介護保険サービスの要とも称される介護支援専門員(=以下、ケアマネジャーとする)。「マネジャー」の響き通り、介護保険サービスをマネジメント・コーディネートする重要な役割を担っています。人の生死にも深く関わる介護業界において特に責任重大な立場であることから、当然簡単にはこの職に就くことはできません。それだけに、将来の目標として掲げている介護士も多いのではないでしょうか?
この記事では、ケアマネジャーの仕事内容ややりがい、向き/不向きなどについて詳しく紹介します。千里の道も一歩から、まずはケアマネジャーへの理解を深めましょう。
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■ケアマネジャーとは?
ケアマネジャーとは、2000年に誕生した介護業界の民間資格であり、その資格保有者のことを指します。一般的には「ケアマネ」とも呼ばれます。
ケアマネジャーは、介護保険法において、以下のとおり規定されています。
この法律において「介護支援専門員」とは、要介護者又は要支援者(以下「要介護者等」という。)からの相談に応じ、及び要介護者等がその心身の状況等に応じ適切な居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービス、介護予防サービス若しくは地域密着型介護予防サービス又は特定介護予防・日常生活支援総合事業(第百十五条の四十五第一項第一号イに規定する第一号訪問事業、同号ロに規定する第一号通所事業又は同号ハに規定する第一号生活支援事業をいう。以下同じ。)を利用できるよう市町村、居宅サービス事業を行う者、地域密着型サービス事業を行う者、介護保険施設、介護予防サービス事業を行う者、地域密着型介護予防サービス事業を行う者、特定介護予防・日常生活支援総合事業を行う者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとして第六十九条の七第一項の介護支援専門員証の交付を受けたものをいう。(※括弧内の条項は省略)
引用元:○介護保険法
つまり、ケアマネジャーは、要介護・要支援の状態にある高齢者の相談援助を通して、専門知識や技術を駆使しながら、関係施設や関係機関などと連携を図り、心身の状況に応じた介護サービス等を調整する専門職ということになります。
ひとえにケアマネジャーといっても、施設サービス事業所で働く「施設ケアマネ」、居宅介護支援事業所で働く「居宅ケアマネ」と2通りの働き方があります。
施設ケアマネと居宅ケアマネの仕事内容の違いはこちらの記事で詳しく解説しています。
ケアマネジャーとは、
- 一般的な呼称は「ケアマネ」
- 介護支援専門員の資格保持者のこと
- 施設ケアマネと居宅ケアマネがある
- 資格を有し5年ごとに更新研修を受講していればパートや派遣でもケアマネとして働ける
- ブランクは関係なし(※更新期間切れの方は、再度研修を受けることが条件です)
- 相談援助が中心であり、身体介護などの業務とは異なる
- ルーティンワークも多いことから計画的に仕事を進められる方に向いています
- コミュニケーション能力が高く、聴き上手な方に向いています
目次
ケアマネジャーの主な仕事内容
ケアマネの仕事内容は多岐に渡り、さらに施設ケアマネと居宅ケアマネでも異なってきますが、ケアプラン作成などの主要な業務ややりがい、大変なところなど根本的な部分は共通しています。ここでは、主に共通する部分をメインに解説します。
ケアマネの仕事は、「要介護認定に関連する仕事」と「介護支援サービスに関連する仕事」の2つに大きく分けられます。
要介護認定に関連する仕事
- 介護保険サービスを希望する方の認定調査や必要なサービスを調査すること
- 行政の窓口に対して、要介護認定の申請、更新を本人あるいは本人の家族に代わって行うこと
などが挙げられます。
介護支援サービスに関連する仕事
- 介護サービスの適切な利用のため、利用者様やその家族に対して意向を伺い情報収集・課題分析(アセスメント)を行い、生活課題(ニーズ)を明らかにすること
- 利用者様のニーズをもとに適切な介護サービス計画(ケアプラン)の原案を作成し、利用者・家族へ説明と同意を得るなどをしています
- 居宅ケアマネは、利用者様の目的に合ったサービスや事業所を提案・紹介すること(橋渡し役)
- 支給限度額の確認や利用者負担額など介護報酬を計算し、国保連(保険者)に請求業務を立てるなど給付管理を行います
以上が、ケアマネジャーのおおまかな仕事内容となります。
介護支援専門員(ケアマネジャー)の転職先・求人情報
ケアマネが活躍できる、実際の求人例をみてみましょう。
(※2021/9現在の情報です。情報は変わる可能性があります。)
大手法人グループが運営。教育制度充実のケアマネージャー求人
ケアマネージャーの正社員求人です。
利用者さまへの介護サービスを提供するお仕事です。身体介護や掃除洗濯などの日常生活サポートを行います。
