介護士が活躍する機会が多いことや、超高齢化社会の到来によって今後も介護士の活躍が期待される可能性は高いといえます。

しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響で感染リスクの高い介護業界においては、離職率が高くなったことから人手不足がますます深刻化しています。

売り手市場の今だからこそ、慎重に確実に転職を成功させたいものです。

今回は、介護士の転職先として人気の特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設(老健)、双方の特徴や働くメリット・デメリットなどを比較していきます。

特養や老健など施設で仕事を探すのもおすすめ

人気がある転職先であるため、似ているのであればどちらでも良いと考える方はいますが、実際には目的や入所条件などが違っていて働き始めると思っていた働き方とのズレが出る可能性もあります。

どちらが自分に合うかで転職先を決めたい方は、介護業界に特化したウィルオブ介護に相談してみませんか?一人ひとりの希望条件に合わせた施設や働き方の提案も行っているので、安心して転職活動ができますよ。

特別養護老人ホーム(特養)とは?

特別養護老人ホーム(特養)は、社会福祉法人や地方自治体が運営する公的な入居型介護保険施設です。

多床室が主流の従来型と個室もしくは準個室のユニット型があり、2002年にユニット型が制度化されて以降ユニット型がスタンダードになりつつあります。

特別養護老人ホーム(特養)とは、

  • 公的な入居型介護保険施設
  • ユニット型がスタンダード
  • 費用が安い
  • 介護士は利用者の終末ケアや看取りも行う
  • 月給ではどの施設(形態)よりも高い

施設の特徴

主な入居対象は65歳以上かつ要介護3以上で、在宅での生活が困難な高齢者となっているのが特徴です。

終身介護サービスを提供することから、利用者にとっては終の棲家ともなります。

公的施設のため比較的費用が安く、地域によっては入居待ちということもあります。

数人で相部屋を使用する従来型は食堂やリビングなどの共用部分においても大人数で使用する一方、個室のユニット型は共有部分も最大10人のユニットで使用します。

ユニット型の方が個人のプライバシーを確保できるとともに、限られたメンバーやスタッフと家族感覚で過ごすことができるのが特徴です。

主な仕事内容

身体介助(歩行・食事・入浴・排泄など)を中心に、生活支援、健康管理、緊急時の対応、レクリエーション・イベントの企画などを行います。

もっとも大きな特徴は、利用者の終末ケアや看取りも行うことです。

従来型とユニット型で異なるのは、従来型が大勢の利用者を大勢のスタッフでケアすることに対して、ユニット型はユニット内のメンバー(利用者)を限られたスタッフでケアすることです。

そのため後者は一人ひとりの状態把握もしやすく、きめ細かいサポートが可能です。ただし、介護職員1人当たりの負担は前者よりも大きくなります。

平均給与

厚生労働省が発表した「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果(第82表)」によると、特養の常勤で働く介護職員の平均給与は34万5590円です。

月給ではどの施設(形態)よりも高い金額となっていますが、この背景には夜勤手当が大きく関係していると考えられます。

なお、従来型とユニット型で比較すると、従来型の方が手厚い賞与をもらうケースが多く年収は高い傾向にあるようです。

働きやすさと特養ならではの大変さ

働きやすい点のひとつに、日中は看護師が常駐しているため医療面であまり負荷がないことが挙げられます。

また、従来型の場合は、複数のスタッフでケアするため分からないことも聞きやすく助け合いながら業務を行うことができるので、未経験者でも安心して働くことができるでしょう。

