全国すべての市区町村に設置されている包括支援センターは、高齢者やその家族の在宅福祉を最前線で支援していて、今後は、障害者や子どもに関する福祉も含めて地域の福祉の拠点としてクローズアップされています。本記事では、包括支援センターで働く際の役割や業務内容、給料の状況、働くメリットなどについてご紹介します。

(1)包括支援センターの役割

包括支援センターとは

包括支援センターとは、2005年の介護保険法改正で制定された機関で、エリア内に住んでいる高齢者の介護保険事業や高齢者福祉、医療、権利擁護、介護予防などの相談や支援を行うために設置されています。

包括支援センターは、全国の市区町村に設置されていて、そのほとんどが地区名をつけた「〇〇地域包括支援センター」という名称となっています。しかし市区町村によっては「高齢者あんしん相談センター(東京都八王子市)」といった名称をつけている自治体もあります。

包括支援センターの役割は、大きく分けて3つの業務があります。

包括支援センターの役割① 包括的支援事業

介護予防ケアマネジメント

介護保険事業における要介護認定の要支援1と2のケアプランを作成、担当者会議、モニタリングなどを行います。

要支援のサービスは、平成27年度から段階的に導入された「介護予防・日常生活支援総合事業(「総合事業」)」に移行しており、地域特性に合ったケアプラン作りが求められています。

総合相談・支援

包括支援センターでの電話や窓口、高齢者宅での介護保険サービス、市区町村の福祉サービス、民間事業者の高齢者向けサービス、地域で行っている集まりや活動についての相談、案内、説明、申請の代行などを行います。

また、総合事業の肝になる“地域包括ケアシステム”の視点から、地域で行っている体操教室や集い、サロンなど社会資源の紹介が求められています。

権利擁護

高齢者の権利を守る業務があります。具体的には、成年後見制度の説明や支援組織への繋ぎ、高齢者虐待に対して市区町村職員と連携した対応、消費者被害に関する啓発などがあります。

特に、近年、家族等からの高齢者虐待が増加傾向(平成28年 16,384件→平成29年度 17,078件)となっており、速やかな虐待対応や虐待防止に関する取り組みがクローズアップされています。

出典:厚生労働省「平成29年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」

包括的・継続的ケアマネジメント支援

エリア内のケアマネジャーの後方支援や、社会資源となる地域で活動している組織、民間事業者における高齢者向けサービスの把握などを、包括的に、継続的に行います。具体的には、地域における異業種間のネットワークの構築、エリア内のケアマネジャーが抱える困難事例の相談や後方支援、同業種間の連携のためのミーティングの開催などです。

地域包括ケアシステムの基盤づくりとして、地域の活動やボランティア活動を行っている団体とのネットワークづくりなども求められています。

包括支援センターの役割② 指定介護予防支援業務

介護予防(要支援)のサービスを提供する事業所のうち市外事業所などの指定(介護予防指定事業所)や、マネジメント業務の委託に関する調整、手続きなどを行います。

包括支援センターの役割③ その他

その他の業務として、エリア内の高齢者の実態把握や、介護予防のための勉強会などの啓発事業、ボランティア等の人材育成などもあります。

特に最近では、総合事業に合わせて在宅医療と介護が連携して在宅福祉を推進していく「在宅医療・介護連携推進事業」や「新オレンジプラン」に沿った認知症関連事業などに関する普及啓発や連携・支援のための業務もあります。

(2)包括支援センターで求められる職種と仕事内容

包括支援センターに必要とされる職種は「主任介護支援専門員」「社会福祉士」「看護師または保健師」の3つがあります。ここでは職種別に包括支援センターの仕事内容を説明していきます。

主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)

主な業務は2つとなります。

ケアマネジャーの後方支援

エリア内のケアマネジャーへの支援・育成のための業務を行います。具体的にはケアマネジャーが抱える困難ケースの相談、アドバイスといった後方支援、ケアプランへの助言・指導、利用者からケアマネジャーなどへの苦情に基づいた指導、育成などになります。

ケアマネジャーのネットワーク支援

ケアマネジャーのためのネットワークづくりを行います。具体的には、小規模の居宅介護支援事業所(1人ケアマネ事業所)や新人ケアマネなどを含むケアマネジャー間のネットワークづくりや、社会資源との連携、医療機関との連携の支援などになります。

社会福祉士

主な業務は2つとなります。

権利擁護

高齢者の権利を守るための業務を行います。具体的には、成年後見制度の説明や案内、手続きのために関係機関へのつなぎ、高齢者虐待の相談や市区町村職員と連携した対応、特殊詐欺や悪質商法などから被害を受けないようにするための啓発活動などになります。

