高齢者に多い事故の筆頭が、転倒です。段差や障害物のある場所よりも、平らな場所でつまずいたり、よろめいたりして転倒する事故が多いようです。介護施設や訪問介護に携わる介護職員もヒヤリハットするようなケースを何度も経験しているでしょう。

人間は加齢とともに様々な機能が低下し、自分では出来ると思っていたことも気付かないうちに出来なくなっていきます。 介護職としては、この特性をよく理解し、転倒事故に至らぬように先回りして手を打たなければなりません。 高齢者の事故の特徴を知り、予測に基づいた対策を立てましょう。そして、起きてしまった事故には迅速に対応出来るよう、日頃から準備しておきましょう。

 

転倒事故の対策に必要な視点とは?

転倒事故の対策は一律ではなく、介護サービスの利用者ごとに異なります。まずは事故防止対策に必要な視点を4つのポイントに絞ってみていきましょう。

○ 小さな変化に気付こう

日常のちょっとした変化が、事故のきっかけとなる場合があります。

・歩く時、膝が上がらなくなってきた
・片づけが出来なくなった
・物が見えづらくなっているようだ
・杖を忘れることが増えた

些細なことのようですが、この小さな変化への気付きが、事故を予防するきっかけとなります。まずは担当するケアマネへ報告を入れましょう。 環境整備や福祉用具の導入につながるかもしれません。

 

○ こんな動きをしそう、と予想しよう

高齢者で過去1年間に転倒したことがある方は、再び転倒するリスクが非常に高いそうです。 以前に転倒されたことがあるのなら、どこで転んだのか、何をしようとしていたのか等、その時の状況を詳しく聞いてみましょう。 また環境整備をする場合でも、Aさんにとっては障害になるものでも、Bさんにとっては手を置く必要な物だったりするのです。 この方は、こうなったら転びそうだな、と動きを想像してみて下さい。その時、傍に何があったら(または何がなかったら)、転倒を防ぎ、安全に移動出来るでしょうか? それがこの方にとっての転倒対策となるのです。

 

○ 複数ある転倒の原因を探ろう

転倒時の状況や環境だけでは情報不足です。その方の疾病・服用している薬にも注意を払いましょう。 骨粗しょう症をもっていないか?薬の副作用の中に目眩やふらつきはないか?複数の病院にかかっている場合、薬の相互作用で副作用が強く出てしまう場合もあります。 疑われる場合は、医師や薬剤師への相談を勧めましょう。また認知症の進行(落ち着きがなくなった、周囲に注意を払わなくなった)で転倒しやすくなっている場合は、 対応を見直して改善に努めましょう。あまりに症状が強い場合や、他人に影響を及ぼしている場合等は、主治医への相談が必要です。

 

○ 今更と思わない!やっぱり大切な運動

たった一度の転倒で車椅子生活を余儀なくされ、在宅生活を続けられなくなるなど、状況が大きく変化してしまう場合もあります。 それだけ高齢者にとって、転倒は怖いものだと認識しなければなりません。しかし、筋力低下が原因の場合、ちょっとした足の運びで、転倒のリスクは軽減されるものです。 毎日、少しの運動を生活に取り入れることで改善出来ます。高齢者にとっての運動は、億劫だし今更、と思われがちですが、その運動が何に役立つのか理解してもらえれば、 長く続けてもらえるのではないでしょうか。リハビリで効果的な運動方法を教えてもらうのも良いです。

 

発見時にはどうしたらいいの?

では、転倒事故が起きてしまった場合、どう対応したら良いのでしょうか。命に関わることも多い高齢者の事故には、迅速に対応することが求められます。 ここでは、施設内の事故についてみていきましょう。

① 状態の把握

発見時は、すぐに動かしてはいけません。車椅子に移乗する際は、怪我の状態をさらに悪化させてしまう恐れがあるので、看護師を呼ぶか、指示を仰ぎます。 頭部を打った可能性がある場合は、必ず報告しましょう。また本人に痛みの確認を行います。意識がない・開放骨折をしているなどの場合は救急搬送です。

 

② 応急処置

看護師の指示の下、安全を確保してから(ベッド等へ移動してから)、患部を固定する・冷やす等の処置を行います。本人が痛みを訴える部位以外も、可能であれば、全身を確認します。 出来れば①でバイタルを測定し、②で落ち着いたところを再度測定し、変動をみます。

 

③ 必要箇所への連絡

並行して、生活相談員や看護師が、ご家族や主治医と連絡を取ります。必要であれば受診しますが、転倒=受診ではありません。 やみくもに受診することが、かえってご利用者の負担になる場合もある為、状況に応じて冷静に判断しましょう。

 

④ 本人の精神的動揺への配慮

転倒したことで気持ちが高ぶってしまい、普段とは違う行動から、また転んでしまう、といったことも有ります。十分見守りを行いましょう。

 

⑤ 記録

転倒は、対応した介護職の気持ちも動揺させます。事実を客観的に記録するよう心掛けましょう。

 

⑥ 観察

頭部を打撲してしまった場合、硬膜外血腫となって何か月もあとに症状が現れることもあります。吐き気や頭痛などがあった場合は、 転倒による頭部打撲と併せて医師に必ず伝えましょう。また転倒直後はどこも痛まなくても、2~3日後に腫れや痛みが出てくることがあります。転倒後は、しばらく観察を続けましょう。

 

⑦ 事故対策

事故防止委員会などで取りまとめ、施設としての対策を講じます。これは、上記に挙げた個人ごとの対策とは異なり、 組織的に改善すべき事項(○○時頃に事故が多いので、フロアの対応人数を増やす等)についての対策です。 事故に至らなかったヒヤリハット事例も活用していきましょう。

 

まとめ

転倒事故は自分で動ける方にこそ多いものです。特に生活上の行為に伴う事故は、その行為自体を誰かが代行することでやらなくても済むよう危険を排除しがちです。 しかし、その行動を制約することは、その方の生活を奪うことにつながりかねません。転倒につながるその行為・行動を制約するのではなく、環境を見直す・動線を安全に確保するなどして、 今までの生活を安全に続けるお手伝いをしたいものです。

 

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