一方で大変さは、介護度が高い利用者が多く身体介助がメインとなるため、身体への負担が大きいことです。

また、施設の特性上、夜勤が避けられないことも大変さにつながっているようです。

働くために必要な資格やスキル

特養で働くには基本的に資格不要ですが、介護度の高い利用者が多いので介護全般の知識や技術が必要とされます。

そのため、介護の基礎的なスキルを持っている証拠となる介護職員初任者研修や医療的ケアもできる人に与えられる実務者研修などの資格があるとよいでしょう。

さらに、国家資格の介護福祉士を持っていると、介護業務だけでなく現場のチームリーダーとして活躍可能です。

また、特養はケアする利用者の数が多く、夜勤もあるので体力スキルが必要になることをおさえておきましょう。

特養に向いている人

看取りの対応もあることから、何事にも動じない強さと優しさを持った方が望ましいです。

また、介護技術を磨きたい方、安定した収入を望む方、体力に自信がある方なども特養向きと言えます。

特養で働くメリット

公的施設のため倒産のリスクが低く、安心・安定して働ける点は大きなメリットです。

また、要介護度が高い利用者が多いので、おのずと介護技術が向上します。

その結果キャリアアップにもつながり、転職の際にも特養での就業経験は一目置かれることでしょう。

特養で働くデメリット

一方でデメリットは、看取りまで行うため、介護経験が浅い方は精神的な負担を強いられるかもしれないことです。

また、大規模な施設になるとどうしてもケアが機械的・画一的になってしまい、人によっては向上心がダウンしてしまうこともデメリットのひとつかもしれません。

特養で働く前に確認!施設の選び方

施設を選ぶ際には、自分がもっとも重視することは何かを明確にすることが大切です。

ひとくちに特養と言っても、施設によって特色がそれぞれ異なるためです。

  • 仕事は多少きつくても福利厚生や待遇に恵まれた施設で働きたい
  • 総合的な実務経験を積んで、スキルアップしたい
  • 実務経験が無いので経験豊富な先輩職員から基礎をしっかり教わりたい

施設の特色が異なるのと同様に、働く介護士の価値観や条件も人によって異なります。

最初に自分が何を重視するかを明確にしてから、通勤圏内で希望に合った施設を探すと良いでしょう。

施設が見つかったら面接で気になる点について質問すると、入社後にミスマッチが起こる確率を下げることができます。

誰しも入社してから「こんなはずじゃなかった」と後悔するのは避けたいですよね。

特養への転職のコツ

特養は、要介護度3以上の高齢者が入所している施設です。

看取りを行うこともある施設ですので、いずれの特養も介護技術が高い人を求めています。

この点をしっかりとおさえて、自分の介護スキルや実務経験をアピールしていくことが転職のコツとなるでしょう。

福祉施設での実務経験があるならば、自分がどのような業務に携わってきていて、職場にどの程度貢献をしたかなど、履歴書や面接でアピールするようにしましょう。

さらに、資格を保有していたり福祉の専門学校を卒業したりしているなら、そのことは必ず伝えるようにして、専門的知識を持っていることをアピールするのが大切です。

特養の転職のしやすさ

介護業界は、人手不足が深刻な業界で比較的就職しやすい業界とされていますが、特養は転職難易度が高めです。

特養の利用者の大半は要介護度3以上なので、介護スキルの高い人でなくては特養のスタッフはつとまりません。

面接官の質問内容が理解できず、とんちんかんな返答をしてしまうと、スキル不足とみなされて落ちてしまうケースも多いようです。

ある程度、スキルがなくては転職が難しい職場だといえるでしょう。

介護老人保健施設(老健)とは?

介護老人保健施設(老健)は、医療法人もしくは社会福祉法人が運営する入居型の介護施設です。

病院と自宅の中間的な施設として機能し、リハビリ等を通じて利用者様が在宅復帰することを目的としています。

また、特養と同様に従来型とユニット型があります。

介護老人保健施設(老健)とは、

  • 入居型の介護施設
  • 在宅復帰を目指す施設
  • 医療的ケアとリハビリがメイン
  • 元気な利用者様も多め
  • 介護士は身体的負担がかからない傾向

老健へ転職するためのコツ

老健の利用者が抱える病気や症状はさまざまです。しかし、その病気は回復が絶望的なものではありません。特養とは違って、看取りを行わずに在宅復帰を目指す施設です。

このような施設ですから、病を抱える高齢者を支えつつ、介護を学びたい姿勢をアピールするとスムーズに転職ができます。高齢者の介護を行いつつ、多くの介護ケアを学びたい、という姿勢を前面に出すようにしましょう。

