少子高齢化が進む現代社会において、慢性的な介護人材不足は大きな問題です。最近の介護求人広告には「未経験者歓迎」を謳っている事業所も目にしますが、資格保有者で未経験者なのか、無資格で未経験者なのかで転職の有利さや給与に差がでます。
実際のところ、資格が無くても介護施設で働くことは可能ですが、できれば働きながらでも資格を取得することをオススメします。資格取得の支援を行なっている介護事業所や求人サイト・転職エージェントなど転職サービスもあり、働きながら資格を取得することもできます。
資格取得の流れとしては、まずは介護の資格の最初のステップ「介護職員初任者研修」の取得を目指します。次に国家資格の介護福祉士を取得するために必要な資格である「実務者研修」の取得を目指ざす流れがオススメです。
この記事では、無資格から介護職として働きたい方が資格取得を目指す方法、すでに初任者研修を取得している方の次のステップとなる資格を取得する方法について解説します。
介護職で働くために取っておきたい資格
介護職として働くうえで取っておきたい資格が2つあります。
無資格者の場合、利用者の身体に直接触れることがない掃除や洗濯などの生活援助サービスや、有資格者のサポート業務などに仕事範囲が限定されてしまいます。入浴や排泄、車いすやベッドへの移乗など、利用者の身体に直接触れる介助を行なう際には、最低でも介護職員初任者研修の資格を持っている必要があります。
それでは2つの資格について詳しく解説します。
介護職員初任者研修
2013年よりヘルパー2級は介護職員初任者研修に名称が変更されました。介護職員初任者研修とは介護の基本をひと通り学ぶいわば介護の入門資格であり、利用者の身体に直接触れる身体介護を行なうために必須の資格です。
介護職員初任者研修を取得することで一人前の介護職として認識されるため、介護職を目指す方には介護職員初任者研修の修了が最初のステップとなります。
- 49,500円の講座受講料が0円。
働きながら受講できます
- 資格支援制度を利用したい方へまずは無料で相談する
介護福祉士
介護福祉士は、介護職員初任研修の上級資格で国家資格です。介護福祉士資格を取っておくと、職員と事業者の双方にメリットがあります。
職員側のメリットは資格手当を得ることで給与アップにつながることや、サービス提供責任者になってキャリアアップを図ることが挙げられます。就職や転職する場合にも有利になります。
事業者側のメリットは質の高い介護サービスを提供することができ、訪問介護に関しては全体の30%の介護福祉士を雇用することで特定事業所加算(I)(※)が得られることです。
(※)特定事業所加算=事業所における評価制度で、要件を満たしていれば手当がもらえる制度。
参考資料はこちら
介護職員初任者研修を取得する方法
介護職員初任者研修は、介護資格取得スクールが開催している講座を受講して取得します。スクールに入会するための資格は特にありません。
介護職員初任者研修講座は、40時間の通信学習と90時間の通学学習を合わせた130時間で構成されています。つまり、自宅学習だけは資格取得ができないことを意味します。取得期間はスクールのコースによって増減しますが、週に2回通えば約2ヵ月で修了することができます。
介護職員初任者研修のカリキュラムは以下の通りです。
研修科目 |
研修時間(単位:時間) |
職務の理解 |
6 |
介護における尊厳の保持・自立支援 |
9 |
介護の基本 |
6 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 |
9 |
介護におけるコミュニケーション技術 |
6 |
老化の理解 |
6 |
認知症の理解 |
6 |
障害の理解 |
3 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 |
75 |
振り返り |
4 |
合計 |
130 |
出典:
(改正後全文)介護員養成研修の取扱細則について(平成24年3月28日老振発0328第9号)
現在の介護職員初任者研修は筆記試験があり、資格取得には試験に合格する必要があります。詳細は下記をご覧ください。
介護職員初任者研修とは?介護職転職にどう役立つ?条件や取得のメリットや求人情報を紹介
無資格で、働きながら介護職員初任者研修を取得するには?
