スキマ時間を用いて、介護業務の一般業務と求職者をつなぐサービス「スケッター」。
そのスケッターの創始者である、鈴木さんにお話をお伺いしました。
- なぜ介護業界に興味を持ったのか
- 何がきっかけでスケッターのアイディアが生まれたのか
など、今回のインタビューでは普段語られることのないお話をお聞きすることができました。
スケッターに込められた、鈴木さんの介護業界に対する思いに迫っていきます。
(インタビュアー(左):いろはにかいご編集長 喜田)
(中央:鈴木さん)
目次
起業前から介護業界に強い関心を持っていた鈴木さん
喜田:
鈴木さん、簡単にご経歴と、スケッターを作ったきっかけをお教えください。
鈴木さん:
大学を卒業した2015年4月にITメディアに入社し、3年間記者をやっていました。
特に介護ロボットに注力して取材をしていて、そこから介護ロボットの販売代理店を立ち上げたのが起業のきっかけです。
喜田:
その時からもうすでに介護業界に興味があったんですね。
鈴木さん:
はい。とはいっても、自分には介護との直接的な関わりはなかったです。両親や祖父母の介護をした、という経験もありませんでした。
喜田:
そうだったんですね!何か他のきっかけがあったということでしょうか。
鈴木さん:
学生の頃に大学の授業で介護業界の現状を知って、問題の深刻さに今でも覚えているくらいの衝撃を受けたんです。
ここでは詳しい話は割愛しますが、そこから介護というトピックが自分の中でとても大きな興味を引くものとなりました。
もともと就活の時は、介護人材系か記者職で迷い、広く社会のことがわかると考えて記者になったという経緯です。
喜田:
そこからメディアで記者として勤務されていたんですね。
鈴木さん:
でも2年目くらいから「やっぱり自分がやらなきゃ」という考えが大きくなっていき、そこから独立を考え始めました。
とはいえ大きな貯金があったわけでもないので、働きながら会社作るところからはじめていきました。
勤務していたメディア会社と自分で作った会社の二足の草鞋で続けていましたが、やはり大きく動くためには時間が足りず、もっと時間を割きたいとずっと思っていたんです。
そこで会社を辞めたのですが、フリーランスの編集者みたいな感じで六本木のメディアベンチャーに転職しました。ITメディア出身ということですぐ仕事をもらえて。
資金調達したタイミングで完全にスケッター事業一本に時間を使うようになりました。法人登記が2017年2月です。
ITメディアをやめる前の最初1年は介護ロボットのディーラーとか、VRで施設を紹介するなど、今の事業とはあまり関係のないことをやっていました。
(写真:VR施設見学の様子。隅々まで見渡せます!)
スケッターのアイデアが生まれてから形になるまで
喜田:
今のスケッターのサービスのアイデアが出てきたのはいつ頃なんでしょう?
鈴木さん:
企画は2018年の6月ごろに出来上がり、クラウドファンディングをはじめたのが2018年8月でした。
当時は、「ロボットではまだまだ業界課題を解決するには10年20年かかる。やっぱり人手が必要。とはいえ正社員やアルバイトはどこの業界でもとれなくなっている。人手不足の問題でもある「2025年問題」を回避することのできる方法なんて本当にあるのか」、という具合に、ずっと模索していた折でした。
そんな時、僕自身が「お手伝い系・スキルシェア系」のサービスを利用していたことがあったので、そのシェアリングエコノミーの概念を介護業界に適用できないか、とある日思ったんですね。
そういったサービスで提供されるサービスは、掃除だったり買い物だったり、高い専門性を求められるわけではない、比較的「お手伝い」に近いサービスが多いですよね。
「そういった一般業務って、まさに介護業界でも必要になるものじゃないか!」という思い付きから、今のスケッターの着想を得ました。
喜田:
シェアリング×介護ですね!
