介護老人福祉施設とは、介護が必要で在宅介護が難しい高齢者のための公共入居型福祉施設のことです。

あまり聞いたことがないとしても、特別養護老人ホームといえば聞いたことがあるのではないでしょうか?

実は、介護老人福祉施設とは特別養護老人ホームのことをいうのです。

この記事では、この介護老人福祉施設の役割や働く介護職員の職種について解説していきます。

介護老人福祉施設とは

介護老人福祉施設は特別養護老人ホーム(特養)と同義

介護老人福祉施設とは「介護が必要で、かつ在宅介護が難しい状態の高齢者」のための、公共の入居型福祉施設です。

公共の介護施設の中でも料金が比較的低く、利用したい人が多いのも、介護老人福祉施設の特徴です。

要介護3以上の認定を受けた、自宅での生活が非常に難しい高齢者が入居対象となり、日常生活における介助を24時間体制で行っています。

この介護老人福祉施設は、一般的には特別養護老人ホーム(特養)のことを指していて、同義です。

どちらかというと「特養」という呼び名のほうが一般的です。

介護老人福祉施設と介護老人保健施設(老健)の違い

介護老人福祉施設と介護老人保健施設は、一見して名前が似ていることからしばしば混同されやすい2種類の施設です。

介護老人福祉施設は、生活支援を受けながら、より長く生活ができるようにと利用する施設です。

それに対し介護老人保健施設(老健)は、介護を受けながらリハビリをして在宅復帰を目指す施設であるということです。

それぞれ施設利用の目的が違うことから、利用期間や入居対象などが大きく異なるため、注意が必要です。

介護老人福祉施設の利用対象者は?

介護老人福祉施設(特養)の利用条件は厳しい?

介護老人福祉施設を利用できる対象者は、主に次のような高齢者です。

  • 要介護3以上で65歳以上
  • 要介護3以上で特定疾病が認められている40歳~64歳
  • 特例が適用されている要介護1~2の高齢者

この条件を見る通り、かなり入居可能対象者の条件が狭いことがわかります。

実際、かなりコストを抑えられ、かつ高い要介護状態の利用者も受け入れることが出来ることから、地域によっては入居希望者が多く待機を余儀なくされるケースもあります。

介護老人福祉施設で受けられるサービス

介護老人福祉施設では、都道府県が定めた「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」に則って、サービスを提供しています。

