フレイル(虚弱)とは?

フレイルとは、最近よく使われるようになった言葉です。フレイルは「Frailty」に対する日本語版の言葉といえ、2014年5月に一般社団法人日本老年医学会が提唱しました。「Frailty」を訳すと「虚弱」「もろさ」「弱点」などになり、元々は「Frailty」を「虚弱」として訳していました。

しかし「虚弱」では、身体的な意味だけにとられやすく、身体的側面ばかりではなく精神・心理的側面や社会的側面までを表す「Frailty」を表現できていないと考えられ、それに代わる言葉として「フレイル」が用いられるようになりました。

①サルコペニアとフレイルについて

同じような言葉にサルコペニアがありますが、サルコペニアは筋量や筋力の低下を表すものです。フレイルは、筋量や筋力など身体的機能の低下ばかりではなく、認知能力の低下や慢性的な疾患などの影響を受けることで、日常生活に支障が起こっている状態です。

フレイルになることで何が問題かというと、転倒やADLの悪化などが起き重度の介護が必要になる確率が高くなることです。厚生労働省が2015年に公開したデータでは、フレイルによって要介護状態になる割合は、75~79歳7.5%、80~84歳で12%となり85~90歳になると24.9%、90歳以上では43.6%と半数近くにもなります。

介護保険で要支援を受けた方、また要介護1~2の軽度の介護が必要な方がこのフレイルに当てはまるといえます。しかし、早い段階で適切に他者が介入し支援や介助を行えば、機能低下を防ぎ日常生活が維持できる状態でもあります。要支援または軽度の要介護状態から、重度の要介護にならないようにすることが重要なのです。

②フレイルの要因になるもの

フレイルは身体的・精神的及び心理的・社会的要因が複雑に絡んで起こります。それぞれの要因を挙げてみます。

身体的な要因

  • サルコペニア
  • 口腔内状態の悪化
  • 低栄養
  • 慢性の疾患など

精神的及び心理的要因

  • 認知機能障害
  • うつ病など

社会的要因

  • 独居生活
  • 貧困
  • 閉じこもり

フレイルかも?と思ったときのチェックポイント

フレイルの診断基準はいくつもあります。確実な判断をするとなると項目が多いものが良いですが、介護の現場で行える簡易的なチェック方法を紹介していきますので、参考にしてみてください。これらの簡易的な診断方法でも、機能低下が起こっているかどうかの判断ができます。もし状態悪化でより介護が必要になりそうな方がいれば、早急に対応しましょう。

現在最も広く利用されているのはリンダ・フリードという人が提唱した診断基準です。

フリードが提唱した診断基準

フリードがフレイルとして定義しているのは「Shrinking(収縮)「Weakness(弱さ)」「Exhaustion(疲労)」「Slowness(遅さ)」「Low activity(低活動)」で、これらを診断基準とすることが多くなっています。

日本ではこれらを「体重の減少」「握力の低下」「疲れやすい」「歩行が遅くなる」「身体的な活動の低下」として、下記の診断基準を元に、3つ以上当てはまればフレイル、1~2つであればフレイルの前段階であるプレフレイルと診断されます。

フレイルの診断基準

  • 6か月間でダイエットなどとは関係なく2~3㎏以上体重が減る
  • 握力を測定し男性は26㎏以下、女性は18㎏未満の場合
  • 特別疲れたことをしていないのに疲れた感じがする
  • 5mを歩いてもらい1m歩くのに1秒以上かかっている
  • 運動や体操などをしていない

フレイルチェック(簡易チェック)

こちらは、東京大学の飯島教授によって考案されたチェックリストです。簡易チェックは、ふくらはぎの太さを図り、11項目からなるチェックポイントから判断します。この簡易チェック以外により詳しく判断するための総合チェックもあります。

Ⅰ. ふくらはぎチェック

ふくらはぎの一番太い場所を両手の親指と人差し指を輪にして囲んでみます。指の輪よりもふくらはぎの方が太くて輪が作れない、また指の輪とふくらはぎがぴったりという場合は、今のところ大丈夫であるといえます。指の輪よりふくらはぎが細く隙間ができて、輪が上下に動くようであれば筋力低下が起こっている可能性があります。

Ⅱ. 11項目のチェック

利用者の方に「はい」「いいえ」どちらかで答えてもらってください。

栄養のチェック

①同じような年齢の同性の方と比べて、健康に気を付けた食事ができている
②メインとなる肉や魚料理に野菜をつけて毎日2回以上食事をしている

口腔のチェック

③「たくあん」や「さきいか」などの硬さの食べ物でも噛み切れる
④お茶や汁物を飲むとむせることがある

運動のチェック

⑤1回に30分以上汗をかくほどの運動を週2回以上行い1年以上続けられている
⑥1日に1時間以上ウォーキングやその他同じような運動量の運動をしている
⑦同じような年齢の同性の人と比べても歩く速さは早い方である

社会参加のチェック

⑧昨年と比べて外出の機会が減っていると思う
⑨1日に1回以上は誰かと一緒に食事ができている
⑩自分は活気があるほうだと思う
⑪何より物忘れが気になる

④⑧⑪は質問に対し「いいえ」が良く「はい」となっているものは注意します。その上で、すべての質問を見て、「いいえ」となっている項目があったら注意が必要です。「いいえ」の項目が多ければ多いほど、危険性が高くなります。