働きながら介護職員初任者研修を取得する際の方法は2つあります。
資格取得支援に積極的な事業所を選ぶ
人員不足で自由に休みが取れなかったり、受講料が自己負担の事業所を選ぶと資格取得に要する時間も費用も増えてしまいます。
資格取得後に継続して勤務することを条件に受講料を負担してくれる事業所もありますので、資格取得支援制度の有無は事前に確認しておきましょう。
なお、事業所選びには事業所のホームページや口コミを参照するほか、転職サービスに相談するという方法が効率的です。
求人サイトや転職エージェントなど転職サービスの資格取得支援制度を利用する
資格取得支援制度を行なっている転職サービスもあります。転職サービスが提携または運営しているスクールで受講料を自己負担することなく、資格を取得できます。資格取得支援を受けながら転職相談もできますので、効率よく転職活動を進めることができます。資格取得を考えるなら、スタートを早く切るに越したことはありません。
なお、介護職員初任者研修の場合、途中で退職することがなければ、半年間お金をもらいながら資格取得を目指すことができます。
無資格者は資格所持者と比べて、給与が抑えられてしまいます。資格取得支援制度を利用することで、経済的・精神的に安心して働くことができるでしょう。
ウィルオブ介護でも資格取得支援制度があるので、気になる方は資料請求からはじめてみましょう。
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働きながら受講できます
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介護福祉士を取得する方法
介護福祉士資格を取得するためのルートは3つあります。(※日本で働く外国人向けのEPAルートは除きます)ルートについては後述しますので、まず大まかな流れを解説します。
- スクールが開催する実務者研修講座を受講します。
- 受験を申し込みます(※実務経験3年以上且つ実務者研修修了が条件)
- 年に1度実施される筆記試験を受験します。
- 筆記試験合格後、資格登録の手続きを行います。
介護福祉士を取得するには実務者研修が必要
前述のとおり、実務経験ルートで資格取得するには実務者研修の修了が必須です。実務者研修を受けるための条件は特にありません。
実務者研修を取得する方法
実務者研修を取得するには、介護職員初任者研修と同様にスクールで開催している講座に申し込みます。実務者研修も自宅学習だけでなく、通学が必要です。
資格支援制度のある事業所であればベストですが、転職サービスの資格取得支援制度を利用する方法もあります。
補足事項として、受講料を安く抑えることができる制度を紹介します。
- 一般教育訓練給付制度
- 専門実践訓練給付制度
- 母子(父子)家庭自立支援給付金
- 実務者研修受講資金貸付制度
介護福祉士の取得方法は3つ
介護福祉士の取得方法として、下記の3つのルートがあります。
養成施設ルート
養成施設ルートには2つのパターンがあります。
①高校を卒業後、国が指定した介護福祉士養成施設に2年以上通う。
②高校を卒業後、福祉系大学や社会福祉士養成施設、保育士養成施設を卒業後、介護福祉士養成施設に1年以上通う。
(※いずれのパターンも実務者研修・実技試験は免除されます)
福祉系高校ルート
転職活動中の方には当てはまりませんが、福祉系高校を卒業後に介護福祉士を目指すには3つのパターンがあります。
①平成21年度以降に福祉系高校に入学、新カリキュラムを履修して卒業している
②平成21年度以降に特例高校に入学、卒業後に9か月以上の実務経験がある
且つ筆記試験前に介護技術講習を履修するか筆記試験後に実技試験を受験する
③平成20年度以前に福祉系高校に入学し、旧カリキュラムを履修して卒業している
且つ筆記試験前に介護技術講習を履修するか筆記試験後に実技試験を受験する
実務経験ルート
実務経験ルートは下記の条件を満たすことで受験資格が得られます。
- 実務経験が3年以上ある(1,095日以上、実働日数540日以上)
- 実務者研修を修了している
学生か社会人かの立場によってルートは分かれますが、いずれのルートも筆記試験を受ける点は共通です。
なお、実務者研修は介護職員初任者研修と比較すると、研修科目も増える上に医療的ケアも含まれるため、総研修時間は450時間に及びます。
