介護はたん吸引などの医療ケアも必要になってくる仕事ですが、介護職員は医療行為を行うことが法律上できません。

しかし、最近の超高齢社会の進展を背景にして、高齢者から必要とされることの多い医療ケアである「たん吸引」と「経管栄養」に限っては、「所定の研修を修了して認定を受ければ介護職員でも行える」というように変わってきました。

この法律で定められた研修を、「喀痰(かくたん)吸引等研修」といいます。

この記事では、喀痰(かくたん)吸引等研修を受けて、「たん吸引」や「経管栄養」を行える資格を得ることにはどのようなメリットがあるのかを確認していきます。

喀痰吸引等研修とは?

喀痰(かくたん)吸引等研修の要点をまとめると、

  • 「たんの吸引」や「経管栄養」などの医療行為を、介護職員が実施する資格を得るための研修
  • 第1号研修から第3号研修まで3つの研修がある
  • 誰にどの医療行為をするかで研修が変わる
  • 医療行為が行える資格があると転職に有利
  • 転職先が登録喀痰吸引等事業者でないと医療ケアはできないので注意

喀痰吸引等研修について概要を詳しく確認しておきましょう。

経管栄養で使用するチューブのイメージ

介護職員が医療ケア資格を得るための研修

喀痰吸引等研修とは、「たんの吸引」や「経管栄養」といった医療行為を、介護職員が実施する資格を得るための研修です。研修で学べる内容は、以下の5つの行為です。

  1. 口腔内のたんの吸引
  2. 鼻腔内のたんの吸引
  3. 気管カニューレ内部のたんの吸引
  4. 胃ろう又は腸ろうの経管栄養
  5. 経鼻経管の経管栄養

そして、研修には第1号研修から第3号研修まで3つの研修が存在していて、誰にどの医療行為を行えるかが変わってきます。3つの研修のポイントをまとめると以下の通りです。

種類 対象者 内容
第1号研修 不特定多数の利用者 5つの医療行為のすべてを行うことができるようになる
第2号研修 対象となる5つの医療行為のうち、最大4つまで選択して医療行為を行えるようになる
第3号研修 特定の利用者 5つの医療行為のうち特定の人に対する必要な行為のみ行えるようになる

施設内のすべての利用者に5つの医療行為を行う場合は、1号研修を受けなくてはなりません。

第3号から順にステップアップする必要はありませんので、自分がどの程度の技能を身に着けたいのかを確認しておき、適切な研修を選びましょう。

医療行為のできる職員は介護の転職に有利

喀痰吸引等研修を受講し、医療行為ができる資格を得れば、かなり転職で有利になります。

喀痰吸引は、医療行為ですから誰もが気軽に行える行為ではありません。しかしながら、介護施設にも自分で食事をするのが難しい人やたんや唾液を吐きだせない人は多くいるのが現状です。

喀痰吸引等研修を受講し、これらのスキルを身につければ、多くの利用者の助けになることができるでしょう。

そんな介護職員は多くの現場から求められる存在になり、介護の転職もかなり有利になるといえるのです。

喀痰吸引等研修を取得するメリットとは?

喀痰吸引等研修を取得すれば、介護の転職に有利になることもメリットですが、その他にも以下のようなメリットがあります。

今の職場での待遇が良くなる

喀痰吸引等研修を取得すればできることが増えるので、今現在の職場が資格手当などをつけている場合、収入がこれまでよりも多くなる可能性があるのです。

医療行為ができることで、昇進する可能性などもあり、待遇がかなりよくなることもあるでしょう。

とはいえ、待遇の改善が見込めない場合は、事前に転職サポートへ相談しておくことで、取得後すぐに希望の条件で働ける可能性が高くなります。

こちらの記事では、おすすめの転職サポートをまとめていますのでぜひお役立てください。

仕事にやりがいや自信を持つことができるようになる

喀痰吸引等研修で取得できる医療行為は、いずれも命を助けられる行為です。

たとえば、たんの吸引の場合、加齢や病気が原因で今まで自然にできていた気管の防御反応が起こりにくくなります。そのため、本人が気づかないうちに、たんが気道内に詰まって、呼吸ができずに死亡してしまうこともあるのです。

しかし、介護職員がたんを吸引できれば、迅速な対応によって死亡事故を防ぐことができます。また、肺炎の予防にも効果があり呼吸自体が楽になります。

そのため、たんを吸引できると利用者や家族から感謝されることも増えるでしょう。「命を支えている」という実感と、仕事にやりがいや自信を持つことができます。

活躍の場が広がる

喀痰吸引研修を受講してスキルを身に着ければ、介護職員としての活躍の場が広がります。たとえば、訪問介護は喀痰吸引や経管栄養を行える職員を多く求めています。

これまでは通常の介護業務しかできなかったのが、スキルを取ったことで訪問介護の現場でも求められることが増え、さまざまな活躍ができるようになります。

介護職員として、より必要とされる人材に成長することができるメリットがあるといえるでしょう。

訪問介護で働く介護士のイメージ

喀痰吸引等研修の資格所持者が活躍できる職場とは?

喀痰吸引等研修の資格は、介護職員としてできることを増やしたい人や誰かの命の支えになりたい人におすすめです。具体的な活躍の場を確認しておきましょう。

介護職員の仕事内容についてもあらためて確認しておきましょう。
こちらの記事で詳しく解説しています。

活躍できるのはこんな職場

喀痰吸引等研修の資格を取れば、以下のような職場で活躍できます。

  • 介護関係施設
    特別養護老人ホームやグループホーム、短期入所施設など
  • 障害者福祉関係
    障害者支援施設、訪問介護や重度訪問介護、特別支援学校など
  • 在宅介護サービス
    訪問介護など

医師や看護師との連携を図りながら活躍することができるでしょう。

資格が活かせる介護スタッフはどんな転職先・求人があるの?

