高齢化が深刻化している日本においては、2025年には65歳以上の高齢者数が3657万人(10人に3人)となり、2042年にはピークを迎える(3878万人)と予測されています。

そこで厚生労働省では、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で最期まで自分らしく暮らせるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を進めています。

このシステムの基幹となっているのが地域密着型サービスであり、そのサービスのひとつとして地域密着型通所介護があります。
地域密着型通所介護とは、

  • 「地域限定の」通所介護サービス
  • 事業所の定員が18人以下

そのような背景から、地域密着型通所介護は今後ますます注目されるサービスであることは間違いありません。

介護士としてしっかり予習しておきましょう。

また、介護士の仕事については「【介護士の仕事】あまり知られていない仕事内容を徹底解説します」でも解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。

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地域密着型通所介護とは?

地域密着型通所介護(小規模デイサービス)は、2006年の介護保険法の改正により創設された地域密着型サービス(要介護者が住み慣れた地域で生活できるよう支援する、市区町村指定・監督の介護保険サービス)のひとつです。

2016年4月に新たにサービスに加わりました。

地域密着型通所介護の導入以前は、介護保険が適用される通所介護は「通所介護」という単一の枠でしかなかったのです。

それが地域との連携や、運営の透明性の確保および地域包括ケアシステム構築の推進を目的とし、2016年に「通所介護」と「地域密着型通所介護」に二分割されました。

これにより、元々小規模(利用定員18人以下)の通所介護事業所は自動的に地域密着型通所介護に移行されました。

同時に、管轄も都道府県から市区町村に変わってより地域との関係性が強くなりました。

地域密着型通所介護の大きなポイントは2つです。

  • 利用者様が居住する「地域限定の」通所介護サービス
  • 事業所の定員が18人以下

下記でサービスについてさらに詳しく説明していきます。

地域密着型通所介護で提供するサービスとは

地域密着型通所介護で提供するサービス自体は、通常の通所介護のサービスとほとんど変わりありません。

日帰りで来所する利用者様に送迎、健康チェック、食事・入浴・排泄介助、機能訓練、レクリエーションなどのサービスを提供します。

サービス内容として通常の通所介護サービスと少し異なるのは、地域住民との交流や地域活動への参加に特に力を入れている点です。

地域密着型通所介護のサービス内容とは、通所介護のサービス+地域活動です。

  • 日帰りで来所する利用者様の送迎
  • 健康チェック
  • 食事・入浴・排泄介助
  • 機能訓練
  • レクリエーションなどのサービスを提供
  • 地域住民との交流や地域活動

介護施設でレクリエーションをしている様子

地域密着型通所介護の特徴

前述の通り、地域密着型通所介護の大きな特徴は

  • 「地域限定の」通所介護サービス
  • 事業所の定員が18人以下

という点にあります。

「地域限定の」通所介護サービス

通常の通所介護は、利用者様の居住地に関係なくサービスを提供します。

これに対して地域密着型通所介護は、原則として事業所のある市区町村に住んでいる高齢者限定でサービスを提供します。

これは、地域密着型通所介護が、要介護者であっても住み慣れた地域で生活できるよう支援することを目的とした「地域密着型サービス」のひとつだからです。

人員基準は、事業所の定員が18人以下であること

利用者様の状況に合わせたきめ細かいサービスを提供するため「定員18人以下」の人数制限を設けています。

利用者様本人もほかの利用者様や職員とのコミュニケーションが取りやすく、まるで第二の我が家のような感覚で通うことができます。

高齢者の社会からの孤立化が問題視されている昨今、住んでいる地域内に「お友達」ができるのは純粋に生きがいとなります。

なお、「19人以上」となると地域密着型通所介護ではなく「通所介護」となります。

運営推進会議の開催が義務付けられている

地域密着型通所介護施設を運営する事業者は、運営推進会議を6ヶ月に1回以上、自ら開催することが義務付けられています。

その詳細は下記の通りです。

どんな会議なのか?

介護保険法の「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」の規定に基づき、地域密着型サービス事業者が自ら設置・開催・運営する会議です。

会議参加者に提供しているサービス内容を明らかにすることで、事業所による利用者様の「抱え込み」を防止し、地域に開かれたサービスとすることでサービスの質の確保を図ります。

設置の目的とは?

  • 提供しているサービスの明確化(運営内容の透明性確保)
  • 事業者による利用者様の「抱え込み」防止
  • サービスの質の確保
  • 地域との連携の向上

会議の主な内容

運営・活動状況の報告のほか、運営推進会議による活動の評価、質疑応答、要望や助言などについても話し合われます。

また、次回開催の課題(テーマ)についても協議されます。

参加の対象者は?