さらに、老健は在宅復帰を目指す施設ですから、「在宅復帰を支える存在になりたい」という希望を伝えることも大切です。

逆に、「在宅復帰を支援することなく、長期間施設内で利用者と関わりたい」といったフレーズを言葉にすると、老健を理解していないと思われて不採用になる可能性もあるので注意しましょう。

老健の転職のしやすさ

老健は、在宅復帰を目指す利用者が入居する施設ですから、比較的元気な利用者も多くいます。寝たきりの利用者も少ないので、介護業界未経験でも活躍できます。転職の難易度自体は高いですが、ある意味転職しやすい施設といえるでしょう。

しかし、利用者の入れ替わりも多いです。一人の利用者にとことん向き合いたい人には不向きな部分もあります。

リハビリや機能回復、チームケアが大切な業務になるので、これらの業務に興味がない人には向きません。

老健で活躍するには向き不向きがあるので「協調性に欠けている」「在宅復帰に理解がない」などの傾向がある人は、なかなか採用されない可能性があります。

施設の特徴

在宅復帰を目指す施設のため、医療的ケアとリハビリがメインのサービス内容となっており、専用の人員体制や設備が整っているのが最大の特徴です。

老健では、利用者様1人につき週2回以上のリハビリを行うことが定められています。

長期に渡り居住させることを目的としていないことから、利用者の入所期間にも原則3カ月の制限があります。

そのため、特養の入居待ちのような事態はほとんどありません。

65歳以上であれば要介護度1から入所でき、元気な利用者も多めです。

主な仕事内容

利用者のリハビリに重点を置いた介護を中心に、身体介助や生活援助などを利用者本人の容態に合わせて行います。

要介護度が低い利用者が多いことから、特養よりも身体的負担はかからない傾向にあります。

なお、リハビリが主体のため、レクリエーションやイベントなどは必要最低限となっています。

平均給与

厚生労働省が発表している「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、常勤で働く老健の介護職員の平均給与は33万8390円となっています。

働くために必要な資格やスキル

老健も働くために必須の資格はありません。

しかし、特養と同様に介護職員初任者研修・実務者研修・介護福祉士の資格があると、介護職員としての仕事の幅が広がります。

さらに、介護サービスを計画するケアマネージャーや関係者との連絡や調整を行う社会福祉士の資格があると、支援相談員やケアマネージャー、管理者へのキャリアアップも目指すことができるようになりますので、取得を目指しましょう。