喀痰吸引等研修の資格が活かせる介護職員の実際の求人情報をみてみましょう。
(※2020/10現在の情報です。情報は変わる可能性があります。)

有料老人ホームのヘルパー求人

有料老人ホームの正社員のヘルパー求人です。最初の1か月は教育担当がついてしっかりレクチャーしてもらえます。

30名規模の高齢者住宅で介護業務全般が主なお仕事です。食事介助(配膳、下膳)、排泄介助、入浴介助などを行います。

月給は22.4万円~。もちろん資格手当もしっかりつきます。

オープンしたてのホスピスのケアスタッフ求人

正社員の求人です。2020年3月オープンの新設ホスピス。看護師さん常駐なので、安心して業務につけます。

月給は19万円~。もちろん喀痰吸引資格を持っていれば手当がつきます。

喀痰吸引等研修の資格が活かせる職場はたくさんあります。
最新の求人はこちらからご覧ください。

実際に働くにはどうしたらいい?資格を活かした転職のコツ

喀痰吸引等研修の資格を取得すれば、さまざまな職場で活躍できることが分かりました。
しかし、転職の際に気を付けておきたいのが、登録喀痰吸引等事業者でなくては介護職員は医療ケアができないということです。

資格を活用したいならば、まずは転職予定の職場が登録喀痰吸引等事業者かを確認しましょう。

また、求人の探し方としては「喀痰吸引資格優遇」といったワードで求人検索すれば、資格を活かせる職場を多く見つけられます。

喀痰吸引等研修の資格取得条件と難易度について

喀痰吸引等研修の資格取得のためには、〈講義による基本研修〉→〈筆記試験〉→〈演習を中心とした基本研修〉→〈実地研修〉→〈修了〉といった過程を経なくてはなりません。研修の号によって条件が少し異なりますので詳しく確認していきましょう。

第1・2号研修の取得条件は?

第1・2号研修では、まず50時間の講義による基本研修を受けなくてはなりません。その後、筆記試験に合格したら、シミュレーターによる演習を中心とした基本研修を受けます。

この演習は、一人で喀痰吸引の医療行為ができると判断されるまで、繰り返し行われます。そして、最後に実地研修を行って研修修了となります。なお、研修終了までには3か月程度の期間が必要な場合が多いようです。

第3号研修の取得条件は?

第3号研修は、基本的には1・2号と取得条件は変わりませんが、講義を受ける時間数や実地研修の内容などが異なります。

第3号研修の場合、基本研修の講義は8時間で終了し、その後、筆記試験に合格して行われるシミュレーターによる演習も1時間ほどなので、全体的に短期間で終えることが可能です。

基本研修が終わったら、実地研修で特定の人に必要な行為を学び、研修は修了になります。

また、医療行為の必要性がある人が増えた場合、再度その人に対する実地研修を受けなければなりません。

案外難しい?!喀痰吸引等研修取得の難易度

喀痰吸引等研修は取得が難しい資格ではありません。受講を申請したら、試験が不合格だったとしても、合格するまで再チャレンジすることが可能です。

加えて、試験に出る内容などもすべて講義内で習うことですので、しっかりと予習復習をしておけば、基本的には合格することができるでしょう。

おわりに:転職に有利になる喀痰吸引等研修の受講をぜひ検討しよう

介護職員と利用者が手を取り合っている様子

喀痰吸引等研修を受ければ、医師や看護師がいなくても「たん吸引」といった医療ケアを行えます。このことは、介護職員にとって大きな強みになるといえるでしょう。

近年、「たんの吸引」や「経管栄養」を必要とする高齢者は増加傾向にあり、介護施設でもこれらの医療ケアができる職員を求める動きが出てきています。

今後、さらに需要が高くなる可能性もありますし、命を支える医療ケアができることは自分の自信にもつながるはずです。ぜひ、研修の受講を検討してみてください。

監修者コメント

たんの吸引や経管栄養の対応は、高齢者だけではなく障がいのある方にも必要とされています。

医療行為であると同時に、どちらも生きていく上では欠かせない処置であるため、喀痰吸引等研修の資格を持つ介護職員は、事業所にとっても利用者にとっても頼りになる存在となるでしょう。

在宅で生活を続けたいと望む方も多く、訪問介護で胃ろうや呼吸器に対応できるスタッフは貴重なのです。

資格取得の難易度は比較的低いものの、特に第1号と第2号研修は修了するまでにある程度の期間が必要で、費用はおおよそ15万円から20万円を超えるため決して安くはありません。

自治体によっては、事業所に対して研修費用を助成する取り組みが行われていることもあるので、現在の職場や転職先で研修について相談するのも良いでしょう。

喀痰吸引等研修は、ステップアップやキャリアアップにもつながりこれから需要も高まるため、早いうちに取得することをおすすめします。

この記事を監修した人

大久保 圭祐

資格:作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員

総合病院に6年間勤務し、脳神経外科や整形外科のリハビリテーションを中心に、急性期・回復期・慢性期の全ての時期を経験。
脳卒中後の麻痺や高次脳機能障害、上肢の骨折、五十肩など、さまざまな疾患に対してのリハビリを提供し、多くの患者様の在宅復帰や社会復帰に貢献した。

その後、介護支援専門員の資格を取得して家族と共に介護事業を設立し、居宅支援事業所と訪問介護事業をスタート。さらに通所介護、有料老人ホームと徐々に事業を拡大する。
代表取締役であると同時に、現場では機能訓練指導員・介護職・ケアマネージャーを勤めプレイングマネージャーとして活躍した。
現在は、経営業務をメインに監修者やライターとしても活動中である。