実務者研修を修了すると、サービス提供責任者になることができます。事業所によって資格手当を支給される場合もあります。介護職としてキャリアアップを目指すには持っておきたい資格といえるでしょう。
実務者研修のカリキュラムは下記の通りです。
教育内容 |
研修科目 |
研修時間(単位:時間) |
人間と社会 |
40 |
内訳 |
人間の尊厳と自立 |
5 |
社会の理解I |
5 |
社会の理解Ⅱ |
30 |
介護 |
190 |
内訳 |
介護の基本Ⅰ |
10 |
介護の基本Ⅱ |
20 |
コミュニケーション技術Ⅰ |
20 |
生活支援技術Ⅰ |
20 |
生活支援技術Ⅱ |
30 |
介護過程Ⅰ |
20 |
介護過程Ⅱ |
25 |
介護過程Ⅲ(スクーリング) |
45 |
こころとからだのしくみ |
170 |
内訳 |
発達と老化の理解Ⅰ |
10 |
発達と老化の理解Ⅱ |
20 |
認知症の理解Ⅰ |
10 |
認知症の理解Ⅱ |
20 |
障害の理解Ⅰ |
10 |
障害の理解Ⅱ |
20 |
こころとからだのしくみⅠ |
20 |
こころとからだのしくみⅡ |
60 |
医療的ケア(スクーリング) |
50 |
合計 |
450 |
出典:
参考資料)介護福祉士の養成カリキュラムについて
なお、介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)の修了者は130時間、介護職員基礎研修の修了者は400時間の研修が免除されます。
詳細につきましては以下のサイトをご参照ください。
介護福祉士実務者研修とは?介護職転職にどう役立つ?条件や取得のメリット、求人情報も調査しました
実務者研修を取得できたら国家試験を受験
3年以上の実務経験と実務者研修の修了で介護福祉士試験の受験資格を満たします。必要な実務経験年数が複数の施設にわたる場合は、以前の職場から実務経験証明書を早めに取り寄せておきましょう。
なお、受験申し込みは公益財団法人 社会福祉振興・試験センターで8月頃から始まりますので、忘れずに手続きを行ってください。
おわりに:介護職で働くならまずは2つの資格取得を目指そう
福祉の世界で働くことを目標にしていた学生を除けば、今はベテランの介護職も未経験で介護の資格を持たない時期を経験しています。
「資格がすべてではない」というのは、基礎知識があって現場経験を積んだ人だからこそ言える言葉です。
実際には介護職員初任者研修を受けなくても実務者研修を取得することは可能です。しかし、基礎知識が無い状態で上位資格を受けても理解度や定着度に差があることは明らかです。
そういった意味で介護職員初任者研修を修了して基礎固めをした後、介護福祉士の取得を目指されることを強くオススメします。
資格取得の際には、資格取得支援制度を利用できる転職サービスや事業所もありますので、上手に利用しながら負担なく資格取得を目指しましょう。
- 49,500円の講座受講料が0円。
働きながら受講できます
- 資格支援制度を利用したい方へまずは無料で相談する
監修者コメント
介護職として長く働きたいという方は是非積極的な資格取得をオススメします。介護職の資格は顧客や一緒に働く同僚からの信頼や評価にも繋がります。また転職支援サイトや施設によっては資格取得へのサポートに力を入れているところもありますので、是非利用することをオススメします。資格取得には研修を受けたり勉強をする必要がありますが、その経験は必ず現場で役に立ちますよ。
この記事を書いた人
深井 竜次
1993年生まれ。たんたんの名で活動する介護士ブロガー。保育士から介護士に転職した、島根県在住の現役介護士。介護職の正規雇用の給料や勤務形態に疑問を持ち、派遣社員の道を選択。派遣の仕組みを有効活用しながら労働時間を減らし、介護職専門のブログサイトを立ち上げる。アフィリエイトブログを始めて約1年後にブログ収入100万円を突破。介護の現場に立ち続けながら、介護職のリアルな悩みや問題を合理的に解決へ導くブログを日々更新。その働き方や生き方が多くのWEBメディアに取り上げられ、話題となる。2020年2月に著書月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方を出版。著書:
月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方
Twitterアカウント:
@tantan4423
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