介護ベッドは購入だけでなく、レンタルをすることも可能なので導入時にはどちらが良いか検討することをおすすめします。
購入の場合は利用者に合わせたベッドを選ぶことができますし、レンタルの場合は定期的なメンテナンスや用具選びの相談ができる点がメリットです。
この記事では、介護ベッドの購入とレンタルのどちらが良いかや、レンタルの場合は適用条件や手続きの流れについて解説していきます。
これから介護ベッドの導入を考えている方は、参考にしてください。
目次
介護ベッドの機能・種類
介護ベッドは、スイッチやリモコンで床板の形状や位置を変化させ、被介護者の寝起きや乗り降りなどの動作をサポートする福祉用具です。
機能は大きく分けて3つあり、そのパターンによって介護ベッドの種類も分かれます。
機能
介護ベッドの機能には、それぞれ以下のような役割があります。
背上げ機能
ベッドの背もたれを起こして角度をつけます。
被介護者がベッドから楽に起き上がり、そのまま座って食事や読書などもできるようになります。
高さ調節機能
床板の高さを変えます。
被介護者が乗り降りしやすいように低くしたり、高くすることで介護者が立ったまま介助しやすいようにしたりします。
膝上げ機能
ベッドの膝から下の部分を、並行に持ち上げたり山折りにしたりします。
そこで脚が引っかかるので、背上げをした際にも被介護者の体がずれ落ちにくくなります。
また、長く寝ていると脚の血行が悪くなるため、血流をうながしてむくみを防ぐ効果もあります。
種類
介護ベッドはモーターの搭載パターンによって種類が分けられ、それぞれ以下のような特徴があります。
1モーターベッド
「背上げ機能」あるいは「高さ調節機能」の、いずれかが搭載されています。
自力である程度は動ける被介護者に向いています。
2モーターベッド
「背上げ機能+高さ調節機能」が搭載されているので、手助けがないとなかなか起き上がれない人に向いています。
なお、このタイプでは背上げと連動して膝上げが行われるものもあります。
1+1モーターベッド
「背上げ機能+膝上げ機能」の2つが搭載されています。
2モーターベッドの連動タイプとは異なり、それぞれ独立して動かすことができるのが特長です。
ベッドの上で長い時間を過ごす人が、脚の血流をうながすのに向いています。
3モーターベッド
3つの機能がすべて搭載された介護ベッドです。
それぞれ細かく調節してベッドを変化させられるので、自力では寝返りを打つのがむずかしい人にも向いています。
ベッドの乗り降りもしやすいので、寝たきりになるのをふせぐ効果もあります。
4モーターベッド
3つの機能に加え、肩の部分を左右にかたむける機能が搭載されていて寝返りをサポートしやすくなるので、寝たきりの人にも向いています。
タイマーで定期的に寝返りを打たせることができるタイプのものもあります。
介護ベッドはレンタルのほうが購入よりお得?
