介護という言葉を聞いてどのようなイメージを持たれますか?

なんとなく、身体的なサポートや、排泄、食事などのお世話をしているイメージがありますが、明確に介護とは何かと言われると答えられない方も多いのではないでしょうか。例えば看護と介護の違いや、法的な概念、介護の本当の目的などを知っている方は少ないかと思います。介護の意義や目的を知ることによって、一つひとつのケアにどのような意味があるのか理解して本質的な介護を実地できます。

ここでは本当の介護とは何かについて、介護の目的や法的な概念、介護と看護との大きな違いなどを挙げながら説明をしていきます。
これから介護を行っていこうと考えている方や介護を学びたい方はもちろん、すでに介護士として働いている方にも必見の情報ですので是非参考にしてください。

介護とは?

法的な介護の概念とは、法的な介護が記載されている条文としては、社会福祉士及び介護福祉士法の第2条に示されています。

「専門的知識及び技術をもって、身体上または精神上の障害があることにより、日常生活を営むのに支障がある者につき、入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、以下略」
(社会福祉士及び介護福祉士法の第2条より抜粋)

これが介護の法的に示されている概念です。

ここで明記されている身体上の障害とは病気や事故などで起こった、身体機能の障害であり、麻痺や認知症などもこれに含まれます。精神上の障害はうつや、てんかんなどがそれにあたります。

「その他の介護を行い」と書かれているのは、日常生活上を送る上では食事を食べたり、トイレに行ったり、お風呂に入るだけではない、ということを意味しています。

日常生活を送るということは、例えば、買い物に行ったり、趣味を楽しんだり、調理をしたりなどです。幅広い意味が含まれているということを「その他の介護を行い」で示しています。

介護とは、

  • 介護と看護は異なるもの
  • 介護は、日常生活上の支援を行うこと
  • 日常生活を援助して生きる意欲を持ってもらうこと

大きく3つにまとめられます。

その他の介護の概念とは

介護の概念には法的なもの以外に、様々な諸説があります。
例えば社会事業学校連盟では障害の原因を「老齢や心身の障害により」と明記しており、体だけではなく、精神的にも障害負った方を支援することが介護と謳っています。また、支援の内容として、日常生活動作以外に「社会活動」が含まれています。

その他の概念としては、中島紀恵子という方が出している「社会福祉士養成講座14 介護概論」では、衣食住の中でその対象者が獲得してきたものが失われることへの支援を介護と呼んでいます。

そのため、その方が障害を負ってから新たに獲得するものの過程は介護とは呼べないと明記しています。

介護の概念はそれぞれ違いますが、共通認識として、『介護とは何らかの障害によってできなくなったことに対し、日常生活上の支援を行う事』と覚えておくとよいでしょう。

介護の目的とは

生活行為を援助し生きる意欲を持たせる

介護の目的は生活の支援です。また、高齢者や障害者への生活意欲向上という目的もあります。
例えば、食事作りが生きがいに感じていた方が、脳梗塞などで倒れてしまい障害を背負ったとします。障害によって食事作りができなくなって生きがいを失ってしまいました。

しかし、介護によって食事作りができるように支援したり、調理をする時に難しい部分だけ、介護士がするなどの支援を行うだけで、その方は食事作りができるようになって、「次は何を作ろう」と生活に対しての意欲が出てくることがあります。
介護でその方の生活を支援していく最終的な目標としては、日常生活に楽しみを持ってもらうこと、生きがいを感じて生活をしてもらうことになります。

介護予防

介護予防は平成18年の介護保険制度の改正時にできたものであり、介護になる可能性が高い高齢者を対象とした介護にならない為の予防策です。
介護予防給付というものができたのも、平成18年からです。

介護予防は非常に大切なことであり、介護保険給付の費用を抑えるという国の目的もありますが、高齢者が介護状態になってしまうと精神的や身体的な落ち込みが早く、すぐに寝たきりになってしまう、認知症が進んでしまうなどの問題があります。
そういったことを予防するために、介護予防というものがあります。

介護予防は今後形を変えていき、国の主導から自治体の主導に移りつつありますが、基本的な目的としては変わりませんので、現在元気な高齢者は介護状態にならないように気を付ける必要があるといえます。

要介護と要支援の違い

要支援

要支援は平成18年度にできた制度であり、多少日常生活に支障があるが、ある程度は一人で生活が出来るという方です。常時介護は必要ない方が要支援になります。
要支援はそれぞれ1と2があり、1が軽く、2の方が重くなっています。

要支援は介護保険制度が使えます。サービス内容としては福祉用具貸与以外は要介護の方と変わらないサービスを受けることができます。注意したいこととしては、サービスの量が限られているという点です。
使える単位数が要介護の方と比べても少ないですので、あまり頻繁に介護保険を使うことができません。

介護士として、要支援の方を介護するときには、自分で出来る事を把握して、出来ないところのみを支援するようにしましょう。過介護にならないように注意が必要です。

要介護

要介護は日常生活を営む上で介護が必要な方です。
要支援とは違って、1~5の5段階で区分されて5が最も重いです。

要介護1…ほとんどの場面で自立をしているが一部介護が必要な方が多いです。
要介護2…歩行や食事、入浴などの日常生活動作にも介護が必要な状態です。
要介護3…生活の全面で介護が必要な状態であり、車いすの方はこの区分に入ることが多いです。認知症のみで問題行動が顕著にみられる方はこの区分が多いです。
要介護4…介護が常時必要であり、介護を受けなければ日常生活を送ることが困難な方です。寝たきり状態の方が多いです。
要介護5…要介護4の状態に加えて、胃ろうや吸引などの医療的な処置が必要な方が要介護5になりやすいです。

介護と看護の違い

介護と看護は似ているように見えますが、大きく違います。
看護の目的とは病気の治療です。一方で介護は生活を問題なく送れること、充実した生活を送ることを目的としています。

その為、しばしば介護と看護で意見が対立することがあります。
例えば、お酒が好きで、酔っぱらってしまって転倒したことがある高齢者がいるとします。看護師としては転倒して骨折をする可能性もあるということでお酒を飲まないように対応することが多いです。病気やケガをできるだけ防ぐのが看護師の役目だからです。

しかし、介護士の場合は転倒を防ぐことはもちろん大切ですが、楽しみであるお酒を奪うことがその方にとって本当に良いことなのかを考えます。
お酒の量を少なくするのか、転倒しないように工夫をするのか、または、お酒以外に楽しみを見つけてもらうのかなど、QOL(生活の質)が下がらないことを考えていきます。

この部分では大きく違うといえます。
また、近年看護師も患者さんのQOLを考えるようになってきており、生活の質が下がらないように看護する方も増えてきています。

まとめ:介護士の目的は「支援をして充実した生活を送ってもらうこと

介護士の目的は「支援をして充実した生活を送ってもらう。意欲を持ってもらう」と明確でありますが、実際に介護をしていると様々な壁に当たります。何が正しいのか分らなくなることもあります。
しかし、壁に当たったとしても根気よく高齢者と向き合うことによって、解決していきますし、高齢者も笑顔が出てくるかと思います。

特に認知症の方を介護していると、どうしていいのか分らない、何が正解か分らないと介護士が追いつめられる可能性もありますので、そんな時は本当の介護とは、介護の目的を振り返って心を整えるようにしましょう。
これから介護を目指している方は、なぜ介護をするのか?ということを常に心において、介護を行うと高齢者に喜ばれる介護になることができます。

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