1.利用者様とその家族(参加は任意)
2.地域住民の代表者(町内会役員や民生委員など)
3.市区町村の職員またはその地域の地域包括支援センターの職員
4.地域密着型通所介護に知見を有している人(地域の医療関係者など)
5.事業所の職員または代表者となります。
※なお、124からの参加者が1人もいない場合は会議不成立となります。

地域密着型通所介護を利用できる条件・対象者

地域密着型通所介護のサービス対象になるのは、下記の条件を満たす高齢者のみとなっています。

地域密着型通所介護のサービス対象になる方のイメージ

原則65歳以上、要介護認定を受けている方

地域密着型通所介護のサービスを受けられるのは、原則65歳以上で、要介護度1以上に認定されている高齢者限定です。

ただし、例外として40~64歳で特定疾病により要介護認定を受けている方も対象に入ります。

なお、地域密着型通所介護は、自立や要支援1・2の方は利用できません。

さらに言えば、要支援1・2の方はそもそも介護保険適用内の通所介護を利用することも不可能です。

要支援1・2の方が介護保険内および通所で利用できるサービスは、介護予防(生活機能を維持・向上させ、要介護状態になることを予防すること)に適したサービスである「予防給付」の中の「通所リハビリ」「認知症対応型通所介護」のみとなっています。

そのうち、地域密着型なのは後者に限られています。

事業所の市区町村に住民票がある方

原則として事業所の所在地と同じ市区町村に住民票がある方しか地域密着型通所介護のサービスは利用できません。

これは、地域密着型通所介護が、利用者様の生活圏内における自助・互助・公助・共助を目指して創設されたサービスだからです。

ただし、市と市の境に住んでいる住所地特例などの場合は、市町村の同意を得ることでほかの地域の方が利用できるケースもあります。

費用はどのくらい?

地域密着型通所介護の利用料金は、要介護区分・施設タイプ・利用時間によって1日の料金が定められています。

基本は介護保険の1~3割負担分+その他の費用(昼食代など/自己負担)となっていて、要介護度と本人の所得が高くなればなるほど、利用時間が長くなればなるほど金額がアップする仕組みです。

たとえば、区分が要介護1の利用者様が施設を3時間以上4時間未満利用する場合の1割負担分は409円/日、同じ条件でも要介護5の場合は651円/日となります。

そのほか、事業所によっては、個別機能訓練や認知症などで加算されることがあります。

サービスがきめ細かいため、通常の通所介護サービスよりも1割ほど高く設定されているのが特徴です。

サービス単価の一例

2時間以上3時間未満
通常の通所介護 地域密着型通所介護
要介護1 266 298
要介護2 305 342
要介護3 345 386
要介護4 384 430
要介護5 424 475

 

3時間以上4時間未満
通常の通所介護 地域密着型通所介護
要介護1 362 409
要介護2 415 469
要介護3 470 530
要介護4 522 589
要介護5 576 651

*4時間以上についても、同様に1割程度の差異があります。

参考:地域密着型通所介護 横浜市(利用料金早見表(令和元年10月版)PDFより)

地域密着型通所介護利用の流れ

地域密着型通所介護を利用するためには、下記の手順を踏む必要があります。

  1. 担当のケアマネージャーか、地域包括支援センターに相談する
  2. ケアマネージャーが事業所を検索、空き状況の確認をする
  3. 提案された事業所の中からいくつか選んで、施設見学・体験利用をする
  4. 事業所が決定したらケアマネージャーに報告、ケアマネージャーが事業所に利用申し込みをする
  5. 事業所と契約を交わす
  6. ケアマネージャーがケアプランを作成する
  7. サービス開始

施設見学や体験利用する際の注意点として、地域密着型通所介護は曜日や時間によって職員や利用者様が変わるため、一見では雰囲気がわからないものです。

ケアマネージャーは利用者様に、利用する日時に合わせて見学・体験利用するようアドバイスすることも忘れず、利用者様もケアマネージャーに事前に希望の条件を伝えるようにしましょう。

地域密着型通所介護施設を利用するメリット・デメリット

地域密着型通所介護施設を利用するメリット・デメリットを利用者様の立場から考えてみましょう。

地域密着型通所介護施設を利用するメリット

住み慣れた地域内に施設があるため、通いやすいということが利用者様のメリットのひとつです。

送迎にかかる時間も短時間で済むのも何かとありがたいものです。

また、利用者の定員が18人以下と少人数なので、アットホームな雰囲気で自宅のように寛ぐことが可能です。

大人数が苦手…という方も、地域限定の小さなコミュニティーである地域密着型通所介護なら安心して利用できます。

さらには、要介護者が地域密着型通所介護施設を利用することによって、利用者様のご家族の介護負担も軽減されます。

利用者様本人に緊急事態が発生した際にも家族がすぐ駆けつることができる距離にあるため、利用者様、そのご家族ともに大きな安心材料となります。

地域密着型通所介護施設を利用するデメリット

ほかの利用者様と相性が合わない、雰囲気に馴染めない、といった場合にほかのグループや場所に移動できない(逃げ場がない)ことが地域密着型通所介護施設のデメリットのひとつでしょう。

地域密着型通所介護の知識を身につけて、周りに差をつけよう

地域密着型通所介護のサービスで働くスタッフイメージ

今後ますます広まっていくことが予想される地域密着型通所介護は、現状では施設数が多くないとはいえ、介護士の転職先として候補に挙がるのは時間の問題です。

今のうちに地域密着型通所介護への理解を深めて、しっかりと対策しておきましょう。

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