そのつなげ方は、普段私たちがやっているビジネスからしても学ぶところが多いです…。
鈴木さん:
ただ、アイデアが固まっても、資金がなくては形にできない。
そこで僕は企画書を持って投資家周りをしたんですが、見せることができるものは身一つと企画書だけでエンジニアすらいなかった状況なので、相手にしてくれなかったんですよね。
そこで共同創業者の提案で、クラウドファンディングを募ったという経緯です。
そのクラウドファンディングも、途中まではスローペースでしたが、後にメンバーとなった土光さんの支援のおかげもあって成立しました。
鈴木さんの語る、「営利企業で解決することに意義がある」という課題とは
喜田:
話がちょっとそれますが、NPOでやるつもりはなかったんですか。
社会課題に向き合うとなると、資金も比較的集まりやすそうだと感じてしまいます。
鈴木さん:
考えました。ただ、NPOでやるには組織としての体力に限界があります。株式資本で調達して上場、マーケットで挑戦出来ればもっと集まりやすくなるし、そうじゃないと中途半端になる。
多くの社会起業家が寄付金や助成金の範囲を頼りにやっていくしかないという現状を打破しないと社会起業家も増えていかない。介護領域のスタートアップって少ないんですよ。やっぱり儲かるイメージもないし、業界に関心がある人が少ないというのは正直実感値としてある。
僕はこの領域に参入するプレイヤーを増やしたい。
先ほど、投資家回りをしたという話が出ましたが、「こういうビジネスに出資しても大丈夫、回収がしっかりできる」と投資家にも思ってもらいたい。
そして若い世代が自分もこういう事業で起業するっていうことがありなのかも、と思ってもらいたいですよね。
喜田:
介護の問題を「解決すること」だけでなく、解決の仕方も重要だということですね。
それでは今度は、現在スケッターを通じて解決しようとしている「介護の問題」というのを具体的にお伺いしてもよろしいですか?
鈴木さん:
色々指摘されているものはあると思うのですが、一番根っこにあると思うのは、介護に十分な関心が集まっていないという問題です。
国民一人一人が持つ関心を高めたい。
一人ひとりができることを考えてもらいたい。
でもそれは、例えば国が主体的に動いて「介護人材を増やそう」といって無理やり介護というトピックを大きなものにするという流れでは完遂できない。
まずは「関心」を上げることが重要なので、逆に言えばそのための「仕組み」さえ作れれば、状況は良くなると考えているんです。
「介護の課題ではなく、国の課題。」そう語る鈴木さんが目指す場所とは
喜田:
なるほど・・・。スケッターがそれを促すための仕組みになればいいな、という思いでこの事業をやられている訳ですね。
鈴木さん:
そうです。介護業界の課題としてとらえられている問題って、それはそもそも国全体が持っている課題じゃないですか。
とてもマズイ状態であるにも関わらず、全く介護業界に関わるきっかけがないと、「介護業界大変ですよね」とか「介護業界、人手足りてないみたいですよね・・」みたいに人ごとになってしまう。
ただ、現状介護業界に「関わる」ための方法は「介護職としてのキャリアを選ぶ」「ボランティア」といったことがマジョリティを占めてしまう。
なので、スケッターでは介護施設の中でも主に「一般業務」、すなわち介護の専門性が求められる業務というよりも、趣味や生活の中で培えるノウハウも生きる業務を中心にマッチングがされています。
喜田:
本当ですね・・・。では、最後に、今までのお話と被る部分もあるかもしれませんが、「今後スケッターが目指すビジョン」、もしくはスケッターがサービスとしてどのようなことをしていきたいといった思いというのをお聞かせください。
鈴木さん:
数値的な目標は、この3年で、登録してくれる施設を3000施設、スケッターを「7万人」に増やすということです。現在は首都圏が中心ですが、大阪や福岡などまで拡大していきたいと思っています。
喜田:
スケッターの登録者が増えると、施設にとっても様々なメリットがありそうですね。
鈴木さん:
その通りです。例えばうちの実績でいうと、ここ3か月で、ある1施設だけで7~8人の転職(直雇用)につなげている、というのがあります。スケッターがきっかけとなって、介護施設への求職者が増える。そんな副次的効果がもっと増えていくと思います。
喜田:
そうなると介護業界全体の人の流れが相当変わりますね…。
今後のスケッターの動向、とても楽しみにしています!
現在登録者増加中のスケッター。
スケッターがきっかけで介護施設への求職者が増えるなどのお話を聞いて、これからの介護業界への大きなインパクトを与えるサービスになると思いました。
何より、介護業界に対する鈴木さんの思いは、スケッターのさらなる発展を期待させるものでした。
同じく介護業界を盛り上げていく身として、これからの鈴木さんの動きに注目せずにはいられません。