介護ケアと医療ケアの側面で、サービス内容を見ていきましょう。

介護ケア

食事

介護老人福祉施設で提供される食事は資格を持った栄養士が管理し、入居者の体調や趣味趣向を考慮して作られているので鮮やかな見た目も魅力です。

家庭復帰を目指す意味を込めて、一般家庭と同じ食事時間に提供されています。

入浴

入浴回数は、介護老人福祉施設によって異なりますが、週2回の施設が一般的と言えるでしょう。

寝たきりの入居者でも入浴できるように機械浴槽などを導入し、入浴しない日は清拭をして清潔な生活を維持します。

トイレ

出来る限り、自立した排泄をサポートします。

寝たきりの入居者は自立した排泄ができないため、オムツを取り替えるなどのサポートをします。

レクリエーション

リハビリ目的で、レクリエーションを行います。

手先を使うものもあれば、全身を使うものや脳を使うものなどさまざまですし、四季折々の年中行事を織り交ぜて多彩なレクリエーションを企画します。

医療ケア

健康チェック

医師や看護師が、入居者の健康チェックを行います。

入居者の体調が急変した時は、ナースコールを利用することで、緊急対応可です。

また、食中毒の予防や地域の病院と連携を取るなどの努力も見せています。

リハビリテーション

日常生活に戻るトレーニングで欠かせないのが、リハビリテーションです。

辛いメニューにならないように、それぞれに合わせたメニューを組みます。

介護老人福祉施設の種類

介護老人福祉施設は、3タイプの入居方法があります。

  1. 多床式
  2. 従来型個室
  3. ユニット型個室

では、それぞれの特徴を見ていきましょう。

多床室

相部屋で利用する部屋で、一室四人の施設が目立ちます。

従来型個室

一人一室で利用するタイプなので、入居者のプライバシーを守ることができます。

ユニット型個室

ユニット型個室は、2002年に制度化されました。

一人一室とした上で、10名前後のユニットとして共同スペースが設けられています。

こうすることで、入居者のプライバシーを守りつつ、家庭的な雰囲気が出せるのです。

介護老人福祉施設でかかる3つの費用

介護老人福祉施設の入居にかかる費用は、以下3つに分けられます。

  1. 施設介護サービス費
  2. 居住費・食費
  3. 日常生活費

それぞれの概要に迫っていきましょう。

施設介護サービス費

これは、介護を受けるために必要な費用です。

金額は要介護レベルによって異なり、介護レベルが高くなれば高くなるほど費用も高額になります。

また、入居する部屋のタイプによって変わることも多いです。

介護サービス

施設介護サービス費の中には、介護サービスの費用も含まれています。

これは、基本料にプラスで加算される費用(=加算費用)で、職員の人数や施設の設備によって変動します。

居住費・食費

居住費

これは、簡単に言ってしまえば家賃です。

入居する施設や部屋のタイプによって異なります。

食費

食事は、3食を1日分として請求されることが多いので、入院や外泊した時の欠食分は請求されません。

日常生活費

日常生活で必要なおむつ代や洗濯代などがこれにあたります。

趣味嗜好品やサービス費に関しては入居者の自己負担で、以下内容が該当します。

  • 洋服代
  • ヘアカット代
  • 追加の医療費

これらの費用は月額費用に含まれます。

次に「要介護3でユニット型施設」の入居者を例として月額費用の相場を紹介します。

施設によって異なるので、あくまでも参考程度にとどめてください。

月額費用の内訳(例)
施設介護サービス費 23,280円
介護サービス加算 1,567円
居住費 59,100円
食費 41,400円
日常生活費 10,000円
合計 135,347円

介護老人保健施設の人員基準

女性介護士と高齢女性が手をつなぐイメージ画像

特別養護老人ホームには、必ず医師を常勤させる義務はない(非常勤が認められている)ため、施設に医師が不在の状況はよくあります。

職員の配置基準としては、医師が1人以上ですが、看護師は入所者数により変わります。

介護老人福祉施設で、サービスを提供するために必要な職員は次の通りです。

看護師

看護師は入所者の数によって変わります。

看護師の配置基準
施設の入居者の人数 看護師の人数
30人以下 常勤換算で1人以上
31人~50人 2人以上
51人~130人 3人以上
130人以上 4人以上

医師

入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な人数です。

介護職員

介護職員は、入所者100人当たり31人以上と決められています。

栄養士、機能訓練指導員

栄養士、機能訓練指導員は1人以上です。

介護支援専門員(ケアマネージャー)

1人以上です。(入所者の数が100人又はその端数を増すごとに1人を標準とする)

※参考:厚生労働省『介護老人福祉施設 (参考資料)

介護老人福祉施設でケアをしてくれる職員

この章では、介護老人福祉施設で働いている職員の仕事内容を取り上げます。

  • 看護師
  • 医師
  • 介護士
  • 理学療法士

看護師

看護師は、医師の補助として看護や検査、その他管理をサポートします。

医師

主に、入居者の方の健康管理や医療的な指導を行います。

施設によって、常勤の医師がいるところと、非常勤の医師がいるところがあります。

介護職員

入居者の方の日常生活のサポートをします。

三大介助と呼ばれる食事介助・入浴介助・排せつ介助をはじめ、生活全般を支える役割です。

栄養士

入居者の方々の状況や嗜好にあわせて栄養バランスを考えた献立を作成します。

機能訓練指導員

リハビリテーションを専門に扱い、入居者の方の自立や機能維持を目指します。

リハビリメニューは、入居者全員が一律なわけではなく、それぞれに合わせたメニューを組みます。

介護支援専門員(ケアマネージャー)

