日本の65歳以上の高齢者人口は4人に1人となった(2015年国政調査)。今後2025年には65歳以上の高齢者は3人に1人、75歳以上の高齢者は5人に1人となる(総務省統計局)。そのようななか、最期は自宅で迎えたいと望む高齢者は約8割にのぼり、在宅介護サービスのニーズは今後も増加傾向にある。その望みを叶えるサービスの1つが訪問入浴介護サービスである。訪問入浴介護は、一人でお風呂へ入ることが困難な方のために、専用の浴槽を高齢者のご自宅に設置し、プロの介護スタッフ・看護師が入浴を提供するサービスであり、主に要介護度4、要介護度5の方が利用している。政府は、働き手が不足する介護業界で、家族や在宅介護サービスを充実させることによって需要と供給の調整を図っている。とはいえ、家族のサポートや一般家庭の設備では、要介護度が高い方の入浴介助を行うのは難しい。今回は、そんな難しいとされている訪問入浴介護サービスについて、業界最大手である「アースサポート」を取材し、彼らがどういった内容・プロセスでサービスを提供しているのか探ってみた。

 

 訪問入浴介護とは

予防訪問入浴介護、訪問入浴介護事業所数は全国に約4,300事業所(2014年厚生労働省調べ)あり、介護事業所全体の150,000事業所のうちのおよそ3%程度だ。
訪問入浴介護はお客様の自宅に専用の持ち運びができる浴槽を用意し、寝室やリビングに設置することで、移動の負担が少なく寝たきりの高齢者でも入浴することができる。
介護の中でも、特に需要が高いのがこの「入浴」に関する介護であり、訪問入浴介護に限らず、デイサービスや施設系の介護サービスを利用する理由として、「入浴」への介助の必要性を感じたことが契機となることが多い。
 

お客様の特徴

サービスの対象者は、要介護4、要介護5の方が中心であり、中には人工呼吸器などの医療機器を装着しているケースや寝たきりの状態の方も多く、外出はもちろん、日々の活動領域が極端に狭まっている場合が多い。だが、訪問入浴介護サービスを利用することで、それまで「寝たきりの状態になったら、お風呂に入れず身体を拭いて過ごすしかない」と諦めていた方が、お風呂に入り、身体を清潔に保ち、日常生活を楽しむことが可能になる。
高齢者の「生きがい」を提供しているとも言える訪問入浴介護サービスが、具体的にどのような流れで提供されていくのか見ていこう。

 

アースサポート株式会社

アースサポート株式会社は国内の訪問入浴事業のトップシェアを占める企業であり、運営が難しいと言われる在宅介護サービスを主力事業として成長を続けてきた。代表の森山氏は1973年、知人と布団の丸洗い乾燥事業を立ち上げスタートさせた。しかし、現場では劣悪で不衛生な生活環境の中で暮らす高齢者の実態を目の当たりにし、それを解消にするには入浴が必要だと考え、1978年に民間で初めて訪問入浴サービスの委託を自治体から得るとともに、現在の訪問入浴介護の基礎となる、簡易浴槽の自宅への運搬や高齢者の体調管理のために看護師を同行させるなどの仕組みを導入した。
 
その後、森山氏はアースサポート株式会社を設立し、急成長を遂げてきた。利益を上げるのが難しい訪問系を中心に事業展開を行う同社は、有料老人ホーム中心で収益を上げる他の企業と比べて異色の存在だ。
 
同社がこれまで作り上げてきた訪問入浴事業がビジネスモデルとなり、社会にとってのインフラとなっていく。業界を背負って立つ企業としての責任から、利益主義に走らず日本の将来を見据えた事業展開を行っている。
 

訪問入浴介護の流れ

アースサポートで提供される訪問入浴サービスの大きな流れは、「入浴前の健康チェック」「入浴前の環境整備」「入浴」「入浴後の健康チェック」「入浴機材の片付け」と5つのステップに分けられ、全体で40分ほどの時間を要する。 

[入浴前後の健康チェック]

入浴の前後には、看護師によるお客様の体調確認が行われる。この入浴前の健康チェックで、入浴可否の判断がなされる。
入浴前のバイタルサインと呼ばれる心拍数・呼吸(数)・血圧・体温に異常がないことの確認、全身状態、食事や睡眠の状態をトータルで確認する。 