介護ベッドは基本的に長期にわたって使用するものなので、レンタルではかえって費用がかさんでしまい、購入したほうがお得なのでは?そう考える人もいるかもしれません。
しかし、以下の3つの理由から、介護ベッドではレンタルのほうがよりお得に使用できるようになっています。
介護保険を利用できる
介護ベッドは、要介護度3以上の人であれば介護保険を利用してレンタルできます。
その場合、月額500〜1000円前後なので、年間6000〜1万2000円程度の費用が必要となります。
一方、介護ベッドを購入すると、少なくとも12万円程度はかかります。これは、レンタルした場合の10〜20年分の金額になります。
介護ベッドの耐用年数がせいぜい10年程度だと考えると、コスト面から見ても、十分にレンタルのほうがお得ということになります。
定期的にメンテナンスがある
介護ベッドは長期にわたって使用するため、さまざまな不具合が起こりやすくなります。
その場合、修理や部品の取替などでさらにコストがかかることもあります。
また、被介護者は体調や体格などが変化しやすいので、それに合わせてサイズなどの調節も行わなければいけません。
このようなメンテナンスも、レンタルであれば福祉用具専門相談員が定期的に訪問して行ってくれるのでとても助かります。
用具選びを相談できる
介護ベッドは、被介護者が生活のなかでもっとも長く使用するものなので、より使いやすく安全なものを選ぶ必要があります。
あまり使い心地のよくないものを無理に使っていると、結果的に生活の質がむしろ下がってしまうこともあります。
また、はじめのうちは良さそうだと思えていても、使っていくうちにさまざまな不都合が出てくるケースもよくあります。
その点、レンタルなら福祉用具専門相談員に用具選びの相談ができ、なおかつ気に入らなければ簡単に交換することもできるのでとても便利です。
介護保険で介護ベッドをレンタルする
介護保険で介護ベッドをレンタルするには、どのような条件や料金が必要となるのでしょうか。
ひとつずつ、詳しく見ていきましょう。
対象種目
福祉用具は、被介護者の身体状況の変化などで、短期間で取り替えなければいけなくなるケースも多くなります。
そのため、便座や浴槽など一部の福祉用具をのぞいて、介護保険では原則レンタルでしか利用することができません。
その対象となっているのは以下の13種目で、それぞれ要介護度に応じて利用できる範囲も決められています。
種目 | 要支援1・2および要介護1 | 要介護度2〜5 |
---|---|---|
車いす | × | ○ |
車いす付属品 | × | ○ |
特殊寝台 | × | ○ |
特殊寝台付属品 | × | ○ |
床ずれ防止用具 | × | ○ |
体位変換器 | × | ○ |
認知症老人徘徊感知機器 | × | ○ |
移動用リフト | ○ | ○ |
手すり | ○ | ○ |
スロープ | ○ | ○ |
歩行器 | ○ | ○ |
歩行補助つえ | ○ | ○ |
自動排泄処理装置 | ○ | ○ |
世間一般でいう介護ベッドとは、このうちの「特殊寝台」のことです。
特殊寝台として認められるには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 背部または脚部の角度が調整できる
- 床板の高さが無段階に調節できる
適用条件
介護保険を利用して介護ベッドをレンタルできるのは、原則として要介護度2以上の人のみです。
ただし、それ以外でも以下のようなケースでは支給が認められることがあります。
- 病状が変化しやすい
- 近い将来に高い確率で必要
- 医療上の必要性がある(パーキンソン病、末期癌、喘息、心疾患、嚥下障害など)
この場合は、医師の意見に基づき、それを各自治体が確認していることが条件となります。
料金
介護保険を利用すると、所得に応じて1〜3割の自己負担で介護ベッドをレンタルできるようになります。
レンタルは基本的に月額制ですが、料金設定は事業者によってまちまちです。
厚生労働省の公表する「全国平均貸与価格および貸与価格の上限」によってその範囲が定められているので、まずはそちらも確認しておきましょう。
なお、福祉用具のレンタルは「区分支給限度額」に含まれるため、ほかの介護サービスと合わせて毎月の支給限度額も決まっています。
そちらも、よく気をつけておいてください。
区分 | 支給限度額 |
---|---|
要介護2 | 1万9705単位(約19万7050円) |
要介護3 | 2万7048単位(約27万480円) |
