介護のボランティアに参加するには、自治体や施設ごとに定められた年齢の条件を満たす必要がありますが、条件さえ合えば基本的に誰でも参加可能です。
資格や介護職経験がなくてもスタートできるので、介護職や介護施設の雰囲気をつかみたい方におすすめできます。
ただし、利用者の方と揉めたり事故につながったりする可能性もあるという注意点もあります。詳しく確認していきましょう。
目次
介護のボランティア活動の始め方
介護のボランティア活動は、以下の3つのステップを踏むことで安全にスタートすることができます。
ステップ1:社会福祉協議会でボランティアの募集を確認する
どこの施設でボランティアを募集しているかは、最寄りの社会福祉協議会に問い合わせれば、募集の有無を確認することができます。問い合わせをして、自身の希望を伝えれば、希望に沿う募集を教えてもらえる可能性もあります。
なお、施設によっては、18歳以上で介護を必要としていない人といった応募条件を設けていることもあります。応募条件を満たしているか、日程や時間は自分の都合に合うか、といったことを確認しておきましょう。
また、介護施設のホームページでボランティアの募集を直接行っていることもあります。気になる施設があるのならば、直接、問い合わせてみても良いでしょう。
ステップ2:不安があるならば養成講座に参加する
介護施設にはさまざまな人がいます。なかには、寝たきり状態の人や認知症の人もいるでしょう。介護経験がまったくない人は、「周囲に迷惑をかけてしまうのではないか?」「きちんとボランティアができるだろうか?」と不安を感じてしまうはずです。
このような不安を感じている方は、「認知症サポーター養成講座」「介護予防ボランティア養成講座」といった養成講座に参加しましょう。
これらの養成講座を受講すれば、介護のボランティアで活躍するために必要となる最低限の知識を習得できます。いずれも90分程度の講座で、受講費用はかかりません。不安があるなら受講しておきましょう。
ステップ3:非常時に備えてボランティア保険に加入する
介護のボランティアは、介護が必要な高齢者の方と接することになるので、時には、相手に怪我をさせてしまうこともあります。さらに、高齢者をかばって、自分が怪我をしてしまうこともあるでしょう。
これらの「損害」や「障害」に備えて、ボランティア保険に加入しておきましょう。
ボランティア保険は、保険料が300円~1,400円(年間)程度かかります。
自身が怪我をした際の「傷害保険」とボランティア先で施設に関わる人や物に対して損害を与えた場合の「損害賠償保険」がセットとなったものがほとんどです。
施設によっては、保険料を施設負担で保険に加入させてくれるケースもあるので、ボランティアの募集要項をしっかり確認しておきましょう。
介護のボランティアに参加できる条件
介護のボランティアに参加できる条件は、基本的に年齢以外にはありません。
ただし、施設によっては、18歳以上・施設のある市区町村に在住、在勤、在学している方といった条件を出していることもあります。
また、力の必要な作業をしなくてはならない施設では、介護を必要としていない方といった条件を出していることもあります。
ボランティアに参加できる条件を満たしているかは施設ごとに異なるのでしっかりと確認しておきましょう。
介護ボランティアでできること
介護ボランティアでできることとしては、主に介護職の補助的サービスです。具体的には以下のようなものです。
- 入居者の介護の補助業務・・・ベッドメイキング、配膳サポート、入浴後のドライヤーかけやヘアセット
- 施設の掃除・・・共有スペースや居室の掃除、備品の手入れ、敷地内の花壇の手入れ
- 入居者個々人へのサポート・・・話し相手になる、囲碁といったゲームの相手、本の朗読など
- 複数の入居者に対するサービス・・・書道や編み物といったカルチャー指導、マジックショーや楽器の演奏などの披露
基本的に難しい作業は要求されませんので、安心して良いでしょう。
介護ボランティアでできないこと
介護ボランティアは「身体介護」を行うことができません。身体介護とは、利用者の体に直接触れて行う「専門的な知識や技術を必要とするサービス」です。
- 食事介助
- 排泄、入浴時の更衣や清拭、入浴の介助
- 床擦れ防止のための体位変換、移乗・移動介助
- 通院などの介助
- たんの吸引、経管栄養
上記の業務は、やりかたを間違えると大きな事故につながりかねません。ですので、介護の資格をきちんと保有している人しか行えません。
こちらの記事では介護士の仕事内容を解説しています。どんな仕事を対応しているのか確認してみましょう。
もしも、利用者に頼まれても「スタッフさんを呼んできます」「私ではできません」と断りましょう。
介護ボランティア時の注意点
介護ボランティアを行うときの注意点としては、施設のルールを守ってプライバシーに配慮することがあります。
利用者との距離感や掃除の仕方といったことは、施設ごとにルール設定されています。「せっかくボランティアになれたのだから、利用者と仲良くなりたい!」と考えて、ルールを無視して、利用者のプライベートに踏み込んでいってしまうこともあるようです。
「自分の行為は独りよがりなものになっていないか?」「ルールを守れているか?」といったことを意識しつつ、ルールを守って、ボランティア業務をするようにしましょう。
さらに、ボランティアをしていると、名前や住所、利用者の病状などを知ってしまう可能性がありますが、それらの情報を絶対に外部に漏らしてはいけません。
特に、近隣の施設でボランティアをした場合、知り合いやその家族をサポートすることもあるでしょう。そして、ボランティアが終わったのちに、「××さんのお母さんの介護のサポートをしたけれど、〇〇な状態だった」などと世間話でうっかり話してしまうこともあるようです。
うっかり話してしまったとしても利用者の情報を漏らしてしまった場合、施設の信頼を著しく損ねたという理由で訴えられる可能性もあるのです。プライバシーには注意しましょう。
転職前にボランティア活動で介護経験を積んでおこう
介護のボランティアは大変そうに感じられるでしょう。
しかし、介護業界に転職したい人には、ボランティア活動で介護経験を積み、介護職の適性をチェックできるというメリットがあります。
介護職は、人によって向き不向きがあります。介護にあこがれを持っていたものの、実際に転職をしてみたら、やりがいを感じられず、すぐに辞めることになった…ということもままあるのです。
しかし、ボランティア活動を通じて、介護施設や介護業務の実態を見たり体験したりすることで、自分の適性を働く前に確認できます。
介護転職に不安を感じている人は、まずはボランティアからスタートしてみましょう。
おわりに:介護適性を確認したいならばボランティアに挑戦しよう
介護職は、合う合わないが存在する仕事です。いざ、働き始めてみて「こんなはずではなかった」「想像とは違った」とならないためにも、まずはボランティアで現場を見てみるのがおすすめです。
ボランティアをするために必要な資格はありません。できる仕事には限りがありますが、だれでも簡単に参加できるので、ぜひボランティア参加を検討してみましょう。
監修者コメント
介護ボランティアは、身体介護は行うことができないことは改めて認識しておきましょう。
ボランティアに参加をすると、つい楽しくなったり、何か役に立たなければと考えてしまったりするため、身体介護の他、つい介護ボランティアとしてはできないサービスをしてしまうかもしれません。万が一、そのことが原因でケガをさせてしまった場合、内容によってはボランティア保険の賠償責任の対象外になることがあります。賠償責任保険は、故意によつ事故は補償の対象外としています。介護ボランティアで出来ないことを、ついしてしまった結果ケガをさせたということであれば、場合によっては故意とみなされる可能性があるからです。家族から訴えられると思わぬ高額請求になることもありますし、施設にも迷惑を掛けます。介護ボランティアができること、できないことは十分わきまえて参加するようにしましょう。
この記事を監修した人
金子 賢司
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。