介護老人福祉施設(特養)では、定期的な研修の開催も義務づけられています。それに参加して、ぜひ介護についての深い知識を身につけていってみてください。

待遇がよい

介護老人福祉施設(特養)では、要介護度の高い入居者に対してケアを行うため、その負担に応じて通常の介護施設よりも給与が高くなっています。

それ以外にも、家族手当や住宅手当など、さまざまな福利厚生もしっかりしているので安心です。

介護老人福祉施設(特養)は今でも入所希望者が多く、なおかつ自治体からの補助も受けているので、安定的に長く働いていくことも期待できるでしょう。

やりがいを感じられる

介護老人福祉施設(特養)は、24時間体制で入所者を見守っていきます。そのため、通常よりもより利用者に寄り添った形でのケアが行われることとなります。

日ごろからの介護はもちろん、普段の会話やレクリエーション、行事などを通して、より多くの楽しみや喜びを分かち合うことができるようになるでしょう。

そのような相手に、機能訓練の効果が見られたり、自宅への復帰が認められたりすると、そのやりがいはほかの職場では得られないほど、深いものとなるはずです。

(7)介護老人福祉施設(特養)での仕事できつい・大変なこと

介護老人福祉施設(特養)では、要介護度の高い入所者のケアを行うため、どうしてもその仕事はきつくなりがちです。

特に、以下の2点についてはあらかじめよく考えておくようにしましょう。

体力がないと厳しい

介護老人福祉施設(特養)では、相手の全身を支えるような身体介護を行う場面が多くなります。

そこであまり無理をすると、腰や膝などを自分の体を痛める原因となってしまうので気をつけてください。

普段から運動で体力をつけておくとともに、体を痛めずに行える正しい介助方法などを、しっかり身につけておくようにしましょう。

いそがしくて時間を取れない

介護老人福祉施設(特養)では、24時間体制で入所者を見守らなければいけないので、その多くが夜勤もふくめたシフト制となっています。

そのため、どうしても生活が不規則になりがちなので、食事や睡眠など、しっかり健康管理をコントロールしていく必要があります。

また、日中は介護でいそがしいため、ケアプランの作成などまでなかなか手がまわりません。そのようなときは、夜勤の空いている時間などをうまく利用して行うようにしましょう。

(8)様々な職員と色々な仕事ができる特養でのキャリアを考えてみては

介護老人福祉施設(特養)は、要介護度が高めの人が入所する介護保険施設です。利用者のほとんどが認知症をわずらい、半数以上が寝たきりとなっています。

そのため介護の仕事もきつくはなりますが、その分だけより高度な知識や技術が身についていくでしょう。ほかの、さまざまな職種のスタッフとの意見交換や情報提供によっても、より自分の介護職としての幅も広げていくことになるはずです。

何より、24時間体制で見守るケアは、入所者をより身近な存在に感じることができ、仕事として大きなやりがいをもたらしてくれるでしょう。

もちろん、待遇のよさや求人の多さも魅力のひとつなので、興味のある人はぜひ介護老人福祉施設(特養)でのキャリアを目ざしてみてください。