入居者の方のケアプランの作成を主に行います。

場合によっては、介護業務も行うことで、入居者の方の状況を身近で把握し、ケアプランの作成に役立てます。

介護老人福祉施設のメリット・デメリット

介護老人福祉施設の利用には、他の施設と比較した際のメリットもデメリットもあります。

双方を理解することで、利用するのに適しているかがわかりやすくなるのではないでしょうか。

介護老人福祉施設のメリット

費用が安い

介護老人福祉施設は入居一時金がなく、他の施設形態と比べると費用は安いと言えます。

24時間体制の介護

介護老人福祉施設では、介護スタッフが24時間スタンバイしています。

真夜中のトイレなども万全です。

倒産リスクの少なさ

介護老人福祉施設は、社会福祉法人が運営することがほとんどなので、民間企業に比べると倒産のリスクが低いです。

追い出される心配が少ないので、ゆっくり入居できます。

介護老人福祉施設のデメリット

要介護3以上でないと入居できない

介護老人福祉施設に入居できる高齢者は、要介護3以上からと定められています。

特例で、要介護1~2で入居できる場合もありますが、基本的には重度の介護が必要な方が入居できる施設となっています。

入居待ち

介護老人福祉施設は、その値段の安さから入居希望者が多く、入居に時間がかかります。

1年前後かかることは珍しくありませんが、入居待ち期間は施設や地域によって異なるので、気になる施設があれば問い合わせてみましょう。

医療サポートが比較的手薄

介護老人福祉施設は病院ではないため、看護師の24時間配置は義務付けられていません。

そのため、夜中に医療サポートが必要な高齢者は、入居を断られることもあります。

入居者の一日のスケジュール

介護老人福祉施設の1日の流れは、施設によって多少の差はあります。

大まかには、次のような流れです。

1日の流れ
7:00 起床
8:00 朝食
9:00 体操
9:30 入浴
12:00 昼食
13:00 昼寝
14:30 レクリエーション
18:00 夕食
21:00 就寝

介護老人福祉施設を利用する前に確認するポイント

介護老人福祉施設を利用する前に確認するポイントを3つ紹介します。

施設で働きたい方は、こちらの「介護職の転職エージェントおすすめ15社比較やコツを紹介」も参考にて転職エージェントに相談をしつつ転職を検討してください。

立地

なるべく、自然あふれる環境を選んでください。

しかし、極端に田舎町だと家族が訪問する際に交通が不便になるので、田舎と都会がうまくブレンドした立地を選びましょう。

施設の設備や清潔感

入居者が快適に生活するためには、施設の設備は充実して欲しいところです。

それと同時に、清潔感にも気を配ってください。

さらに、車椅子でも移動しやすいスペースの有無も確認しましょう。

職員の雰囲気

介護老人福祉施設の仕事は体力的にも、精神的にも大変な仕事です。

そんな背景もあって、人間関係がうまくいっていない職場もあります。

現場では高齢者が朗らかに過ごすことはできないので、下見する際に職員の仲の良さも確認しておいてください。

よくある質問

ここからは、介護老人福祉施設についてよくある質問を紹介します。

介護老人福祉施設の役割は何ですか?

おもに介護が必要でも在宅介護が難しく、要介護3以上の認定を受けた方の介護を行っています。

公共の入居型福祉施設なので、24時間体制で介護の対応をしているのです。

さらにくわしいことは「介護老人福祉施設とは」でも解説しているので、あわせてご覧ください。

介護老人福祉施設ではどのような人が介護をしてくれますか?

施設では、介護職員やケアマネージャーのような介護関連の方はもちろんですが、ほかにも医師や看護師、栄養士、機能訓練指導員などが働いています。

幅広い状況に対応できるよう、連携を取りつつ業務に対応しているのです。

各職種については、こちらの「介護老人福祉施設でケアをしてくれる職員」を参考にしてください。

まとめ

介護老人介護福祉施設は要介護3以上で在宅介護が難しい高齢者も安心して生活できる施設です。

医療サポートがそれほど手厚くないというデメリットはあるものの、費用は抑えつつ24時間のサポートが受けられるという安心感があります。

人気の施設は長い期間入居待ち状態になる可能性もあるため、利用の際は施設の選択や手続きなどを計画的に進めましょう。

介護職に興味があればウィルオブ介護に相談を

介護老人保健施設は特別養護老人ホームのことなので、もともと施設に興味がある方もいると思います。もし、今回の記事を見て働いてみたいと感じた方は、介護職への転職を検討してみましょう。

ウィルオブ介護では、介護老人保健施設で働くために必要な資格や経験などを考慮し、仕事を紹介していきます。一人でどうやって働くか悩まれている方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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