介護相談員とは、介護保険制度の任意事業(※)の一つです。
介護相談員は介護施設などを定期的に訪問し、高齢者の悩みや不満を聞き出します。そして、それらの悩みをどのように解決していくかを考えて、施設や行政に改善点を提案する役目を果たします。
なるには、自治体が実施している養成研修を受講する必要があります。ただし、介護相談員は任意事業なので実施していない市区町村も多いです。やりたいと考えても、自身の住む市区町村ではなれない可能性もあるのです。詳しく確認していきましょう。
(※)市町村が主体となり実施される事業のこと。
目次
介護相談員とは?
介護相談員とは、介護にまつわる相談を受ける専門家です。以下のような特徴を有する存在です。
- 市町村及び委託を受けた事業者が運営している
- 高齢者の声を施設や行政に伝えて、問題解決をする
- 介護サービスの質向上を図る存在
介護相談員は、介護保険制度の任意事業の一つとしてスタートしました。保険者である市町村及び委託を受けた事業者が運営しています。
ですから、介護相談員になりたいのならば、民間施設への就職を目指すのではなく、市町村の事業者に応募する必要があるのです。
介護を必要とする高齢者の中には、利用している施設や行政に不満を抱えていることがあります。しかし、その声をどこに届ければいいのかわからない、といった悩みを抱えていることもあるのです。
介護相談員は、そのような現状を解決するための橋渡しを行います。
介護相談員は、定期的に介護保険施設を訪問し、利用者の悩みに耳を傾け、その方々の疑問や不満の改善を行います。介護サービスの質の向上を図る存在であるといえるでしょう。
ただし、介護相談員は任意事業としてスタートしたサービスです。あくまで、任意なので、介護相談員が存在していない、その事業を行っていない市区町村もあります。成長段階にある事業だといえるでしょう。
介護相談員の役目
介護相談員は、施設の問題解消や行政のケアの改善といった役目を果たします。相談員として介護施設に足を運び、そこの高齢者の話をしっかりと聞きます。
高齢者から寄せられる悩みは、痛みを訴えても「仕事の邪魔をしないで」と言って、職員が対応してくれない」「おむつを替えるときにカーテンをしめてくれない」といった施設の問題を指摘するものです。
介護相談員は、それらの問題の信ぴょう性をしっかりと確認し、施設側に伝えていきます。
介護相談員という第三者が、施設に入ってくることで、施設側は「今のありかたは利用者にとって、どうなのか?」という視点からサービスを向上させることが可能です。
介護相談員の仕事内容
介護相談員の仕事内容としては以下のようなものがあります。
利用者から悩みを聞き、適切に対処する
介護相談員は、利用者から苦情や不満点といった悩みを聞き出します。ただし、この際に利用者の言い分のみを一方的に聞くことはありません。
利用者の話をしっかりと聞きつつも、「単なる行き違いではないのか?」「言葉が不足していただけではないか?」「利用者が個人的な好悪で要望を出していないか?」「それは事実か?」といったことを確認します。
そして、利用者の言い分に妥当性があると判断したときにのみ、利用者に助言をしたり、事業者側に意見を出したりします。
さらに、事業者側や行政機関と話し合い、意見交換を重ねて問題のありかを具体的にし、適切な対応を取ります。
何気ない会話の中から問題を見つけ出す
利用者の中には、不満があっても「意見を言うなんてはばかられる」「文句を言うことで、事業所にいづらくなるかもしれない」と考えてしまう人もいます。
このような、声なき声を聞くのも介護相談員の役目です。高齢者の集まりに足を運んだり、悩んでいそうな高齢者に声をかけたりして、会話の中から問題を炙り出します。
そして、その問題を、必要に応じて施設や事業所に伝えていきます。
身体拘束ゼロ・虐待防止の実現を目指す
介護の現場では、高齢者の尊厳を踏みにじる身体拘束や虐待が行われていることがあります。介護相談員は、利用者の様子を見るなどして、虐待や不当な身体拘束の早期発見と防止を行うようにしています。
実際、介護相談員と施設が協力しあったことで、身体拘束ゼロを達成することができた、といった実績も多くあがってきているのです。
介護相談員に介護はできない
介護相談員がやってはいけないことも存在しています。特に、以下の6つの業務が介護相談員の仕事と勘違いされることが多いようです。
- サービス提供事業者の評価
- 車いすへの移乗、食事の介助など「介護」にあたる行為
- 利用者同士のトラブルの仲裁
- 家族問題に関することへの介入
- 遺言・財産処分に関する相談
- 物品の修理
特に、車いすの移乗といった介護業務をついつい行ってしまうことが多いようです。
介護はしてはいけませんし、家族問題や遺言などのプライベートな領域にも踏み込んではいけないのです。
介護士の仕事内容を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
介護相談員になるには?
介護相談員になるには、都道府県ごとに開催されている介護相談員養成研修を受ける必要があります。
養成研修を受けられるのは、都道府県が適当と判断したものです。
カリキュラムは、前期研修と後期研修によって構成されています。研修修了後、介護保険施設等などで実習を行う実地研修も受講する必要があります。
前期研修カリキュラムの例としては、以下のようなものです。
- 利用者の権利擁護、老人保健福祉施策と介護保険制度の理解に関する講義・・・ 5 時間
- 自立支援のためのケアプランの作成法、介護相談員の意義と役割、虐待の発見と兆候、身体拘束とケアのあり方に関する講義・・・6.5 時間
- 認知症高齢者の理解、高齢者の理解、適正な福祉用具・住宅改修の活用、介護の基礎知識・実習など・・・6.5 時間
- 在宅高齢者と家族への相談活動、コミュニケーション技法とトレーニング、活動記録と報告・・・6 時間
後期研修カリキュラムは、実習の活動報告を行います。
- 訪問実習の活動発表など・・・5 時間
おわりに:介護相談員は介護にまつわる問題を解決する存在
介護を必要とする高齢者の中には、施設や行政に不満を抱えている人も少なくありません。施設の介護方法を変えてほしいと考えつつも、提案できずにいる人も少なくないのです。
このような悩みを高齢者から聞き出して、施設や行政に改善を提案していくのが介護相談員の仕事です。
介護相談員には、自治体が主催する講座を受講することでなることができます。しかし、任意事業であり、まだまだ始まったばかりの事業なので、自治体によっては介護相談員の職がないこともあるようです。
興味がある方はまずは自身の自治体が介護相談員を置いているかの確認からスタートしましょう。