特に最近の虐待事案は、子どもや孫の引きこもり、介護者の障害といった複合的な要素が起因していることがあり、保健所や民生委員などと連携が求められています。

総合相談

介護保険サービスだけでなく、市区町村が行っている独自の高齢者福祉の事業や民間の事業所が行っている高齢者向けサービスの案内や申請代行、地域の団体が行っている体操教室や集い、サロンなどの紹介や支援などになります。

社会福祉士について、より詳しい記事はこちら

→『社会福祉士の仕事内容とは | 業務/給与/やりがい/将来性など

看護師(または保健師)

介護予防のための事業を行います。具体的には、介護予防のための体操教室の実施・活動している団体への支援、口腔ケアの関する勉強会、認知症予防のための事業や、オレンジリングなど認知症の人への対応に関する普及啓発のための事業などを行います。

また、最近では、認知症で徘徊している人への声掛けや対応方法を学ぶために“徘徊模擬訓練”を実施している地域も増えてきており、関係者だけでなく、地域を巻き込んだ活動が求められています。

(3)1日の仕事の流れ

それでは、包括支援センターにおける1日の仕事の流れについてご紹介します。

1日の仕事の流れ

午前8時30分 朝のミーティング
午前9時 相談対応(電話や窓口での介護保険サービスや介護予防などに関する相談)
午前11時 介護予防プラン利用者宅への訪問
正午 昼食
午後1時 介護予防事業(体操教室)を実施
午後3時 介護予防(要支援)の支援プランの作成
午後4時30分 夕方のミーティング
午後5時 終了

以上が標準的な1日の仕事の流れになっていますが、ここで挙げた以外にも、地域ケア会議や民生委員、自治会、ボランティア団体など地域での定例会議への出席、安否確認や高齢者虐待など突発的な対応などの業務もあります。

(4)包括支援センターの給料や勤務形態について

包括支援センターは、市区町村が直接運営をしている場合や、社会福祉法人やNPO法人に委託して運営している場合があります。このため、給料や勤務形態などは、運営の種類、年齢、地域、資格などによって変わってきます。

給料

介護支援専門員の平均月給は、47.1歳、勤続10.4年で350,580円となっています。また、介護現場での看護師の平均月給は、50.5歳、勤続年数9.5年で375,280円となっています。

出典:厚生労働省「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」

勤務形態

包括支援センターの人員配置は、介護保険法施行規則によって定められているとおり、常勤勤務となります。ただし、欠員などにより常勤職員がいない場合は、暫定処置として非常勤勤務で3職種を設置しているところもあります。

特に看護師など医療系職員が見つからず、やむを得ず、非常勤勤務で補っているところも見られます。

勤務時間

基本的に包括支援センターの業務時間は、月曜日から金曜日の午前9時から午後5時までの包括支援センターが多くなっています。なかには土曜日も業務を行っているところ、午後7時まで業務を行っているところもあり、早番と遅番、土曜日出勤の月曜日休みといったシフト制のところもあります。

いずれにしろ、特別養護老人ホームなどのような通常的な夜勤や休日出勤というものはなく、基本的に平日、昼間の勤務となります。

平均残業

介護支援専門員の平均勤務時間は、月162.0時間となっており、介護現場での看護師の平均勤務時間は、月157.2時間です。一般的な勤務時間(8時間×週5日×4週)と比較すると大きな差はありません。

求人広告でも、月の残業が20時間以内と謳っている法人や、厚生労働省の働き方改革などの影響もあり、包括支援センターの残業はそれほど多くはないといえますが、一方で、SNSの書き込みなどでは、月末と月初は、介護報酬の計算などで「帰りが遅い」という声もあります。

自分が「ここで働きたい」とい包括支援センターのスタッフに聞いてみるのが、一番正確な情報です。

出典:厚生労働省「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」

(5)包括支援センターで働くメリットと、やりがい

それでは、包括支援センターで働くメリットややりがいとは、どのようなものがあるのでしょう。この章では3つの視点からご説明します。

広い視点で向き合える

ケアプラン、ヘルパー、デイサービス、生活保護、障害、住宅など福祉施策が細分化されていくなかで、包括支援センターは、1人が抱える多岐にわたる課題などを、広い視点で向き合い、いろいろな専門職と連携して対応していくことが出来るので、幅広いキャリアを積むことが出来ます。

一つの問題に対して多面的に取り組め、利用者をたらいまわしにせず、ワンストップ(相談に行く人があちこちいかずに、最初の窓口で解決できること)で解決に当たれることは、やりがいにつながるという声があります。

