2013年(平成25年)に、「ホームヘルパー」制度は廃止され、「介護職員初任者研修」という資格に生まれ変わりました。
将来、介護福祉士を目指すためのキャリアパスを見直す目的での改正となり、新しく、「認知症への理解」、「障害への理解」など座学・実技の両面で資格取得のためのカリキュラムが追加されることになりました。
介護保険法がスタートして今年で17年。その間現場で働く職員の環境は徐々に変わってきました。資格の多様化や業務範囲の拡大。
3年に一度訪れる介護保険法改定により大きく揺らぐ介護業界と介護士という仕事について少し振り返ってみたいと思います。
目次
介護士になるために、持っておきたい「初任者研修」
介護の世界に興味を持っている人は大勢いることだと思います。学生ならば福祉系の大学か専門学校で基礎を学び、そのまま福祉・介護施設に就職するのが一般的です。
しかし、ご存じのとおり他業種からの転職者や、子育てがひと段落した主婦などが応募するケースも往々にしてあります。このような未経験の人たちが働くためにはどのような準備が必要なのでしょうか?
最もポピュラーな手段は、転職前に、「介護職員初任者研修」(以下初任者研修)の資格を取ることです。
資格取得には、テキストによる学習や通学での実技体験、そして実際の介護施設における実務研修、といったカリキュラムの受講が必要です。
専門学校やカルチャースクールでは、資格取得のための講座を開講しています。休日や夜間に行われている講座に申し込めば、仕事をしながらでも学ぶことができます。
実際に介護の求人を見ると、全国展開している大規模な事業者や、都市部にある施設では、「初任者研修取得」を応募条件に掲げている場合が多く、介護業界への転職を考えているならば、まずはこの資格を取得しておくことをオススメします。
とはいえ、介護事業の経営者の中には、他人への気配りや心遣いを重視する場合もあり、面接時の印象次第では資格を持っていなくても受け入れてくれる施設もたくさんあります。
しかし、大手の施設では研修が充実している場合も多いのも事実です。応募の際にはご自身のキャリアを十分に検討した上で決めてください。
資格の整備が徐々に進む介護業界
制度が変化したことによって、介護士の業務範囲も広がりました。
初任者研修の次のステップとして、「実務者研修」があります。「実務者研修」には、後述する介護福祉士の受験資格にも組み込まれています。具体的には医療行為にあたる、たん吸引や経管栄養摂取(胃ろう)の実技を覚えることになります。
多くの介護職員が取得を目指すのは、国家資格の「介護福祉士」です。「介護福祉士になってこそプロであり、一人前と呼べる」と言い切る人もいます。
資格を取得するためには3年の実務経験が必要になるので、仕事を覚え、周囲からの信頼をある程度得られた人が受けるにはちょうどよいタイミングと言えるかもしれません。
そして新たに、介護福祉士の上級資格として「認定介護福祉士」という資格が創設されることになりました。
大勢の職員が働く現場にあって、人材育成や教育、労務管理・監督といったマネジメントまでカバーする役割が求められる資格です。
厚生労働省によると、実務経験7~8年、ユニットリーダー経験、訪問・施設両方での実務経験がある人材が望ましいとしています。
進められる地域包括支援でイニシアティブがとれる人材など、今後社会的に幅広い役割が求められる介護分野でのリーダーの育成を充実させる狙いがあるといったところでしょうか。
介護保険の導入によって生まれた、サービスという概念
それでは介護士の仕事は、以前に比べ、内容が大きく変わったのでしょうか?
身のまわりの世話や生活支援といった業務内容に大きな変化はありませんが、2000年(平成12年)の介護保険法の施行により、介護自体の概念が「措置制度」から「サービス」に変わったことは、大きな変革と言えるでしょう。
「措置制度」とは、例えばケガをして病院で治してもらう行為のような、マイナスをゼロに戻すプロセスを指します。
しかし「サービス」の概念が生まれたことによって、最低限の生活を保障するのではなく、プラスになる介護を提供する動きが広まりました。
そしてこの法改正により、これまで税金でまかなわれて安定していた介護施設の報酬も、利用者や要介護認定の度数によって変動するようになりました。
これは新たな財源確保によるサービスの充実や多様化だけではなく、十数年間にわたる事業者や介護職員たちの方々の努力によって、介護サービスの付加価値が高められてきた結果であるといえるでしょう。
キャリアアップが目に見える業界
介護業界のイメージで真っ先に思い浮かべるのは「給料が安い」ではないでしょうか。これまで政府は何度も介護職員の処遇改善を提起してきましたが、まだまだ課題が残されているというのが現状です。
しかし特別養護老人ホームや介護老人保険施設、グループホームなど24時間体制の居住型施設で夜間勤務を担当した場合には、夜勤手当が給与に大きく上乗せされます。
また、先ほどご紹介したように、資格取得によるキャリアアップ制度が整っている点も介護業界の特徴です。
介護福祉士をはじめとする資格取得を根拠にしたフェアな人事評価がされている点は、介護業界の長所といっても過言ではないでしょう。
おわりに:介護業界は、何か1つでも資格を持っていれば転職しやすい業界
少子高齢化が進み、介護職の需要が拡大しています。介護業界は募集を幅広く行っていることもあり、実務経験があるか、何か1つでも資格を持っていれば転職しやすい業界でもあります。
長期的な視点で見ると、安定した業界であるのは間違いないと言えるでしょう。廃止されたホームヘルパー(1級・2級)の資格も、法改正後の同等資格である初任者研修に引き継がれるので、新たに資格を取得し直す必要もありません。
また、シフト勤務なども充実しているので、一度子育てなどで現場を離れた主婦などが復職するのにも有利な環境です。
先にご紹介した医療行為(たん吸引・経管栄養摂取)の一部が認められるようになったこともあり“介護士ができること”は今後も増えていく可能性があります。
責任の拡大を毛嫌いする人がいるのも事実ですが、社会からの要求に応えていくことにやりがいを見出すことができるのではないでしょうか。
作:大西 啓介(Live-up Works)
参考資料・文献
・『介護保険と社会福祉の制度』日本医療企画
・『福祉・介護の仕事&資格がわかる本』資格試験研究会編、実務教育出版
・ジョブカレッジ仙台HP(初任者研修について)
・介護のお仕事研究所(認定介護士について)
監修者コメント
介護を必要としている人は今後も増加傾向が想定されるため、介護職の需要は引き続き高く、安定している業種といえるでしょう。介護職は年収が低いというイメージがあるかもしれませんが、2019年10月には、勤続10年以上の介護福祉士の給与を8万円増加する。または、年収440万円以上とするという処遇改善が行なわれるなど国のテコ入れが頻繁に行なわれています。
慢性的な人手不足の懸念から、待遇改善や賃金改善、そして柔軟な働き方についても絶えず検討が進められている分野でもあります。
また、介護職は初任者研修や実務者研修、介護福祉士のように資格、キャリアアップと共に業務の幅が広がっていくという面白さがあるため将来性がある業種と考えます。
この記事を監修した人
金子 賢司
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。