教育制度が充実しているのでキャリアアップもできます。
月給は21.7万円~。介護福祉士手当(有資格者)もあります。
グループホームのケアマネージャー求人
グループホームのケアマネージャーのパート求人です。
ケアプランの作成や、利用者や家族からの相談対応、関係機関との調整などのお仕事です。
時給は1,450円~。一日4時間程度の勤務なので、家事との両立も◎
ケアマネジャーの一日の流れ
ここでは、日勤の仕事がメインの居宅ケアマネを例にとって、1日の代表的な流れを紹介します。
9:00 事業所に出社
9:30 書類の準備、申し送り簿の確認など
10:30 利用者様の自宅へ訪問(×2):状態やサービス内容の確認など
13:00 帰所・休憩
14:00 サービス担当者会議:各介護機関の担当者と介護サービスなどを打ち合わせする
15:30 ケアプランなどの書類作成
18:00 退社
ケアマネジャーの仕事のやりがい
自分が作成したケアプランによって利用者様の心身に回復・改善が見られた時は、大きなやりがいを感じることでしょう。ご家族の方から感謝の言葉をかけられる機会が多いのもやりがいにつながります。
また、要介護の利用者様と一口に言っても、その症例は十人十色。さまざまな症例に対応しなくてはならないため、仕事を通じて最先端の介護知識はもちろん、高齢者に特有な疾病や身体機能などの医療知識も学ぶことができます。それにより、自分の成長を身をもって感じられる、というのもケアマネならではの醍醐味。年齢に関係なく、キャリアを積めば積むほど評価されるというのも他業界ではなかなかないですよね?
ケアマネジャーの仕事の大変なところ
常に複数の業務を同時進行しなくてはならないので、多くの時間を業務に割かなければならないことが多い。また利用者のご家族との面会の際には、先方が帰宅後となる19時過ぎの訪問など残業することもあるかもしれません。
また、施設ケアマネにおいては、本業のケアマネ業務以外に介護業務なども兼任することが多く、介護の「何でも屋」的な存在として扱われてしまうことも…。もちろん本業であるケアマネの業務に手を抜くことは許されないし、日々葛藤を抱き離職してしまうケアマネも少なくないようです。
ケアマネジャーが活躍できる職場
ケアマネジャーの職場は、「「介護施設」(特別養護老人ホームや老人保健施設)」と「居宅介護支援事業所」の2通りあるというのは前述の通りです。さらに「認知症対応型共同生活介護」(認知症グループホーム)や「地域包括支援センター」もケアマネジャーが活躍する舞台のひとつです。それぞれを詳しく解説します。
活躍できるのはこんな職場があります
ケアマネが働く代表的な職場は、下記の3箇所になります。
①介護施設(施設ケアマネ)
特別養護老人ホームや老人保健施設、有料老人ホームなどに施設ケアマネが配置されています。このほか、厳密に定義すると「施設」に配置づけられてはいませんが、認知症グループホームにも計画作成担当ケアマネジャーが必置となっています。
施設内のサービスから組み合わせてケアプラン作成するため、施設内の他のスタッフとの連携が求められます。
また、大規模施設の場合は100名ほどの利用者さんを担当することもあるため、膨大な書類を効率的に処理するスキルが必要です。
②居宅介護支援事業所(居宅ケアマネ)
居宅介護支援事業所は、居宅ケアマネのみが配置されており、ケアプラン作成などのデスクワークを行っています。
ただし、居宅ケアマネが1名につき担当できる人数は、35名までです。老人ホームが100人近い定員を抱えるのに対し、居宅ケアマネはサービスの質を担保するため少人数制になっています。
ですので、居宅ケアマネは打ち合わせやケアプラン作成の時間が多く取れるので、利用者一人ひとりとしっかりと対話して向き合うことができます。利用者宅へ訪問してじっくりと話を聞きながら、ケアプランを提案します。その際に、利用者や家族の方が、介護にどのような不安を抱えていて、どんなサービスを受けたいと考えているのか、といったことに関する相談にも乗ります。
さらには、ケアプランに基づいて、必要な福祉用具を選定し、住宅に段差などの段差など
があれば要介護状態であっても生活しやすいように住宅改修を提案します。介護サービスを提供する事業者と連携を図りながら、利用者が過ごしやすい介護環境を作成できるように調整をしていきます。
③地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、市区町村もしくは市区町村から委託を受けた社会福祉法人や医療法人などが運営する“よろず介護相談所”のような施設です。
地域包括支援センターには、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)の3職種が配置されている、それぞれの専門職が持ち味を生かした多面的な支援を行っています。
