食事介助とは、一人では食事をするのが困難な高齢者をサポートする仕事です。食事をするサポートだけでなく、食前や食後の食事環境を整えるのも大切な業務になります。
さらに、栄養補給のサポートだけでなく、食事によってリラックスさせてあげるのも食事介助の目的です。
食事介助は無資格でもできる業務です。
しかしながら、食事前の声かけなどの食事介助のコツが存在します。食事介助をうまく行うための方法やコツを確認しておきましょう。
目次
介護職における食事介助とは?
高齢になってくると、食事をするのが困難になってきます。たとえば、高齢になると、以下のような症状が発生します。
- 咀嚼力が弱くなる
年を取ると顎の筋肉も衰えます。そのため、硬いものを自分で噛み切れずに、食べづらくなってしまうのです。ただし、柔らかいものばかりを食べていると、より顎の筋肉が衰えて噛む力がますます弱くなります。 - 嚥下力が弱くなる
年を取ると、喉の筋肉も弱くなります。飲み込む力が弱ると、むせたりとろみのある流動食しか食べられなくなったりしてしまうのです - 唾液量が減る
唾液は食べ物の飲み込み作用を助けてくれます。しかし、高齢者の場合、唾液の分泌量が全体的に減ってくるためパサパサした物が飲み込みにくくなります。 - 消化器官が弱る
高齢になると、消化器官の能力も衰えます。食べたものがなかなか消化されず、常に満腹感を感じることになってしまいます。 - 食欲の低下
高齢になると活動量が低下します。エネルギーを消費するペースが落ちるので、空腹を感じることも少なくなり、食事を食べる意欲もなくなっていきます。
このような高齢者の状況をしっかりと理解して、対策を練って、食事をサポートするのが食事介助の仕事になります。
食事介助をするために必要な資格は特になし
食事介助をするために必要な資格はありません。無資格者でも行うことができる業務の一つです。
食事介助以外にも無資格者ができる仕事は、多くあります。無資格でも可能な介護の仕事については、以下で紹介していますので、確認をしてみてください。
ただし、高齢者の状況をしっかりと理解し、きちんとした食事介助を行いたいならば、資格を取って、知識をつけておくのが大切になります。何らかの資格取得を目指すのがおすすめです。
介護の資格については、資格ごとの特徴や取り方について、以下の記事で詳しく解説しています。その資格があればどのようなことができるかも紹介しているので、あわせて確認してみてくださいね。
食事介助のコツ・ポイントとは?
食事介助のコツとポイントを、食事前・食事中・食事後の3つにわけて確認していきましょう。
食事前は「食事を清潔にたのしんでもらえるように準備する」のがコツ
食事前には、食事を清潔に楽しんでもらえるように以下の準備をするのがポイントになってきます。
排泄をすませる
食事中にトイレに行きたくなると、食事が中断されてしまします。介護施設においては、部屋の中にトイレが設置されていることが多いです。ですので、食事中にトイレに行くと、排せつ物のニオイが室内に漂い、食欲軽減につながります。
テレビを消し、テーブルの上をきれいにする
テレビがついたままだったり、テーブルがごちゃごちゃしていたりすると、気がそれて食事に集中できません。ですので、テレビを消すなどして食事がしやすい環境を整えます。
口を洗浄する
食事の前に口の汚れをなくしておきます。うがいや歯磨きをし、食事と一緒に雑菌が体内に入り込まないようにします。
手を清潔にする
手の力が衰えている高齢者は、箸などをうまく使えないので、手で食べ物をつかんでしまうことがあります。この際に手が汚れていると、雑菌を体内にとりこんでしまいます。濡れタオルやウェットティッシュなどで手を拭いて、きれいにします。
これらの準備をしながら、声掛けをするのがコツになります。高齢者の方は、食欲をあまり感じない傾向にあるのです。
ですから、食事前に「これから食事ですよ」「今日のメニューは××ですよ。楽しみですね!」と明るく声をかけてあげて、食事に対するモチベーションを向上させてあげましょう。
特に、食事前まで眠っていた利用者の方には、意識を回復させるためにもたくさんの話をするのが大切になるのです。
食事中は「食事を楽しく摂取できるようにサポートする」のがコツ
食事中は、食事をしっかりと摂取し、楽しく食べるために以下の準備をするのがポイントになってきます。
正しい姿勢で食事をしてもらう
食事は正しい姿勢で摂取しなくては誤嚥につながります。深めに腰を掛けてもらって、背もたれは食べやすいように30~90度を目安に調節します。
利用者と同じ目線で食事サポートをする
食事摂取のサポートをするときには、利用者の方を見下す格好にならないように注意しましょう。目線を合わせられるように、椅子に座るなどしてサポートします。
適切な一口の量を探る
利用者ひとり一人にあわせて適切な一口を口に運ぶようにします。目安はティースプーン一杯分。少し下の位置から口に運ぶようにするのが大切です。
飲み込めているかの確認
喉の動きに注目して飲み込んだことをチェックして、次の一口を運ぶようにしましょう。
食事摂取のサポートのポイントは「急かさない」ということです。
高齢者の食べるペースを尊重し、主食(ごはん)、おかず、野菜、味噌汁などを、飽きないように交互に口へ運んであげましょう。
食事中も、「おいしいですね!」「食事をすると体があたたまりますよ!」といったように声をかけるのも大切です。
食後後は「次回の食事のために改善点などを考える」のがコツ
食後は、次回の食事のための対策を考えるといったことをするのがポイントになってきます。
嚥下能力の衰えが確認された場合、次回からの対策を練る
食事中に高齢者の方が食べにくそうにしていたのならば、食品を細かく切り刻むことやミキサーでペースト状にすることを考えます。
外食計画を立てる
高齢者の中には、外食が好きな人もいます。もしも食事制限が課されていないのならば、出前を取ったり家族からの差し入れを食べさせてあげたりする計画を立てます。
食後のサポートのポイントは「見た目も大切にする」ということ。
食品をより細かく刻んだりペースト状にしたりすると、まずそうに見えてしまうこともあります。
食べやすさを大切にしつつも、色取りなども大切にし、食欲を奪ってしまわないようにしましょう。
おわりに:高齢者が楽しんで食事ができるように介助をしましょう
高齢者は、喉や顎の筋肉が弱くなっているので、若いころのように食事ができなくなっています。食事介助では、そのような高齢者が楽しく食事ができるように、さまざまなサポートを行います。
食事介助は、無資格でもできる業務ではありますが、高齢者や介護に対する深い知識があれば、よりスムーズな介助が行えます。資格があればできる仕事も増えますから、資格取得をぜひ目指してみてくださいね。