2016年現在、日本の少子高齢化はもはや押しとどめようのない段階まで進んでおり、今後もますます進展していくことが予測されています。そのような状況下において、高齢者の生活は苦しい状況に追い込まれつつあります。支給される年金額の削減だけでなく、医療介護両保険の自己負担額の引き上げなど、今や年金だけで生活していくのは多くの高齢者にとって難しい状況です。今や「生涯現役」はほとんどの人にとって当たり前の考え方となりつつあります。生涯現役社会を実現するためのポイントを押さえておきましょう。

現在の高齢者が置かれている立場

まずは現在の高齢者の実像を確認しておきましょう。データはすべて内閣府が発表している平成28年版高齢社会白書によっています。年間所得の平均は300.5万円、世帯人員一人あたりでは192.8万円となっています。全世帯平均が528.9万円、世帯人員一人あたりが205.3万円であることから、高齢者の世帯一人あたりの所得は、全世帯平均と大きく変わりがないことがわかります。
それでは高齢者の就労意欲に関してはどうでしょうか。もっとも多い回答が「働けるうちはいつまでも」の28.9%であることからも分かる通り、約7割の高齢者が60歳、65歳を過ぎても働き続けたいと考えています。「仕事をしたいと思わない」と答えたのが、全体のわずか10.6%であることからも、日本の高齢者の就労意欲の高さが伺えるでしょう。

引退後に必要な貯蓄額3,000万円を満たす家庭は?

一般的に定年退職後に必要な貯蓄額は、3,000万円といわれています。世帯主が65歳以上の世帯の平均貯蓄額は2,499万円で、全世帯平均の1,798万円を大きく上回っています。しかしながら平成26年の65歳以上の生活保護受給者が92万人もいることからも分かる通り、平均貯蓄額を見て高齢者すべてが十分な貯蓄があると判断するのは総計でしょう。高齢者の生活保護受給者は平成16年の53万人から92万人へと、約40万人も増加しており、65歳以上人口の_x0008_2.80%を占めています。貯蓄高をみても、4,000万円以上ある世帯が18.3%いる一方で、1,000万円以下の世帯も35%ほど存在し、高齢者間でも格差が存在することがわかります。

高齢者の25%が貧困状態に陥っている!?

ここまでのデータは「平均」であったことに注意しておきましょう。平均値を取ると現在の高齢者が置かれている現状を見逃すことにもなりかねません。2016年3月4日の東京新聞の記事によると、最低限の生活に必要な年収160万円に満たない高齢者世帯を貧困状態とみなし、その人口を試算すると893.5万人に上るという結果が得られました。この数字は高齢者全体の4分の1を占める数であり、2009年の調査をもとに試算した数値、735万人を大幅に上回ったことになります。5年間で約160万人もの高齢者が貧困状態への転落を余儀なくされています。
注意しておきたいのは、この試算は年収のみで計算したものであって、貯蓄額はまったく考慮されていない点です。そのため「年収100万円、貯蓄額5,000万円」といった人まで貧困状態と算出されている点に問題があります。とはいえ年金額の減額によって、多くの高齢者が定期的な収入の低下状態に陥っていることは、間違いない事実でしょう。

「生涯現役」がこれからの高齢者の常識になる?

年金が減額されて毎月の収入は減っている、それを補うだけの十分な貯蓄もない、というのが現在多くの高齢者が陥っている状況ではないでしょうか。その一方で、多くの高齢者が定年退職後も働き続けたいと考えています。しかしながら就労意欲の高い高齢者の数に対し、高齢者に与えられている職場は決して多くありません。理由はさまざまですが、そのひとつに加齢による生産性の低下という考えがあるでしょう。年齢を重ねるにつれて生産性が低下するため、高齢者を雇うのはコストに見合わないと思われがちです。実際には65歳以上の高齢者の生産性は、全部門の労働生産性指数において高い数値を示しており、その数値は30代前半を上回り、35〜39歳の年齢層に匹敵するものです。65歳を過ぎたから引退、といった考え方がいかに本人にとっても社会にとっても損失が大きいかがわかります。

少子高齢社会において生涯現役は必須の考え

生涯現役は、高齢者が持っている高いスキルや知能を十分に活かす、社会にとっても本人にとっても大きなメリットのある考え方です。高齢者を雇用することによって、若年者の雇用が失われ不安定化するという批判もあります。確かにそれも問題ですが、少子高齢化が著しい日本においては、高齢者の労働力を上手に利用しなければ、十分な労働力が確保できないのではないでしょうか。日本の社会が高齢者にとってもそうでない人にとっても安心して暮らせるものとなるために、生涯現役は多くの人に持ってもらいたい考え方といえるのかもしれません。