政府では、地域共生社会の実現を図るため2020年に社会福祉法や介護保険法などの改正を実施、2021年4月より施行されます。政府としてもきめ細かな支援体制を作ることに注力しています。地域の特性に応じた介護サービスの充実、介護人材の確保等様々な政策が盛り込まれています。

「特別養護老人ホーム」(以下、特養と記す)は要介護高齢者のための生活施設であり、公的な施設として安定的な運営が行われています。介護のための中心的な施設と考えていただいて良いでしょう。今後もますます充実されていくでしょう。

今回は介護職員の方向けに「特養」での働き方をご紹介します。もしニュースで施設の存在が気になった方は、参考にされてみてはいかがでしょうか?

全国に10,500件!「特養」とはどんな施設?

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「特養」とは、要介護3以上の認定を受けている高齢者を対象に、入所や30日以下のショートステイなどの介護サービスを提供している施設です。

一般的には認知症を患っていたり、病気や加齢により体が不自由な利用者が多く、2019年10月では既に施設数10,502施設 サービス受給者数 61.96万人まで拡大整備されてきています。
特養は公的な施設で、経営は地方自治体か社会福祉法人に限られ、設立にあたっては、都道府県から厳格な審査が行われます。介護スタッフも安心して働くことができる環境であると言えるでしょう。
高齢者向け住まい・施設には様々な種類がありますが、特養はその中でも代表的なものです。

様々な施設の件数のグラフを参考にしてみてください。


(図解の出典:08 参考資料2 参考資料(介護老人福祉施設)(参考資料)
平成28年(2016年)までの件数をグラフにしたものです。

「特養」での働き方はスタッフとの連携が大切

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特養での主な仕事は、食事・排泄・入浴の介助といった利用者の健康管理です。適度な声かけで利用者の体調や気分を判断し、支援を行っていくことが大切です。

また特養は、居室の種類によって「多床室」と「ユニット型個室」等に分けられます。

1つの居室で共同生活を行う「多床室」の施設では、介護スタッフの目が届きやすく、何か異変が起きても素早く対応することができます。一方、利用者が個室で生活する「ユニット型個室」の施設は、一人ひとりにきめ細かい介護ができる点が魅力です。
下の図を参照してください。

(図解の出典:01_資料1_介護老人福祉施設」(参考資料)
これ以外に「ユニット型個室的多床室」「従来型個室」「多床室(準ユニットケア加算)」があります。(上記資料の24頁)

どちらの施設で勤務する場合でも、緊急時に備えて他のスタッフや医療機関との連携をとるようにしましょう。

施設ごとに差がありますが、入所施設である「特養」は勤務時間がまちまちで、時には夜勤や早朝からの出勤も予想されます。頻度が気になる場合には、あらかじめ面接などで確認しておきましょう。

近所の施設がおすすめ。「特養」の選び方

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特養で働くことをお考えならば、気をつけたほうが良いポイントがあります。

まず、通勤にあまり時間がかからない場所にある施設を選ぶことです。
早朝や深夜の勤務も多い「特養」では、利用者の緊急時の対応を求められます。、家の近くにある施設に就職した方が、緊急時にすぐお役に立つことができます。

次に重要なのが働きやすい環境です。

ご自身が介護スタッフとして働いていくために大切なのは、施設そのものの働きやすい環境ではないでしょうか。

せっかく就職しても、例えば、スタッフ同士の人間関係に問題があると、仕事に支障をきたすだけでなく、必要以上のストレスを抱えてしまう可能性があります。

実際に働き始める前に、面接の際に施設内を必ず見学させてもらいましょう。現場にいる介護スタッフの動きや口調、入居者にどのように支援を行っているのか、実際に見て確認する必要があります。

そして面接時には、勤務形態・内容をきちんと確認しましょう。その際に自分には何ができるか、あるいは何ができないのか、正直に伝えるようにしましょう。もし正直に答えずに入社したとしても、真実とのギャップであなた自身が苦しむでしょう。施設にも入居者にも迷惑をかけることになりかねません。

介護職として活躍したいなら「特養」を選ぶべし

「特養」は今後も増設が見込まれており、求人募集の案内を見ることも多くなることでしょう。

利用者との距離が近く、介護職の仕事のやりがいを感じられるのが「特養」の特徴です。もし、もっと活躍の場を広げたいという思いをお持ちでしたら、「特養」への就職を検討されてみてはいかがでしょうか?

監修者コメント

2025年(令和7年)には団塊の世代が75歳以上となります。自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、政府としても様々な対策を取っています。
問題は、介護を担う人材の不足です。介護関係職種の有効求人倍率(平成30年度)は3.95倍。全職種平均の1.46倍をはるかに上回っています。 介護の仕事を志す皆様は、ご自分が社会のために大切な役割を担うことを心に刻み、あなたにふさわしい職場を選んでください。
特別養護老人ホームは、要介護3以上の方を対象にした公的な施設です。本当にあなたの助けを必要とする方の住まいです。それも終の棲家(ついのすみか)です。人生の先輩が日々を健やかに過ごすことができるよう、誠意を込めてお世話して差し上げてください。

この記事を監修した人

玉上 信明

資格:社会保険労務士 健康経営エキスパートアドバイザー三井住友信託銀行にて年金信託・法務・コンプライアンスなどを担当。
2015年10月65歳定年退職後、社会保険労務士開業。執筆・セミナーを中心に活動。
人事労務問題を中心に、企業法務全般や時事問題にも取り組んでいます。