利用者の残存能力を活かしたケアは介護の基本であり、また理想でもあります。

頭では理解していても、現実にはさまざまな障害に立ち塞がれ、実現するのが難しいと感じている介護職は多いのではないでしょうか。

しかし、介護報酬の改定が行われるたびに、介護予防やリハビリがますます重要視されるようになってきており、残存能力を活かした介護の重要性も増しています。残存能力を活かした介護を実現するためのポイントはどこにあるのでしょうか。

 

利用者の残存能力を見極めることが基本であり最も難しいこと

残存能力を活かすためには、利用者の能力を正しく見極めることが必要です。

例えば病院のソーシャルワーカーによって「自分では食事を摂れない」と判断された高齢者が施設に入所するケースを考えてみましょう。

この情報を鵜呑みにして、この人は自分で食べられないから介助が必要だと判断してしまっては、残像能力を活かしたケアをすることはできません。

残存能力を活用するためには「なぜ」と繰り返し問うことが必要です。

なぜこの人は食事を摂れないのでしょうか。

術後の体力がない状態で点滴の期間が長かったのかもしれません。

認知症が進行しており、食事を食事と認識できない可能性もあります。

もしかすると、単に食事をする環境が整っていないだけかもしれません。

 

このように、なぜ食べられないのかと問うことで数多くの原因に突き当たります。

その原因を1つずつ検証し、本質的な原因を見つけることから残存能力を活かすケアは始まるのです。

 

原因を追求せずに介助を行ってしまっては、残っている高齢者の能力を潰してしまうことになります。

残存能力とは、今見えている「できる」ことだけを指しているのではありません。

現時点では「できない」ことであっても、その原因を追求し解決することで「できる」ことに変わる要素もまた、残存能力に含まれます。

多くの高齢者は環境や自身の意欲低下によって、本来持っている能力よりも低く評価されがちです。

できていることを継続してできるようにする試みはもちろんのこと、できないことをできるように変えていく試みも、残存能力を活かすケアとして大切な視点になります。

 

利用者に合った福祉用具を選び正しく使う

利用者に合った福祉用具選びは、残存能力を活かした介護をする上で欠かせない条件です。

歩行が不安定な人に対して安易に車椅子を使うのではなく、手すりや杖それに歩行器といったさまざまな選択肢を頭に浮かべ、その中からその人に合った用具を選ばなければなりません。

そのためには先にも述べた、その人の残存能力の正しい理解だけでなく、「どのように」不自由なのかという状況判断も重要です。

不安定な歩行が単純な下肢筋力の低下によるものなのか、脳梗塞の後遺症による半身麻痺によるものなのか、あるいは脊柱管狭窄症による痺れによるものなのかを知っておかなければ、適切な福祉用具を選ぶことはできないでしょう。

また、歩行がどのように不安定なのかも重要です。左右どちらかに傾くのか、すり足で歩いているのか、前傾姿勢になっているのかなどの現状によっても選ぶものは変わってきます。

原因を知り、現状を把握しておかなければ正しい福祉用具を選ぶことはできないのです。

適切な用具を選ぶことができれば、次に正しく使えているかを確認しましょう。杖や歩行器はサイズが合っていなければ、歩行支持器具としての機能を十分に活かすことができません。

車椅子を利用する場合でも、自走を促すのであれば専用の車椅子を用意するだけでなく、高さや横幅といったサイズにも気を配る必要があります。

食事用の補助スプーンも同様です。補助スプーンには柄や首が曲げられるものがあります。これもその人の使いやすい形に曲げて使わなければ、補助スプーンとしての役割が半減してしまいます。

 

最終的には介護職の待つ姿勢が成功に導く!

利用者に残っている能力を見極め、その人が力を発揮するための道具も整えたとしましょう。

それでは、その人はすぐに自分の力を発揮するようになるのでしょうか。

そうはならないことは、介護現場で働いている多くの人が体験として知っているでしょう。

環境を整えたとしても、本人にその気がなければ力を出すことはできません。

反対に、本人の意欲さえあれば多少の障害は問題にならないこともあります。

 

残存能力の見極めや正しい福祉用具の選択・利用はもちろん大切です。

しかし、最終的にはいかにやる気を引き出すかが、残存能力を活かしたケアが成功するかどうかを左右することになります。

意欲を引き出すためには、その人のできる部分を認め、できない部分を一緒に乗り越えようとする姿勢が大切です。

できないからといって本人だけでなく介護職までもがすぐに諦めてしまうのでは、できるようになるはずがありません。

高齢者を普通の人と比べた場合、できるようになるまでに時間がかかることがほとんどです。

介護職が早々に見切りをつけてしまっては、可能性も意欲も摘み取ってしまいます。

介護職には、高齢者が力を発揮するための環境を整えるだけでなく、その人の可能性を信じて待つことも求められます。

それができるようになれば、残存能力を活かしたケアも容易に行えるのではないでしょうか。