変化のある仕事&自分で教室を開催できる

包括支援センターは、従来の介護・福祉事業だけでなく、ここ数年、包括ケアシステムの構築や在宅医療・介護の連携、認知症関連事業などの新しい取り組みがあり、パターン化されない変化のある仕事です。

SNSでも、新しいことを学ぶ楽しさや教室を行うことのやりがいの声があがっています。

支援効果を確認できる

包括支援センターで相談を受けた人に、介護保険サービスや市区町村の福祉事業、民間サービス、社会資源などを使って支援した人が、その後、どのような効果があったのか、どう改善できたかということを確認することが出来ます。

(6)包括支援センターで働くためには

包括支援センターで働くためには、介護保険法施行規則で定められた次の3職種のうちのいずれかの資格が必要です。

主任介護支援専門員

主任介護支援専門員は、介護支援専門員(ケアマネジャー)のとして一定期間(神奈川県は5年)以上の勤務経験がり、都道府県が指定する研修を修了することで取得できる、介護支援専門員の上位資格となります。

なお、介護支援専門員の資格は、介護福祉士または社会福祉士、看護師などの福祉系や医療系の国家資格を取得し、それぞれ資格に基づいた仕事を5年以上の経験をつむことで受験資格が得られ、都道県が年1回行っている試験に合格すれば取得できます。

社会福祉士

社会福祉士の資格を取得するには、社会福祉士の試験の受験資格を得ることが必要になります。受験資格の取得方法は11通りあります。

  1. 福祉系大学等(4年制)で指定科目を履修する
  2. 福祉系短大等(3年制)で指定科目を履修し、その後、相談援助実務を1年つむ
  3. 福祉系大学等(2年制)で指定科目を履修し、その後、相談援助実務を2年つむ
  4. 福祉系大学等(4年制)で基礎科目を履修し、その後、短期養成施設で6ケ月以上の
  5. 福祉系短大等(3年制)で基礎科目を履修し、その後、相談援助実務を1年つみ、6ケ月以上短期養成施設を経る
  6. 福祉系短大等(2年制)で基礎科目を履修し、その後、相談援助実務を2年つみ、6ケ月以上短期養成施設を経る
  7. 社会福祉養成機関を経て、その後、相談援助実務を2年つみ、6ケ月以上短期養成施設を経る
  8. 児童福祉司、身体障碍者福祉司、老人福祉指導主事などの実務を4年以上つみ、6ケ月以上短期養成施設を経る
  9. 一般大学等(4年制)卒業後、一般養成施設等に1年以上経る
  10. 一般短大等(3年制)卒業後、で基礎科目を履修し、その後、相談援助実務を1年つみ、一般養成施設等に1年以上経る
  11. 一般系短大等(2年制)で基礎科目を履修し、その後、相談援助実務を2年つみ、一般養成施設等に1年以上経る

これらのいずれかの方法で受験資格が得て、年1回の国家試験に合格すれば資格が取得できます。

看護師(または保健師)

看護師の資格を取得するには、文部科学大臣が指定する学校(大学、短大、専門学校)もしくは、厚生労働大臣が指定した看護師養成所(看護師学校)を卒業して受験資格を得ることが必要となります。あとは、国家試験に合格すれば看護師の資格を取得できます。

また、保健士の資格を取得するのは、看護師の資格を取得後、保健師養成学校または看護師系大学の保健師養成課程を修了後に保健師の試験に合格するのが一般的ですが、最近では、看護師と保健師のカリキュラムが受けられる大学を修了し、看護師と保健師のダブル受験で両方の資格をいっきに取得する方法もあります。

(7)包括支援センターで自身のキャリアを積んでいこう!

在宅福祉の最前線、広い視野でキャリアアップできる!

包括支援センターは、在宅福祉の分野における最前線での仕事になります。このため、福祉分野だけでなく、医療分野、民生委員や自治会、ボランティアなど地域で活動している人たち、障害分野、生活保護分野、国民健康保険分野、消費生活センター、警察、救急など、非常に幅の広い分野で仕事をすることで、多くのキャリアを積むことができます。

まずは見学を!

最近では求人情報も、チラシからインターネット、LINEなどで簡単に入手することができます。給料の額や休暇などの福利厚生面の情報も重要ですが、働くうえで包括性支援センターの施設の状況、センターでは働いているスタッフの状況、地域の状況なども、重要な要素です。

「ここで働いてみたい!」と思ったら、文字情報や写真だけでは伝わらないことが沢山あるので、まずは一度、候補の包括支援センターに見学に行ってみることをお勧めします。