[入浴前の環境整備]

訪問入浴で使用される専用の浴槽は訪問入浴車からお客様宅まで運ばれ、寝室やリビングなどに設置される。寝たきりの方をベッドからスタッフが抱え、浴槽へと移動する。身体の大きな方でも、スタッフ3人が協力し抱えるなどして、安全な方法で対応する。

入浴時のお湯については、お客様宅の給水設備から入浴車の貯水タンクへ給水が行われ、そこで沸かされたお湯を浴槽に送る場合が多い。

[入浴]

入浴サービスは洗顔、洗髪、洗体をスタッフ3人または4人で行う。
高齢者の皮膚は剥がれやすく、関節の痛みや、麻痺している箇所があることも珍しくない。そのため一つひとつを丁寧な所作で行い、確認のためにも声をかけながら行われる。また、入浴に使われるお湯の温度設定にも、高齢者に最適な温度で入浴できるように細心の注意が払われる。
 
入浴は血液の循環を良くし、気持ちをリラックスさせてくれるが、高齢者にとっては身体的に負荷のかかる行為だ。そのため、入浴前、入浴中、入浴後と細心の注意を払ってチームで訪問入浴介護にあたるのだ。

 

訪問入浴介護で求められる役割

訪問入浴サービスを提供する現場では、医療的な判断を必要とする状況が多く、3~4人のチームには介護職員だけでなく看護師1名も含まれる。
介護スタッフ2~3名(オペレーター、ヘルパー)と看護師、計3~4人でサービス員を構成し、それぞれ求められる役割が異なる。次に、それぞれの役割を見ていこう。

訪問入浴オペレーターの役割

チームリーダーとして、入浴介助の他にも入浴車の運転や浴槽の搬入・搬出、お客様の抱え移動などを担当する。

訪問入浴ヘルパーの役割

訪問入浴ヘルパーは洗体や洗顔、洗髪などの入浴介助を行うとともに、お客様とのコミュニケーションを図る。

看護師の役割

入浴前後にお客様のバイタルサインをチェックし、入浴の可否を判断する他、介護スタッフと入浴介助を行う。
 
このように、異なる役割をもったスタッフが連携して、1人のお客様へサービスを提供するのが訪問入浴だ。そのため、チームワークが必要とされるのが特徴である。

 

訪問入浴の効果

お客様への効果

入浴前の看護師による健康状態のチェックによって、むくみや床ずれなどの早期発見ができる。
そして、入浴によって身体から発せられる匂いや、剥がれやすくなってしまった皮膚の痒みを取る効果や、血液の流れが活発になることで下半身のむくみがとれ、老廃物が排泄され疲労回復へと繋がる。 

お客様の家族への効果

家族にとっては入浴介助や、入浴中のシーツ交換なども行ってもらえるため、介護の負担が軽減する。

また、双方にとって「入浴」を通じて会話が増え、お客様の感情が豊かになる効果もある。そのため、「訪問入浴」サービスを行った結果、家族間のコミュニケーションが活性化されるということも少なくない。

 

訪問入浴サービスの今後

日本で寝たきりの状態にある高齢者はのうち、訪問入浴介護サービスを利用されている方の割合はまだまだ少ない。訪問入浴の存在自体や、提供されているサービスの内容がわからず、利用に踏み切れない人達も多いだろう。
しかし、一度以上利用したことのある方の満足度は高い。アースサポートのアンケート調査における満足度は87.7%に上る。
 
訪問入浴を使われる理由は様々だが、その多くには要介護度が高くなった状態でも自宅で最期まで過ごしたいという想いが根底にある。
デイサービスや施設系のサービスで入浴を利用することもできるが、中には、入浴のためだけに不本意ながら施設に入居するということもある。訪問入浴を普及させていくことは、そういった「自宅で過ごしたい」という望みを叶えていくことでもあるのだ。
 
訪問入浴のパイオニアとして、業界を牽引するアースサポートが、今後どのように訪問入浴の更なる拡大を図るのか、お客様やご家族のニーズに応えていくのか注目したい。
 

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