ケアマネジャーは、地域の高齢者から相談を受け付けて、問題を解決するための情報を個々人に提供したり、根源的な問題を解決するための課題を見つけて、課題を解決するために、「地域ケア会議」を主催し地域の関係者・関係機関と連携を図っています。
また、地域住民が要介護となるのを予防するために、介護予防教室や講演会を企画したりもします。高齢者が地域社会において、その人らしい暮らしをしていけるように援助をしていくのが業務になるのです。
パートや派遣でもケアマネジャーになれる?
ケアマネジャーとして働くためには、そしてケアマネとして働き続けるためには、並々ならぬ努力と年月が必要なことは理解していただけたと思います。当然正社員しか通用しないと思いきや、パートや派遣という立場でも「条件さえ満たせば」ケアマネジャーの仕事に就くことは可能です。
もちろん、待遇などは正社員よりもダウンしますが、正社員であれば避けては通れない残業なども極力スルーできるし、家庭の事情に合わせて勤務日数や勤務時間を選択することも可能です。
未経験からケアマネジャーになれる?
まったくの未経験の方が突然ケアマネジャーになることはできません。ケアマネジャーになるためには、まず介護福祉士や社会福祉士、看護師など基礎資格を有し、最低5年以上かつ通算900日以上の実務経験を持ち、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格することが必要です。
もちろん、資格ということばかりではなく、利用者のケアプランを作成しサービスを調整するためにはそれに見合う専門知識も必要です。
なお、「900日以上」に関しては、パートや派遣でもカウントされ、勤務形態も問われません。
ケアマネジャーとして働くメリットとデメリット
責任感は重大だけど、大きなやりがいがあるケアマネジャー。もちろんメリットもデメリットもあります。
ケアマネジャーのメリット
主な業務は事務作業で身体的な負担が少ないため、介護職の職業病でもある腰痛を発症するリスクが少なく、年齢を重ねても長く働くことが可能です。また、介護職員との兼務でなければ夜勤も発生しないので、生活リズムを損なうこともなく、ワークライフバランスを保つことができます。さらに、資格手当が加算されるため、給与水準がほかの介護職よりも高い水準であることもメリットのひとつです。
そのほか、需要が多い専門職のため、転職する際に選択肢が多いことも大きなメリットでしょう。ケアマネジャーは、法令で介護施設に必ず配置することになっているため求人数も多く、介護施設など雇用主からも求められることが多い人気の高い資格です。
ケアマネのデメリット
前述の通り、資格を5年ごとに更新しなくてはならないため、更新の際には研修と費用が必要なことがひとつ目。次に、業務時間外でも呼び出しがかかれば対応する必要があるということです。
特に施設ケアマネの場合は、施設によっては夜勤があったり、介護や介助の手伝いをしたりすることもあるので、デメリットを感じやすいかもしれません。また、「1人ケアマネ」の場合も多く、相談できる相手がいないことも不安だし心配です。
覚えておこう!ケアマネジャーの要件・資格
ケアマネとして働くためには、①「介護支援専門員実務研修受講試験」を受験し、②合格した後に「介護支援専門員実務研修」を受講し、③さらに受講後に都道府県に登録申請し、④「介護支援専門員証」(=介護支援専門員の資格)を交付される必要があります。
しかも、①の「介護支援専門員実務研修受講試験」を受験するためにも、0(○の中に0)一定の職種における実務経験、もしくは資格が必要となります。つまり、ステップだけでも0~5の5段階踏まなければ、ケアマネとして働くことは不可能なのです。
さらに、介護支援専門員証の有効期間は5年間とされており、更新を忘れると合格した資格自体はなくなりませんが、介護支援専門員証が失効されてしまうため、更新研修を修了するまで、ケアマネジャーとしての業務を行うことができなくなってしまいます。
働くための資格を取得するのも大変なら、維持し続けるのも大変。それがケアマネとして働くことの現実です。
なお、2020(令和2)年度の試験の合格率は、17.7%と例年並みかやや減少しています。
試験の勉強法はひとぞれぞれですが、過去問などを利用して独学で進める方法と、受験対策講座(通信・通学)を受講する方法が一般的です。かかる費用は「独学<通信講座<通学講座」となっています。
試験の合格基準は、試験内容の難易度により調整されています。「介護支援分野」が25問、「保健医療福祉サービス分野」が35問の全60問が出題され、各分野で正答率70%以上が合格ラインです。なかなか高いハードルですね。
介護支援専門員実務研修をこれから取得する方は、事前に資格内容などを確認しておくことをおすすめします。
こちらの記事で詳しく紹介しています。
ケアマネに向いているのはどんな人?