※チェック表をダウンロードしてお使いいただけます。ぜひご活用ください。
「フレイル(虚弱)管理チェックリスト_DL用」

フレイルから要介護にならないために

要介護にならないために、予防が必要になります。現在健康な状態でも機能低下が起きてしまう恐れがありますが、これから挙げる病気を持っている方は、よりフレイルに陥りやすいといえます。今以上状態が悪化しないように管理しましょう。

疾病による要因

  • 糖尿病
  • 慢性腎臓病
  • 慢性閉そく性肺疾患(COPD)
  • 認知症
  • うつ病
  • 骨粗鬆症など

フレイルの予防法

機能低下を起こし要介護状態にならないようにするためには、適度な運動・バランスのとれた食事・口腔機能の維持・外出し他人と触れ合う機会が必要です。どれも続けることが大切であることを、利用者に伝えましょう。有効である予防法について、一つずつ説明していきます。

適度な運動をする

フレイルの予防にはサルコペニアを予防することが重要です。激しい運動は必要ありません。1日30分はゆっくりでも構わないので歩くことを提案してください。また一人では運動がしにくい要支援者には、介護予防通所リハビリテーションなど、利用できる施設を紹介してみてください。

その他、高齢になると家の中でも自分は座ったままで、誰かに物を取ってもらうということを行っている方が多くなります。できるだけ自分で動いて物を取るなど、家の中でも動くように伝えましょう。

バランスの良い食事を摂る

低栄養にならないように、バランスのよい食事が摂れるようにしなければいけません。高齢になると食事量が減りがちですが、最低2回は食事をするようにし、筋肉を作るために必要な栄養素である肉や魚などのたんぱく質を積極的に摂るように伝えましょう。また独居の高齢者では、自炊ができず偏った食事になりがちであるため、定期的に食事を配達してくれる配食サービスなどを利用することも有効です。

口腔機能の維持

噛んだり嚥下したりする機能が低下することをオーラルフレイルといい、身体全体の機能低下に繋がります。口腔機能の低下は、歯の状態や口の中の衛生状態の悪化で起こります。定期的に歯科に通院してもらい、歯や口の中の状態を管理してもらうことは良い方法といえます。

また口腔機能低下を防ぐために、口の周りの筋肉を強くする口や舌のストレッチや、マッサージを行うのもおすすめです。

外出し他人と触れる機会を作る

閉じこもりや独居の高齢者では、1日家から出ない、また誰とも話をする機会がない場合が多くなります。家に閉じこもることで、活動量が減り筋力低下や食事量の減少に繋がります。また他者と話をする機会がないことで、うつ状態や認知機能の低下が起こりやすくなります。

他者とのコミュニケーションが増えると、認知症の症状が改善するというデータもあります。まず家に閉じこもらないよう、外出する機会を作りましょう。閉じこもりで外出できない人に対しては、保健師や介護支援専門員、理学療法士や作業療法士などが訪問することで改善できる場合もあります。

おわりに:何よりも機能低下を見逃さないことが重要

介護の仕事をしている場合、重度の要介護状態の方だけでなく、要支援者や軽度要介護者の方に接することもあるはずです。要支援者や軽度要介護者の方にも目を向け、機能低下を見逃さないことが重要といえます。

フレイルという言葉はまだ世間一般に浸透していません。そのため高齢者やその家族の方では、フレイル状態の危険性を知らない場合が多いといえます。介護の現場で働いている方は、フレイル状態になっている方に介入しサポートすることで、重度介護状態への予防ができるはずです。何となく元気がない、食欲がないなど気付くことがあれば、早めに話を聞く・必要な専門職に繋げるなどの対応ができるようにしましょう。

監修者コメント

医療の発達や地方への医療提供体制が整ったことから、日本人の平均寿命は年々延びており、女性に関しては90歳へ到達する勢いです。
しかし、健康寿命が延びないと意味が無いのです。
寝たきりの状態で10年以上過ごしている方もたくさんおられます。
きっとフレイルを早期発見できれば、あと何年かは平均寿命が延びていたかもしれません。
フレイルを予防するには、まず本人の意識付けが大切になってきます。
健康意識が高い方は自発的に散歩へ行ったり、食事を気にかけている方もいます。
しかし、健康意識が低い方はなかなか続きません。
「この方、フレイル気味かな?」と思ったときには健康への意識調査からしてみることをおすすめします。

この記事を監修した人

周田さん

周田 佳介

資格:正看護師、介護福祉士、介護支援専門員、認知症ケア専門士、介護職員等による喀痰吸引等の研修指導看護師

高校卒業から介護医療現場で勤務し、現在は現役訪問看護師として活動している。
これまでに急性期病棟、慢性期病棟、特別養護老人ホーム、グループホーム、訪問介護事業所に勤務経験があり、医療・介護ともに関わってきた。
また介護職員等による喀痰吸引研修の指導者として介護職員の育成にも携わっている。

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