家庭での介護は今や誰にとっても他人事ではない問題です。多くの人が仕事と介護の両立に悩み、困難を感じています。介護士は家族介護に困っている人たちを救う役割が求められています。しかしながら普段施設やデイサービスなどで働いていると、家族の顔が見えにくく自分たちがなにを求められているのか、分かりにくくなるのも事実です。そこで、今回は家族介護の課題とプロの介護士の存在意義について、改めて考えて見ていきましょう。

 

家族が抱える介護上の問題点とは?

自宅で介護をしている人には、多くの負担がのしかかります。精神的にも身体的にも、自宅での介護は想像以上に大変なものです。介護に関する知識や技術が全くない状態で、片麻痺の人を入浴させることを考えてみてください。どんな器具が必要で、どんな介助方法が適切かも分からないまま行うことは、介助者の身体的な負担が大きいだけでなく、介護される人にとっても不安が大きく、事故のリスクも高いものです。こうした介護を続けていると、遠からず腰痛を発症してしまい、なおさらに介護が辛いものとなってしまいます。
精神的な負担も見逃せない問題です。介護者の多くは社会的に孤立しがちで、自分の悩みを人に打ち明けられない状況に置かれています。介護に終わりが見えないことや認知症対応の困難さなどが、状況の悪化に拍車をかけます。特に認知症は家族介護の最大の問題といえるでしょう。

 

認知症は家族にとって最も受け入れ難い病気

認知症になると、発症した本人だけでなく家族の生活も変化することを余儀なくされます。これまでのその人からは考えられないような言動や、認知症が進行すれば周辺症状と呼ばれる徘徊や昼夜逆転、異食などの行為が現れ、常に見守りが必要な状態となり夜も満足に眠れなくなります。家族にとっては自分の親が認知症になったという事実そのものが、受け入れ難いこともあるでしょう。自分を育ててくれた親の変わり果てた姿を受け入れられず、虐待に走るケースも珍しくありません。そもそもほとんどの家族は、認知症に対する正しい知識や対応法を持ち合わせていないことがほとんどです。家族を取り巻く周囲の無理解も問題で、認知症高齢者を抱える家族をなおさら孤立させる原因となっています。

 

家族介護でケアマネージャーが果たす役割

家族介護がうまくいくかどうかは、介護のプロすなわち現場で働く介護士や、生活全般をサポートするケアマネージャーの技量にかかっているといっても過言ではありません。まずはケアマネージャーが高齢者と家族を取り巻く環境を、適切にアセスメントすることが求められます。適切なアセスメントは家族が抱えている問題を浮き彫りにし、それを解決するための方法の発見につながります。解決策は介護保険サービスの利用だけでなく、保険外サービスの利用や地域ボランティアの有効活用なども含まれます。アセスメントの巧拙とその後に多様な選択肢を提示できるかどうかで、ケアマネージャーの技量は測られるといってもよいでしょう。サービスの提供事業者やボランティアスタッフと綿密に連絡を取り合うことによってその人の現在を改めて描き出し、未来に目を向けさせることもケアマネージャーの重要な役割です。ケアマネージャーの適切な支援があれば、介護が必要な本人が長く自宅で暮らしていけるだけでなく、家族にとっても心穏やかに過ごすことが可能となります。

 

高齢者だけでなく家族のケアも介護士の仕事

では、現場で働く介護士はどのような役割を果たすのでしょうか。ケアマネージャーの作成したケアプランをもとに、要介護者に最適なケアを提供するだけではありません。現在のケアの問題点を早期に発見してケアマネージャーにフィードバックすることも、介護士の重要な役割のひとつです。常に改善がなされている現場ほど、ケアマネージャーと介護士とのあいだに頻繁な行き来が見られるものです。家族のケアも介護士の大切な仕事になります。介護の正しい知識や技術を伝えることで、身体的な負担を減らすことができますし、家族の抱え込んでいる思いを聞き出すことで、心理的な負担を和らげることもできるでしょう。とはいえ、家族のケアを行うためには信頼関係の構築が欠かせません。私たちが見ず知らずの人に心を打ち明けることがないように、家族も自分の不安や悩みを誰にでも打ち明けるわけではないでしょう。しかしながら、多くの家族は、誰かに話を聞いてもらいたいと思っているものです。その気持ちを汲み取り、引き出すことも介護士の大切な役割なのです。

 

介護士として共感することが家族の励ましとなる

介護をしていると毎日同じことの繰り返しで、仕事の目的を見失うことがあるかもしれません。そんなときには自分の仕事の先にいる高齢者だけでなく、その家族のことも思い浮かべてみましょう。プロの介護士として働くことで、家族介護を行っている家族の思いは嫌というほど理解できるはずです。そのときに感じる家族への共感こそ、自宅で介護を行っている人の多くが求めているのではないでしょうか。"