日本の介護にユニットケアが導入されて14年。
施設側の時間割りに入居者があせて生活する従来の「集団ケア」から、施設側が入居者一人ひとりの生活リズムに合わせる「ユニットケア・個別ケア」は介護にとって大きな転換点だ。

今回は全国に先駆けユニットケアを導入し、他事業所からのユニットケアの「実地研修施設」にも指定された「ちょうふ花園」にユニットケアの思想と実践について話を聞いた。

 

暮らしの継続 ー 「個」の尊厳を重視するユニットケア

--まずユニットケアについて教えてもらいますか?

梅津:一言で言うと「暮らしの継続」を基本理念にしたケアのことです。
入居者様は一人ひとりが入居前の生活をもっています。それが人生のある時点で施設への入居が必要になって、それまでの生活のリズムではなく、施設の時間割りに合わせて生活しなくてはいけなくなる。そういった従来型のケアではなく、その方の生活リズムや習慣を入居後も継続できるように、施設側がサポートするケアのことです。

--つまり施設側が入居者の生活に合わせるということですか?

梅津:そうです。例えば夕飯が17時からの人もいれば、19時からの人もいます。昼間の過ごし方も、皆でレクレーションを楽しみたい方や、個室で読書をしたい方など様々です。ユニットケアでは入居者様一人ひとりの生活を基本に職員が動きます。

--そういったケアは比較的新しいスタイルなのですか?

梅津:ユニットケアの日本への導入は2002年ですね。現在、特養の約3割がユニット型です。それまでの特養では、高齢者を24時間見守り、必要な介護を行うために、病院をモデルとした集団ケアが介護施設の主流だったんですよ。
集団ケアはある意味、画一的な手法です。そのため高齢者のQOLだとか、その人らしい生活というものが置き去りにされてしまった。その反省の中で高齢者の生活を中心に据えたユニットケア・個別ケアという思想が広まりました。
ちょうふ花園は、国内でも早い時期にユニットケアを導入した施設に学ばせていただきながら、今では他の介護施設からの研修を受け入れる「実地研修施設」に指定されています。

 

入居者が何を望んでいるのかを曖昧にしない

--具体的にどういうところにユニットケアの特徴が現れるんですか?

梅津:まずユニットケア共通なところでいうと入居者(お年寄り)を少人数(10名程度)にして、生活単位とします。そこに直接ケアに係る介護職員を固定して配置することで顔なじみの関係をつくることが挙げられます。ちょうふ花園の場合は、高齢者10人で1ユニットとして、10人分の個室と共用リビングで一つの住環境となります。そうすることで一人ひとりのプライバシーや自分の時間を守りつつ、ほかの利用者との交流をはかるというバランスを保っています。
次にちょうふ花園の特徴で言えば、家具などは規格化せずに、入居者様一人ひとりに合わせます。例えば机の高さは車いすの人や、座高の高い方など、その人の体格に合わせて準備しています。

新井:ですから居室の家具は、使い慣れた家具を持ち込んでもらったり、ユニットのリビングなどに関しても地元のリサイクルショップや家具店を回って、ユニット毎に買い揃えています。食器もひとりひとり違います。従来のように落ちても割れない画一化されたものではなく、その人の使い慣れたものや使いやすいもの、食事量に合った食器を用意します。
これは家財などのハード面での個別性ですが、生活スタイルというソフト面でも一人ひとりに合わせています。

--ソフト面とは具体的にどんなことでしょうか?

新井:例えばある利用者様は8時に目が覚めるけど、起床後も15分間は布団の中でのんびりしたいとか、食後は温めのお茶を飲みたいとか、寝付くまでテレビの電源をつけておきたいなど、その方の暮らし方を施設でも継続できるようサポートしています。

--細かいですね。そうなると一人ひとりの生活スタイルの把握が難しくありませんか?

新井:ユニットケアの手法の一つに24時間シートというものがあります。入居者様の1日の暮らし方が書かれたシートです。先ほどの寝起き後の15分の過ごし方や、夕食後は食器洗いを率先してやるとか、きれい好きでお茶を呑んだらテーブルを拭くとか、その人の生活スタイルや意向、こだわり、ご自身でできること、スタッフのサポートが必要なことなどが細かく記載されています。
これが実物なんですけど...。


24Hシートで「生活者」として理解する

--すごい、びっしり書かれていますね。

新井:入居前のヒアリングや、施設での生活の中で一人ひとりの要望やこだわりを理解して、シートを更新しています。ケアの中で知りえたことはユニットチーム全体で共有して、入居者様の個人理解を深めています。

梅津:1ユニット10人という少人数制なので、その人のことをちゃんと知れるんですよね。流石に1人の職員が50人の入居者様の暮らしを把握することは難しいですが、10人ならできる。

新井:「入居者様が何を望んでいるのかを曖昧にしない」ちょうふ花園では、これをチームで徹底しています。

 

食べる楽しみを演出する

--「食」でも独自の取り組みをしているとお聞きしています

中村:ええ、盛り付けコンテストを定期的に実施しています。ユニットごとに盛り付けを競い合い、優勝したチームが景品を獲得するというコンテストです。

--どういった経緯で「盛り付けコンテスト」を始めたのですか?

