目次
(1)養護老人ホームとは
養護老人ホームとは、経済的に困窮している、このままでは生活が立ち行かないという状況の高齢者が入居できる施設です。養護老人ホームは、特別養護老人ホームなどの介護施設だと勘違いされやすいですが、介護施設ではありません。
高齢者が居住するという意味では介護施設と似ていますが、介護サービスの提供が目的ではなく、あくまで自立を支援する施設です。
そのためいつの日か社会に復帰していくことを前提としています。
入居の申請から、自治体が経済状況の調査などを行われます。経済状況は本人だけではなく、扶養者の収入なども問われることが主です。施設では毎日の食事の提供、健康などの支援はしてくれますが、介護を行ってくれるわけではありません。
養護老人ホームでは要介護認定がされていないことが入居の条件でもあります。
(2)特別養護老人ホームとの違い
養護老人ホームと特別養護老人ホームは名前が似ているため、混同されがちです。しかし、以下のような明確な違いがあります。
介護の有無
特別養護老人ホームは要介護認定を受けた高齢者の方が入居する施設です。具体的には、要介護3(食事・入浴・排泄などで全面的な支援が必要となるレベル)以上の要介護認定をされた高齢者向けの施設であり、介護がメインの施設となります。
一方、養護老人ホームは介護認定を受けていない人が入居する施設となり、介護サービスは行われません。
費用の違い
特別養護老人ホームと養護老人ホームとは、料金形態にも違いがあります。特別養護老人ホームは介護施設なので月額費用がかかります。施設によっても違いますが、だいたい8~13万円前後となっています。
一方、養護老人ホームは前年度の収入によって費用が決まり、高くても月額14万円、場合によっては無料となることもあります。
入居待機の有無
特別養護老人ホームは、ほかの介護施設と比べて費用が安いこともあり、入居を申し込んだとしても入居待ちになる可能性があります。
養護老人ホームは比較的空きがあり、自治体に認められればすぐに入所できることが多いです。
(3)養護老人ホームには、どんな人が入居するのか
養護老人ホームに入居しているのは基本的に経済的に困っている高齢者の方です。
年齢は65歳以上で、自分の身の回りのことは自分でできることが入居の前提となっています。そして経済的な理由以外でも、身よりがおらず、今の環境では生活ができないと判断された人が入居する場合もあります。
そのため、独り暮らしで経済的に誰からの援助も受けられない人、年金を受給できず、生活保護を受けている人、住民税が非課税となっている人などの入居者が大半です。
その他、ホームレス状態である、虐待を受けている、賃貸住宅から立ち退き命令がある、といった人も入居しています。
64歳以下でも入居ができる場合もある
64歳以下でも、他の施設に待機があり、一時的に入りたい状態の場合は入居が認められる場合があります。また、夫婦の片方が養護老人ホームに入居している、または入居予定である場合も可能な場合があります。
しかし、この場合、年齢以外の収入面や健康面の条件は養護老人ホームの基準を満たしている場合があります。
(4)養護老人ホームのサービス内容
養護老人ホームは自立している人が入居できる施設なので、提供されているサービスはそれほど多くはありません。食事の提供といった最低限のサービスや、地域交流の場や社会活動が行われています。
養護施設は自立を支援している施設ですので、社会や地域とコミュニケーションをとり、社会復帰できるよう支援しています。またレクリエーションとして施設内で催しがあることもあります。
基本的には入浴や洗濯、掃除などは入居者自身で行い、スタッフはそれを見守るという体制になっています。
(5)養護老人ホームの費用
費用は高くても月に14万円以内となっています。養護老人ホームは一般的な介護施設のように、初期費用としての頭金や敷金などは必要ありません。
月に支払う金額は、前年度の収入を元に計算される仕組みになっています。その収入により段階的に分けられており、本人が支払う場合は39段階、扶養者が支払う場合は18段階の中から決定されます。
例えば、本人が支払う場合、年収が0~27万円以内であれば月額費用は0円です。年収40万円前後であれば月に1万円前後、年収100万円前後であれば月に5万円前後、年収145万円前後は月に8万円前後です。
年収150万円以上あると(年収×0.9÷12)+81,100の計算式によって計算されます。
ただしこの額で決定となるわけではなく、そこから健康状態なども加味されて最終的な金額が決まることとなります。
(6)養護老人ホーム入所のメリット・デメリット
養護老人ホームに入るメリットとして、まず挙げられるのは費用が安いことです。
年収150万円だと月額8万円ほど、収入が低くなればなるほど安く入居することが可能です。また月額0円となることもあるので金銭的な面で不安がある人には大きなメリットです。
食事の提供や簡単なレクリエーションもありますし入居者との交流もあるため、孤独な思いをすることも減ります。
デメリットとしては、入居したくても自治体の許可が下りない限り、入居することができないということがあります。地域によっては、自治体の許可が厳しく定員割れしている所もあるほどです。
また、生涯面倒をみてくれる施設ではないということも、場合によってはデメリットでしょう。介護が必要になった場合は他の施設に移動することが必要な場合もありますし、自立ができるまでの施設であることを考えておかなければなりません。
(7)入所までの流れ
養護老人ホームに入居する流れとして、まず自治体等の運営者に問い合わせます。自治体からは、入居の基準などの説明を受けられるので、基準をクリアしているとなれば申し込みをします。
申し込み後は面談が行われ、自治体が収入や経済状況、扶養者などについて調査を行います。場合によっては健康診断などが実施され、許可が下りれば入居となります。まずはお住いの自治体に問い合わせてみるようにしてください。
(8)養護老人ホームの「措置控え」問題とは
養護老人ホームは、高齢者に対する自治体からの措置です。金銭的に余裕がない高齢者が、安く入居できることが最大のメリットですが、一方で「措置控え」という問題があります。
もともとこの養護施設の費用負担は国が半分もっており、自治体が半分~4分の1を負担していました。しかしこの制度が変わり2005年から各自治体が全額負担することになりました。
そのため、自治体によっては金銭的余裕がない場合があり、養護老人ホームの入居条件を満たしても、入居許可がおりないという現状があります。その代わりに生活保護の受給をすすめる等の対応を「措置控え」といいます。そうすることで自治体は費用の負担から逃れることができますが、高齢者は行き場所を失うことにもなります。
(9)介護施設を探しているなら
養護老人ホームは基本的に介護サービスはありません。しかし介護サービスのある施設は多くあります。大きく分けると民間と公共に分かれており、民間施設には介護付き老人ホーム、住宅額有料老人ホーム、クループホームなどがあります。
公共施設にも特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設などがあります。これらは介護を必要とする人のための施設となっています。
要介護認定を受けるまではいかない人であっても、サービス付き高齢者住宅、高齢者専用賃貸住宅、ケアハウスなど多くの選べる施設があります。
施設形態によっては、一定以上の要介護認定を受けていないと入れない施設もありますので、施設ごとに調べてみましょう。
介護施設をお探しの方はこちらも参考にしてみてください。
理想の介護施設・有料老人ホームが見つかる | ケアスル 介護
(10)セーフティネットとしての養護老人ホーム
養護老人ホームは「最後の砦」といわれています。金銭的な理由や環境から生活できない高齢者の方が、最後に頼ることができる場所ということで、そういった言葉が使われているのです。
「他の施設に入居できない高齢者」が対象となっているので、生活に困窮している人のセーフティーネットとなっています。高齢者の貧困問題を解決するために欠かせない場所となっています。