また、老健の入所者は原則3~6ヶ月程度の一定期間で退去することが前提なっているので、さまざまな人の特徴をつかんで対応する臨機応変さが必要になるといえそうです。

働きやすさと老健ならではの大変さ

医師や看護師など医療従事者の人員配置が手厚いため、安心して介護業務に取り組むことができ、緊急時もスムーズに対応できます。

また、利用者様の回復が前提の施設で看取りがないことから、精神的な負担も少なくて済みます。

大変さには、入所期間に制限があるため人の入れ替わりが激しく、書類の更新や状態把握に手間がかかってしまうことがあげられます。

特養同様、シフトによっては夜勤が発生することもあるので不慣れな方にとっては大変に感じるでしょう。

老健に向いている人

リハビリや機能回復、チームケアについて学びたい方にとっては、成長できる絶好の職場です。

給与、福利厚生が充実しているので、安定して高収入を得たい人にもおすすめです。

老健で働くメリット

施設内には医師や看護師のほかリハビリや栄養学のプロがいるため、医療知識をはじめ、さまざまな知識が身につきます。

また、多くの症例に携われることもメリットのひとつなので、利用者が在宅復帰を実現した際には大きな励みになることでしょう。

老健で働くデメリット

デメリットは、介護よりも医療の要素が強い現場であるため、環境に慣れないうちは戸惑いを感じてしまうかもしれません。

老健で働く前に確認!施設の選び方

施設を選ぶ際、何を最優先にするか明らかにするのが大切な点は特養と同じです。

老健は他の施設形態と比べて医療ケアやリハビリの関わり度合いが高いのが特徴です。

介護経験者の場合は、今までの経験で老健に転職して役に立ちそうなことや自分の強みがないか洗い出しましょう。

そういった経験や知識があれば、面接の際に大きなアドバンテージとなります。

老健では医療従事者との連携が必須となるため、面接で医療職の責任者が立ち会うケースが多いです。

責任者の人柄を通じて医療と介護のパワーバランスがある程度分かりますし、可能であれば内部見学を申し出てみてください。

そうすれば職場の内情をさらに詳しく知ることができるでしょう。

実際に自分の目で見て「ここが良い」と思える施設を選ぶのがベストです。

特養と老健どちらが働きやすい?

特養と老健は、どちらも高齢者向けの介護施設であることに変わりありません。

生活される方の介護度やケアの目的が違うように働く職員の希望条件や目的もそれぞれ違うため、どちらが働きやすいかを言い切ることはできません。

何よりも大切なことは、自分が希望する働きかたや将来の目的を明確にすることです。

特養は身体介護が主になるので、体力に自信がある人に向いています。

また、入所者と長期間向き合うことになるので、利用者とじっくり関わりを持ちたい性格の人はやりがいを感じられると思います。

一方、老健は利用者の入れ替わりが激しいので、すぐに誰とでも親しくなれるコミュニケーション能力のある人に向いています。

医学や看護やリハビリの知識や技術を学ぶことができるので、学習意欲の高い人はやりがいを感じるのではないでしょうか。

まずは、自分の強みや伸ばしたいスキル、理想の将来像などを考えてみましょう。

もし、自分に合った施設選びに迷った時はエージェントに相談することをおすすめします。

介護職におすすめの転職エージェントついては「介護職の転職エージェントおすすめ15社比較やコツを紹介」をご覧ください。

介護士の転職で失敗しないための秘訣

介護士の転職で失敗しないためには、数多ある施設(サービス)の特徴や違いを把握し、自分に適した施設(サービス)を見極めることが重要です。

介護業界の離職率の高さは世間的によく知られているので、転職先を探す際にブラック施設を選ばないことが最重要課題となります。

施設(サービス)を見極める手段としては、介護専門の転職エージェントを利用することがもっとも確実で効率的です。

なぜなら、介護専門の転職エージェントは業界だけではなく、各職場の内部情報にも精通しているからです。

非公開求人も多く保有しており、しっかりとカウンセリングして希望を聞いた上でぴったりの案件を無料で紹介してもらうことができます。

働いている間もエージェントが転職先を探してくれるため、転職活動にかける時間や労力を大幅に軽減できます。

また、入社後のミスマッチも防ぐことができますよ。

それでも自分で転職先を探したい方は、できる限りの情報収集を怠らないようにしましょう。

希望する求人が見つかったら、最低でもインターネット上で掲載されている口コミや待遇、福利厚生の確認は必須です。

パートや派遣からの就業や職場見学OKの施設もあるので、自分の目で職場の雰囲気などを確かめることを強くおすすめします。

まとめ

今回の記事では、介護士の転職先として特にメジャーである「特養」と「老健」をピックアップしてお届けしました。

何かと混同されやすいこの2つの施設ですが、役割や特徴の違いが明確になれば自ずと自分が進むべき道が見えてくるはずです。

今後ますます高齢化社会が進行することから、介護士には転職先を選ぶ権利が十分にあります。

どうぞ妥協せず、納得がいく転職を実現させてくださいね。

この記事を書いた人

冨松 智

1975年 奈良県出身 介護業界歴10年の介護福祉士 サービス提供責任者として4年従事した後、現在は一般介護職員として勤務 介護従事者を対象としたオンライン相談室開設