一度に複数の業務を抱えるため、効率良く物事を進めるための工夫ができる方がケアマネジャーに向いています。また、さまざまな方とコミュニケーションを取る必要があるので、人と関わるのが好きという性格の方が適しています。
逆に向いていないのは、思い込みが激しく、人の話を聞けない方です。ケアマネジャーの仕事は客観性が命。誤った認識で突き進むと、ケアプランが適切でなかったりして大きな事故につながることもあります。デスクワークが中心なので、デスクワークよりも体を動かす方が好き、という方もケアマネジャーには向きません。
今後も介護職を継続するのなら、ケアマネ取得を視野に入れて
無資格・未経験であれば、ケアマネの資格を取得するためには最低でも8年かかると言われています。しかも試験の難易度も高く、資格取得は夢のまた夢のようなイメージがあると思います。
それでも高齢化社会が進む日本においては、ますますケアマネの需要が増していくことは間違いないし、資格取得は介護職のステップアップとしてもとても有効です。今後も介護職を続けていくつもりであれば、将来の資格取得を意識しながら働いてみてはいかがでしょうか。目標を持つことで、ますます仕事に張り合いも生まれますよ。
監修者コメント
介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格や仕事内容などに触れてきましたが、いかがだったでしょうか。ケアマネジャーの「基礎資格」についても触れましたが、どのような有資格者がケアマネジャーになられているかというと、例えば医師、歯科医師、介護福祉士、社会福祉士、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士・・・などです。同じケアマネジャーといえども、それぞれの専門性があるので医療面に強いケアマネジャーや生活介護面に強いケアマネジャーなど皆、個性的なケアマネジャーが多く存在しています。皆さまも将来にわたるキャリアデザインの目標資格として是非検討してみて頂きたいと思います。
この記事を監修した人
梅沢 佳裕
東北福祉大学社会福祉学部、日本福祉大学大学院社会福祉学専攻修了、社会福祉学修士。
介護専門学校の助教員を経て、特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター相談員を歴任する。その後、デイサービスやグループホームの立上げに関わり、自らも管理者となる。2008年に「福祉と介護研究所(個人事業)」を設立。2017年より社名を「福祉と介護研究会35」へと変更し、介護士・相談員・ケアマネジャーなど実務者へのスキルアップ研修を行うが2019年12月に閉鎖。2018年4月から日本福祉大学 助教。2019年4月から健康科学大学 准教授(現在)。
社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター2級
【著書】
「特養・デイサービスの生活相談員 仕事ハンドブック」(中央法規),「施設職員のための介護記録の書き方」(雲母書房),「生活相談員~その役割と仕事力」(雲母書房),「生活リハビリ式記録のススメ」(筒井書房),「よくわかる通所介護計画のつくりかた」(雲母書房)
【雑誌連載】
「支援・生活相談員」 季刊誌(日総研出版),「おはよう21」月刊誌(中央法規出版),「倫理的側面から見直す 不適切記録・記載表現」(日総研出版)など多数.
【監修】
「ポケット版 介護なんでも事典」(主婦の友社),「そのまま使える!介護記録の書き方&文例集」(西東社)