中村:社内のサービス向上委員会で「どうしたら入居者様の生活の質を高めれるか」を議論していたときに、やはり「食」は生活の楽しみの中でも大きいという話になりまして。それで議論をすすめるうちに「食」を「おいしい」と「楽しい」という2軸で捉えて、何か楽しい食体験を演出できないかと考え、食を見て楽しむ「盛り付けコンテスト」を始めました。


盛り付けコンテストの様子

--「おいしい」に関しては、何か取り組みを行っていますか?

中村:毎日の食事の評価を入居者様から確認して、メニューにフィードバックしています。これも月に一回、管理栄養士や医者を交えて、こういうメニューを追加したいのだけどと、議論します。

--利用者からの反応はどうですか?

中村:うまくいったり、不評だったりしますね(笑)。
例えば茶碗でなく、おにぎりにしたことがあったのですが、食べにくいと不評だったり。ほかにも食器を食べやすい大きさにしたら、あの器じゃないと嫌だとか。こちらがいいと思った工夫でも、実際にはその人のこだわりや習慣があって、それはトライしてみないと見えてきません。
「うまくいかないだろうから、やらない」ではなく、「どうすれば入居者様が喜んでくれるか?」を日頃から意識しています。盛り付けコンテストも「盛り付けの工夫をしたらどうだろう?」というちょっとした意識から生まれました。そうした日々の意識が入居者様のことを「より深く知っていく」というユニットケアの本質につながると考えています。

梅津:食体験だと、食事の盛り付けは共有リビングで入居者様一人ひとりに対して行います。

--ええ、先程からいい匂いがしてきていますね、包丁の音も(笑)

梅津:あれはネギを切っている音ですね。夕方の風物詩です(笑)。
ユニットケアでは盛り付け済みの食事を提供するのではなく、リビングで一人ひとりにあった形で食器に盛り付けます。人によって食べる量や、盛りつけ方の好みも違いますからね。

もう一つ重要なのが「暮らし」にフォーカスしている点です。
夕餉になると、炊飯の匂いやネギを切る音がしてきて、リビングに人が集まってくる。今日は少なめがいいとか、味噌汁の具材は何?とか、何気ない会話がある。そういった普通の家庭の普通の団欒を演出して、入居者様が暮らしの延長で施設生活を実感できるようにしているんですね。

 

今後の介護には地域の協力が不可欠

--QOLやその人らしさを追求すると、入居者のニーズは多様化していきますが、その人らしいサービスは常に提供できるものなのでしょうか?

新井:一事業所だけで全てを提供することはできません。これからの介護には地域からの協力が不可欠です。例えばちょうふ花園では毎週水曜日と金曜日には地域のボランティアの方が「花カフェ」という喫茶店を園内で開いてくれ、美味しいコーヒーを淹れてくれます。地元の和菓子屋さんがお菓子を提供してくれ、楽しみにされている入居者様も多いです。


ボランティによる花カフェの様子

他にもアロマケアをボランティアの方が行っていたり、麻雀クラブでは以前いた入居者様のご家族がボランティアとして来て下さっています。そういった色んな楽しみやサービスを、事業所だけでなく、地域と協力して提供していく。「その人らしさ」がキーワードとなっていく以上、色んな方からの協力なしには、これからの介護施設は成り立ちません。

--最後に今後、画一的な集団ケアに対して、ユニット型の個別ケアは増えていくでしょうか?

梅津:社会保障費の問題もありますし、介護人材の不足の問題もあります。従来型よりも人手が必要な個別ケアにはマイナスな環境です。ですが社会は一度良いサービスを経験したら、もう以前には戻れないと思うんですよね。車でもITでも後退はしませんよね。

ユニットケア・個別ケアは入居者様からの満足度が非常に高いサービス形態です。ご家族からも好評です。職員も一人ひとりに寄り添えるユニットケアにやりがいを感じています。たとえ介護を取り巻く環境が厳しくなっても、地域やご家族からの協力を得つつ、今後もユニットケア型の施設は増えていくと思いますよ。

 

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ライターからヒトコト

「入居者が何を望んでいるのかを曖昧にしない」というスタンスで、徹底して入居者に寄り添う「ちょうふ花園」。利用者本位を言うのは簡単ですが、職員のスタンスや日々の業務に落とし込んでいるケアに、ちょうふ花園の本気を感じました。QOLやターミナルケアが重視される中で、今後のユニットケアに期待です。

 

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