介護業界は慢性的に人材不足なので、仕事を辞めても転職先は比較的すぐに見つかります。しかし、転職して悩みが解消することがある一方で、今までの経験をリセットしてゼロからやり直すのは簡単ではありません。
「こんなはずじゃなかった」
「前の会社を辞めなければ良かった」
と転職してから後悔するのは誰しも避けたいはずです。
転職に失敗する人の行動や考えかたには共通点があります。今回は介護の転職で失敗する人の共通点と後悔しないためのポイントについて解説します。
目次
介護の転職でよくある後悔・失敗ポイント
平成30年度に介護労働安定センターが行った調査によると、介護職の前職の仕事をやめた理由は男女別に以下の通りであることが分かっています。
■男性(3,521名)
1.自分の将来の見込みが立たなかったため(28.6%)
2.職場の人間関係に問題があったため (18.9%)
3.収入が少なかったため (17.5%)
4.他に良い仕事・職場があったため (16.4%)
5.自分に向かない仕事だったため (15.3%)
■女性(13,620名)
1.結婚・妊娠・出産・育児のため (33.0%)
2.職場の人間関係に問題があったため (14.5%)
3.自分の将来の見込みが立たなかったため (12.2%)
4.収入が少なかったため (11.3%)
5.他に良い仕事・職場があったため (10.2%)
参考資料:公益財団法人介護労働安全センター「平成30年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」
人間関係・給与・他社の待遇との比較は男女ともに高い比率を占めることが分かります。
以上の結果から、介護の転職で後悔・失敗するポイントに下記内容が挙げられます。
仕事がハードな割に給与が安い
好待遇に魅かれて転職を決めたものの、提示金額は資格手当や夜勤手当を含めた額面の給与で、手取りが思ったよりも少なかったという話はよくあります。
個人で転職活動を進めた結果、複数の施設の比較検討が不十分だったことが考えられます。
転職サービスに相談していれば事前に確認できた内容であるため、情報収集不足が原因で起きた失敗と言えるでしょう。
おすすめの介護の転職エージェント・求人サイトをこちらのページでまとめています。相談先選びの参考にしてください。
人間関係のストレスが溜まる
介護業界の離職理由のランキングで、人間関係が常に上位を占めています。しかし待遇とは違い、人間関係は実際に働いてみるまで実態は分かりません。
給与は他社より安いけど、職場の人間関係が良好であることを理由に同じ施設で仕事を続ける人は少なくありません。
介護の仕事は肉体労働で健康リスクが不安視されますが、人間関係による精神的ストレスはそれ以上であることが分かります。
職場以外のつながりが無く孤独を感じる
ほとんどの介護職は土日祝日や連休、盆休みや年末年始など、世間が休んでいる間も仕事をしています。
プライベートで友達と会う時間も少なくなるため、休日を一人で過ごすことが増えます。そういった生活を続けることで、孤独を感じることもあるようです。
趣味を通じたコミュニティーに参加するなど、積極的に職場の外でつながりを持つことも必要でしょう。
将来に漠然とした不安がある
上司に言われたとおりに真面目に働き続けてきた人がハマる落とし穴があります。
自分の頭で考えたり自己主張したりすることを怠っていると、
「何のために働いているのか」
「このままで良いのだろうか」
といった不安に駆られる恐れがあります。
目標もなく、毎日漫然と働いていると将来に不安を感じる時がいつか訪れるでしょう。
ビジネススキルが身につかない
介護の仕事は特殊で、他業種で活かせるスキルが乏しいです。異業種から転職して介護職として活躍する人は多いですが、介護職から異業種への転職は見合ったスキルがなければ相当ハードルが高くなります。
今の会社でキャリアアップを図るにしても、問題解決能力・交渉力・マネジメント力などのスキルは必須で自己研鑽が必要です。
介護の転職で失敗しやすい人の考え方と行動とは?
介護の転職に失敗する人には、共通する考え方や行動があります。
下記の項目に自分は当てはまっていないかチェックしてみてください。
- 環境さえ変えれば、不満はすべて解消されると思っている
- 上手くいかないことをすべて会社や他人のせいにする
- 上司は人を見る目が無いと思っている
- お金さえもらえれば良いと考えている
- 周りに流れやすく、自己主張をしない
- 他人の考えや価値観を認めようとしない
- 介護の仕事を選んだ理由や目的が明確ではない
介護の転職で後悔しないためにできること3つ
介護職の転職で後悔しないためのポイントは3つあります。非常に重要なので転職を考えている方は必ず押さえてください。
条件の優先順位付けをする
まず、働くうえで重視する条件の優先順位を決めることが大事です。
職場の人間関係は良好で待遇が良く、キャリアアップも期待できるといった完璧な介護施設は存在しません。もしそんな施設があったら、職員がそうそう辞めないので求人を必要としないからです。
昨今の介護人員不足の問題から介護職員向けに発信される情報は多く、
「ダメな介護施設の見分け方」
「介護職におすすめの施設●選」
などといったサイトや動画をよく見かけます。
しかし、何を求めるかは人それぞれ違うはずです。その答えはネット上ではなく自分の中にしかありません。巷の情報に惑わされることなく、本当に大事なものは何かを決めてから転職活動に挑んでください。
事前に情報収集を徹底する
「思っていたのと違う!」といった入社後のミスマッチの大半は、情報不足が原因です。介護施設のホームページや口コミサイトをチェックするのは大前提です。転職サイトに登録してアドバイザーに相談したり、施設見学を申し込んでみたりなど積極的に自分で情報収集する努力が大切です。
一社だけでなく、条件に合う求人先をいくつかピックアップするのも必要です。最低でも志望する転職先が公開している情報は、面接で聞かれても答えられるように準備しておきましょう。
転職後のキャリアプランを立てる
志望する施設にエントリーする前に、将来のキャリアプランを立てることも大切です。
リーダーや管理者となってチームのマネジメントがしたい人や現場で実務経験を積んでケアマネージャーを目指したい人、専門的な資格を取得して認知症ケアのプロを目指したい人など、さまざまな目標があるでしょう。
目標を持って働くのとただ盲目的に働くのでは、成長度合いがまったく違います。採用面接でも入社後にどんな活躍が期待できそうかという観点で応募者を見ています。
どこに入社するかよりも、どんなキャリアプランを持っているかの方が転職活動においてはるかに重要です。
結論としては、個人では収集しきれない情報を持っている転職サービスを利用することが転職で後悔しない秘訣と言えます。膨大なデータの中から自分に合った施設を闇雲に検索するのは時間がかかりますし、非効率です。転職サービスを利用することで、職場の雰囲気や離職率など詳細な情報を入手することができます。
おわりに:転職のメリットとデメリットを明確にしよう
転職において大事なことは、メリットだけでなくデメリットを頭に入れておくことです。もし、転職するメリットよりもデメリットの方が大きい場合、今の会社に残った方が正しい選択となります。
少子高齢化で人材不足もあって介護の転職は比較的難しくありませんが、自分に合った職場と出会うためにはコツが必要です。選択を誤って転職後に後悔することのないように、転職サービスを利用してあらゆる観点を考慮した上で慎重に決められることをオススメします。
こちらの記事では介護士に就職・転職する方におすすめの求人探しの方法をまとめています。あわせてご覧ください。
この記事を書いた人
冨松 智
介護業界歴10年の介護福祉士
サービス提供責任者として4年従事した後、現在は一般介護職員として勤務
介護従事者を対象としたオンライン相談室開設