介護老人保健施設とは、自宅復帰を目指して、医療・介護・リハビリケアを提供する施設のことです。「老健(ろうけん)」とも呼ばれています。
要介護1の人から入所でき、介護依存度はそれほど高くありませんから、未経験の介護スタッフでもきちんと活躍できます。
転職の難易度も比較的低く、無資格でも働くことはできます。しかし、何らかの資格を保有しておいた方が転職に有利です。詳しく施設の特徴や転職について確認していきましょう。
目次
介護老人保健施設の特徴は?
介護老人保健施設は、特別養護老人ホーム・介護療養型医療施設(廃止が決定しており移行期間は2024年3月末まで)と同様、施設に入居してサービスを受ける「施設介護サービス」として扱われます。
病院で入院して治療を行わなくても良い状態には回復できていても、退院してすぐ自宅で生活するには不安があったり、自宅の受け入れ態勢がまだ整っていなかったりする場合があります。そのような方が自宅で生活できるようになるまでリハビリを行う場所が「介護老人保健施設」です。
介護老人保健施設は在宅復帰を目指す施設なので、入所期間は3か月から半年という前提になっています。
しかし、一定の期間が過ぎてしまうと必ず退所しなくてはならないということはありません。利用者の大半が一年ほど入所して、退所していく傾向にあるようです。
特別養護老人ホームとの違い
介護老人保健施設はよく特別養護老人ホームと比較されますが、どちらも公的な施設であるため、料金は民間の有料老人ホームなどに比べ安価になっているのは同じです。
大きな違いは、特別養護老人ホームが終の棲家としての側面を持っているのに対し、介護老人保健施設は自宅に帰るための訓練の場ということでしょう。介護老人保健施設は、医療体制が整っているため、病気を持っている方には心強い施設です。
介護老人保健施設(老健)と特別養護老人ホーム(特養)の違いをさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
介護老人保健施設で働くメリット
介護老人保健施設で働くメリットは下記のとおりです。
元気に退所していく利用者を見ることができる
介護老人保健施設の利用者様は、在宅復帰を目指しているので、心身の機能回復に向けたサポートを受けて、いずれは元気に自宅へお帰りになります。
基本的に介護の施設では、どんどん弱っていく利用者を見なくてはならないことが多いです。しかし、介護老人保健施設では、リハビリや自分たちの生活支援の結果、入所したときよりも元気な姿で退所していく高齢者を見ることができます。
退所していくときに「ここの施設のおかげで元気になれました」といったお礼をいってもらえることも多く、やりがいを感じられるでしょう。
医療やリハビリ専門スタッフと連携するので、他の施設と違った経験が積める
介護老人保健施設では、他の高齢者施設よりもリハビリ職の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのスタッフや、医療ケアを行う医師や看護師の在籍が多いです。
そのため、何か非常事態が起きたときでも、介護以外の分野の専門スタッフの助けを借りながら問題解決をすることができます。また、他分野の専門スタッフと協力することで自身の知識を深め、介護士として成長していくこともできるメリットがあります。
さまざまな入居者との出会いがあり勉強になる
介護老人保健施設は、一年ほどでほとんどの利用者が退所していきます。同じ人を長時間介護するということがなく、新しい入居者との出会いが多い環境です。
ですので、マンネリすることなく、常に新鮮さを感じつつ仕事に取り組めます。さらに、新しい利用者の中には、これまでは見てこなかったような症状の方がいるかもしれません。
常に新しい利用者や症例との出会いに満ちていて、勉強になるというメリットがあるのです。
介護老人保健施設で働くことの大変さ
介護老人保健施設で働く大変さは、医療寄りのサービスになりやすいという点にあります。
医療やリハビリ職のスタッフ比率が高いため、介護よりも医療を重視した施設が多く、施設の方針や他のスタッフの介護認識に戸惑うことも多いようです。
レクリエーションといった介護ならではの業務の実施が少ない施設も多くあり、どのように自分の介護スキルを発揮していけばいいのかを考えなくてはならない大変さもあります。
事前に施設の雰囲気を確認し、介護スタッフを軽視する医療スタッフはいないかといったことを見ておくと、大変さは軽減されるでしょう。
介護老人保健施設で働くには資格が必要?
介護老人保健施設で働きたいと思っている方は、多いのではないでしょうか。
介護老人保健施設の介護スタッフは、無資格でも働くことができます。
ただ、介護老人保健施設の介護職の求人では、応募条件として「何らかの介護の資格を保有していること」とされていることが多いです。就職・転職にも有利になりますので、以下の資格取得を目指すと良いでしょう。
- 介護職員初任者研修
- 実務者研修
- 介護福祉士
それぞれの資格について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
介護老人保健施設の転職先・求人情報
介護老人保健施設の実際の求人情報をみてみましょう。
(※2020/09現在の情報です。情報は変わる可能性があります。)
定着率高めな介護老人保健施設の介護職員・ホームヘルパー求人
正社員の求人です。食事・排泄・入浴などの生活介助、移乗・歩行時などの介入および介助など、介護老人保健施設でのケア業務全般が主なお仕事内容です。
給与・賞与・手当
月給は21.2万円~。賞与は4.5か月分で充実感があります。夜勤手当等の各種手当てもしっかりつきます。
託児所完備が嬉しい。介護老人保健施設の介護職員・ホームヘルパー求人
正社員の求人です。経験豊富な社員と一緒に働けるので、知識・スキルアップも目指せます。
生活介助や、レクリエーションの手伝い、夜間の巡回、見守りがお仕事内容です。
給与
月給は20万円~になります。
介護老人保健施設に転職するのは難しい?
介護老人保健施設は、需要が増していっている施設です。新しく施設ができることもありますから、求人は一定数存在しています。ですので、転職難易度は低いといえるでしょう。
ただし、先述通り、介護老人保健施設は応募条件として「介護の資格を保有していること」としている場合が多いです。介護老人保健施設には、介護依存度が高い利用者はいませんから、まずは初任者研修の資格を保有しておくと良いでしょう。
おわりに:他分野と協力して介護をしたいなら、介護老人保健施設はおすすめ
需要や人口トレンドなどの要因により、介護の仕事が求められる施設は大きく増加しました。しかし、医療と介護がタッグを組んで利用者をサポートしている施設は多くはありません。
その中で介護老人保健施設では、利用者が自宅に帰っても安心し過ごせるよう、医療・介護・リハビリ・その他のスタッフすべてがサポートしあっています。専門性が高く質の良いサービスが提供していることで、仕事へのモチベーションも高まるのではないでしょうか。
介護の仕事をしてみたいと思っている方は、資格を取ったり、保有している資格を有効活用したりして、介護老人保健施設で働いてみることも検討してみてください。