要介護4 | 3万938単位(約30万9380円) |
要介護5 | 3万6217単位(約36万2170円) |
レンタルの費用は医療費控除の対象ともならないので、その点もよく被介護者に確認しておきましょう。
また、介護保険以外にも、地方自治体や社会福祉協議会などで無料や低額で介護ベッドのレンタルを提供している場合もあるので、ぜひ活用してみてください。
介護ベッドレンタルの流れ
実際に介護ベッドをレンタルする際には、以下のような流れとなります。
具体的な手続きなどをよく確認しておきましょう。
利用の相談
まず被介護者が、ケアマネージャーか地域包括支援センターの担当者に、介護ベッドの利用について相談します。
ほかにも、医師や看護師、理学療法士など、さまざまな職種からのアドバイスが参考となります。
事業者の選択
ケアマネージャーがケアプランを作成し、どの事業者からレンタルを行うかを決めます。
介護保険が適用されるには、各自治体によって認められた「指定福祉用具貸与事業者」からサービスを選ぶ必要があります。
製品の選択
事業者に所属する福祉用具専門相談員が訪問して、どのような介護ベッドが適当かを提案します。
被介護者がそれに納得したら、納品や支払いの方法などについても決めます。
利用の開始
介護ベッドが納品されたら、その使い心地などをよく確かめておきましょう。
問題がなければ、正式に契約を結びます。
サービスの利用中は、専門相談員が定期的に訪れて、メンテナンスなどのアフターサービスを行ってくれます。
変更および解約
レンタルは毎月、自動で契約が更新されます。
もし、被介護者の身体状況などに変化があり、変更や解約を行いたい場合には、ケアプランの見直しも必要となります。
まずは、ケアマネージャーに相談をしましょう。
介護者・被介護者にとって最適な介護ベッドを
介護ベッドは、被介護者にとって一日の多くを過ごす場所となります。
その使い心地次第では、生活の質も大きく変化し、生きがいなどにもつながることになります。
よく考えて、被介護者にもっとも最適なものを選ぶようにしましょう。
機能以外のポイント
介護ベッドを選ぶには、機能以外にも以下のようなポイントが重要です。
サイズ
介護ベッドの長さには以下の3通りがあるので、それぞれ身長に合わせて選びましょう。
- ミニ(180cm):身長150cm未満
- レギュラー(191cm):身長150〜175cm
- ロング(205cm):身長176cm以上
また、介護ベッドの幅にも以下の3通りがあります。
こちらも、被介護者の身体状況などに合わせて使い分けましょう。
- 83cm:被介護者と体を密着して介助を行いやすい
- 91cm:一般的なベッドと同じサイズで寝返りが打ちやすい
- 100cm:通常のベッドでは狭すぎる体格の大きな被介護者向け
マットレス
ある程度自力で動くことができる被介護者は、マットレスがやわらかすぎると、寝返りや座ることがむずかしくなってしまいます。
適度な硬さがあり、しっかりしたものを選ぶようにしましょう。
一方、寝たきりの場合には床ずれをふせぐために、できるだけやわらかい体圧分散マットレスなどを使用するのがおすすめです。
どちらの状態でも使い分けられる、表と裏で硬さの異なるリバーシブルタイプもあります。
ほかにも、撥水加工や抗菌加工などの衛生面、洗濯の方法など、手入れの仕方についてもよく考えておく必要があります。
付属品
介護保険では、以下のような介護ベッドの付属品もレンタルすることができます。
被介護者の状況に合わせて、うまく工夫しましょう。
- 手すり:立ち上がりをサポートする
- サイドレール:転落をふせぐ
- 専用テーブル:ベッド上で食事ができる
- 移乗用ボード:車いすに移りやすくなる
ただし、付属すると機能が使えなくなる介護ベッドもあるので、その点はよく確認しておきましょう。
介護者にとっても楽な介護ベッドを選ぼう
介護ベッドは、介護者にとっても、被介護者を支えるなど介助の負担をやわらげてくれるメリットがあります。
また、目を離したすきに起こりやすい転落や呼吸困難などのアクシデントを防いでくれるので、心理的にも楽になります。
そのことが結果的に被介護者の負い目も軽くして、心身ともによりよい状況へつながっていくことも期待できるでしょう。
そのためにも、介護ベッドは被介護者だけではなく、介護者にも最適なものをよく選ぶようにしましょう。
介護保険でのレンタルなら福祉用具専門相談員のアドバイスも受けられ、いつでも交換できるのでぜひ利用してみてください。